どうも、朝ドラ見るるです!
本科に編入して、ついに男子と同じ教室で勉強することになったトラコ(とも)たち。きょくせつあって明らかになったのは、男子たちの中に渦巻くフクザツな感情だったのでした……。

ハイ、突然ですが、ここで見るるの2人目の“推し”を発表します! そう、口ヒゲがチャームポイント(?)のとどろき太一くんです!(演じてるのは戸塚純貴さん)

いかにも「オトコ!」みたいな雰囲気で、最初は嫌なことばかり言ってたのに、最終的には「俺が男の美徳と思っていた、強さ、優しさをあの人たちは持っている。俺が男らしさと思っていたものは、そもそも、男とは無縁のものだったのかもしれんな」だって。みる……! いい親友を持ったね、花岡!

それから今週は、当時の女性が“女らしさ”っていう言葉に縛られていたのと同じくらい、男性も“男らしさ”って言葉に縛られていたのかもってことにも、気づかせてもらえました。男女平等の実現って、しいたげられていた女性の地位向上だけが、目的じゃないってことなのかな。

それにしたって、見るるが気になったのは、とにかく二言目には「女性が法律を学ぶなんて(おかしい)」っていう当時の風潮ですよ! 令和の今、そんなことを言う人はいないだろうけど、じゃあ、実際にはいつごろまで言われていたんだろう? 当事者目線でのお話、聞いてみたいですよね?

……というわけで、見るる、またまた素敵な先生にお話をうかがってきましたよ! 現役の弁護士であり、トラコのモデルになったぶちよしさんについての本も書かれている、先生です!
それじゃあ、さっそくいきましょう。教えて、佐賀先生〜!

義母だった方は三淵嘉子さんの後輩! どうして法律の道を目指したの?

見るる 佐賀先生、初めまして! 今回はどうぞよろしくお願いします。

佐賀先生 ええ、よろしくお願いします。「虎に翼」、毎朝、楽しく拝見していますよ。私はドラマについては一視聴者でしかありませんけど、私にお答えできることなら、なんでも聞いてくださいね。

見るる ありがとうございます〜! そ、それにしても、本物の弁護士の方にお会いするのなんて人生初のことなので、なんだか緊張します〜(ドキドキ)。じゃあ、さっそくなんですけど、佐賀先生は、いつ弁護士になられたんですか?

佐賀先生 ああ、私はもともとは検事だったんです。結婚を機に退官して、それから数年のブランクのあと、今度は弁護士として働くことにしました。それが1986(昭和61)年ですね。

見るる あ、「ヤメ検」っていう、あれですか? 聞いたことあります!

佐賀先生 そう、それですね(笑)。実際、けっこう多いんですよ。弁護士は検事に比べると、ある程度、時間などに融通がきくので、女性にとっては働きやすいということもあって。私も、当時、4歳と2歳の子どもを抱えて、弁護士としてスタートしました。

なので、純粋に、司法試験に受かった年でいうと1977年。つまり、トラコちゃんのモデルである三淵嘉子さんの40年ほど後輩ということになります。

見るる 佐賀先生も、三淵さんと同じ明治大学のご出身なんですか?

佐賀先生 残念ながら私は違うんですけどね、実は、私の義理の母だった人で、日本で2人目の女性検事になった佐賀さとは、明治大学専門部女子部法科の出身だったんですよ。1942年の入学だそうですから、三淵さんの10年後輩ですね。

見るる 10年だと、かなり世代は近いですね!

佐賀先生 ええ。ですから、三淵さんと同じように穂積重遠しげとお先生に教わっていたそうです。穂積先生は、「皆さんはこれからの世のために、大事な人たちです」と、女子学生たちをとても大切にしてくださったのだとか。

見るる ドラマそのものですね……! でも、だとすると、佐賀小里さんは、どうして法律の勉強をしようと思ったんでしょうか? ドラマを見ていると、当時の女性にとっては法律を学ぶことは「地獄」だって、何度も出てくるんですけど……。

佐賀先生 実は、私も聞いてみたことがあるんです。やっぱり、当時の女性の生き方としては険しい道だと思いましたのでね。

ところが意外なことに、佐賀小里は、この道をトラコちゃんほど「地獄」とは感じていなかったようでした。また父親が弁護士でもありましたし、すでに明治大学を出て弁護士になった女性たちが何人もいましたから。

あとは、「自分と同じ小学校で机を並べた男の子たちがいろいろな職に就こうとしているのを見て、じっとしていられなかった。私も社会に出て何かを成し遂げたかった」そうです。

「でも、当時は女性がつける仕事は限られていて、教師か、音楽家か、医者か、あるいは弁護士か──。それで弁護士を選んだ」と言っていました。

見るる そうか、10年後輩だからこそ、女性の職業の選択肢に「弁護士」が入ったんですね! わずかな差だと思ったけど、大きな変化のあった10年なんですね〜。

こうして歴史は作られる! 先達たちのおかげでひらけた法律への道

見るる すみません、こだわるようなんですけど、佐賀先生ご自身は、どうして法律の道へ進んだんですか? もちろん世代はずいぶん違いますけど、それでも、まだまだ女性弁護士の数は少なかったんですよね?

佐賀先生 そうですね。『弁護士白書 2023年版』によると、私が弁護士登録をした1986年の弁護士数の男女比は、男性95.2%、女性4.8%(人数でいうと620人)でした。2023年時点では、女性19.8%にまで増えていますが、それでも約2割といったところですから、今でもさほど女性の多い職業ではありませんね。

見るる 法律に興味を持ったきっかけは何だったんですか?

佐賀先生 実は、私の場合も父の影響が強いんです。私の父は、熊本県で町の小さな薬局を営む薬剤師でした。大正生まれのいわゆる“九州男児”、「男子厨房に入らず」なんて本気で言うような人でしてね。武道もやっていて、当時も剣道五段。のちに七段までいただいていました。

見るる 七段! お強かったんですね、すごい! でも、いかにも“お堅いお父様”っていうイメージなので……やっぱり、娘の佐賀先生に対しても「いいお嫁さんになれ!」っていう感じだったんですか?

佐賀先生 それが逆だったんです(笑)。私が中学生のとき、父がラジオで、地元の熊本県で初めて女性の弁護士になったという人が出てきて、法律相談をしているのを聞いたのだそうです。

それにいたく感動した父は、私にむかって「弁護士はいいぞ」とすすめてきました。私が弁護士という仕事を意識したのは、それが最初ですね。

見るる グッジョブ! トラコのお父さんみたいに、娘のことが大好きで信頼もしているお父さまだったんですね。

佐賀先生 それで言うとですね、ドラマの第1週で、トラコちゃんが法律の道に進むことを「時期尚早だ」とか、「泣いて逃げ出すに違いない」とか言われているのを聞いたお母さんが怒って、逆に強い味方になったシーンがありましたよね? 『六法全書』を買ってくれて。

私の父も、「お前のところの娘は勉強ばかりしていたら、嫁にいけないぞ」なんて言ってくる近所の人に怒って、私には「これからは女性も活躍する時代なんだ、お前は東大に行って弁護士になれ!」と、はっきりそう言ってくれたんですよ。

見るる えー! すっごくいいお父さま!(じーん) あ、お母さまはどうだったんですか? トラコの場合は、むしろ、母・はるさんの説得のほうが大変そうでしたけど……。

佐賀先生 さすがにだいぶ時代が違いますから(苦笑)。特に反対せず、応援してくれましたよ。母から、「嫁に行けない」なんて、言われたことはなかったですね。

あと、父には年下の従姉妹がいたんですけど、実はその方は、熊本大学医学部に女性で初めて受かって医師になった人でした。父は自分が薬剤師でしたから、医学部に入るのがどれくらい大変なことか、よくわかっていたんでしょうね。

だから父は、「女性が男性よりも劣っている」だなんて、思わなくなっていたんじゃないでしょうか。

見るる なるほど〜。うかがっていると、まず熊本で初めて女性弁護士になった方、そして熊本大学医学部に女性で初めて入ってお医者様になった方。その2人の先達がいたからこそ、お父さまが応援してくれるようになり、佐賀先生の法律への道がひらけたとも言えるわけですね。

はあ〜、そうやって歴史が作られていくんだって、本当、しみじみしちゃいます。

三淵さんの後輩だったという佐賀小里さんや、佐賀先生ご自身のことなど、女性の法曹のリアルなお話をお聞きできたおかげで、「虎に翼」の世界がいっそう身近に感じられるようになってきました。
佐賀先生、今日はありがとうございました!


次週!

第5週「朝雨は女の腕まくり?」4月30日(月)〜5月3日(金)

意味:《朝の雨はすぐにあがるから、女の腕まくりと同じようにこわくない。》(小学館『デジタル大辞泉』より)

というか、そう! キャンパスライフの裏側で、猪爪家には大事件が起きていたんでした。お父さん逮捕!? 贈賄の容疑って、まさかあのお父さんに限ってそんなことありえないと思うんだけど……い、一体どうなっちゃうの〜!? 家の塀を登って猪爪家にやってきた花岡くん、そして穂高先生(の腰の具合)も気になるよ〜! 待て、次回……‼︎

というわけで、今週の「トラつば」復習はここまで。
来週はどんなお話をうかがおうかな? どうぞお楽しみに〜!!

佐賀千惠美(さが・ちえみ)
1952年熊本県生まれ。1977年司法試験合格。翌年に東京大学法学部を卒業、司法修習生に。1981年東京地方検察庁検事を退官。1986年弁護士登録。これまで、京都府労働委員会会長、京都弁護士会副会長、京都女性の活躍推進協議会座長などを歴任。著書に、『三淵嘉子・中田正子・久米愛 日本初の女性法律家たち』(日本評論社)、『三淵嘉子の生涯〜人生を羽ばたいた“トラママ”』(内外出版社)などがある。

取材・文/朝ドラ見るる イラスト/青井亜衣

"朝ドラ"を見るのが日課の覆面ライター、朝ドラ見る子の妹にして、ただいまライター修行中! 20代、いわゆるZ世代。若干(かなり!)オタク気質なところあり。
両親(60&70代・シニア夫婦)と姉(30代・本職ライター)と一緒に、朝ドラを見た感想を話し合うのが好き。