またまたまたご無沙汰な更新になってしまいました。
執筆や私生活のあれやこれやに追われて、気づくと1日が終わっている。そんな感じです。

そしてずっと先だと思っていた、「虎に翼」の放送がスタート、無事第1週が終わった所でございます。いかがでしたでしょうか? 少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。

この連載も朝ドラ放送中は番外編として、作品についてのあれやこれや、関係者の皆さんへの感謝などをつづっていこうと思います。執筆の日々で完成した映像やスタッフさん演者さんの想いにグッときているので、ある意味グッときた日記であることは間違いないです。

色んなところで言っているのでアレなんですが、私はずっと朝ドラの執筆をするのが夢でした。「虎に翼」の制作発表した後、古くからの友人たちからは「夢を叶えたね~」「ずっと昔から言ってたもんね」など連絡をもらいました。

口に出していると願いは叶う派の人間ですので、会う人会う人に「朝ドラを書きたい」と言い続けてきた脚本家人生でした。

「虎に翼」の制作統括の尾崎さんとは、よるドラ「恋せぬふたり」(2022年放送)で初めてご一緒したんですが、お会いして2、3回目の打ち合わせで「朝ドラやりたいんです」と無意識に話していて、一緒にいたマネージャーさんに苦笑された記憶があります(私は、花江ちゃんのように“したたか”ができない人間です)。

その時のことを尾崎さんが覚えているかは分かりませんが、こうして朝ドラを書くことができています。「恋せぬふたり」から「虎に翼」と、時間を空けずにずっと尾崎さんとお仕事をしていますが、尾崎さんのことを凄く信頼していますし、他の制作陣からも非常に愛されている方だと思います。

そんな“願いを口に出していく派”の私なのですが、実はもう一つ、割と早くから口に出していた願いが叶いました。「虎に翼」のシナリオが1週ごとに電子書籍で販売されることになったんです。

私自身、朝ドラのシナリオブックを読むのが大好きで、「あまちゃん」(2013年)「ひよっこ」(2017年)「ごちそうさん」(2013~2014年)など、購入できるものは手に取り何度も読んできました。

実際の映像と見比べると非常に勉強になりますし新たな気づきが沢山あります、あと純粋に面白い。シナリオブックがでていない作品も大好きな作品はセリフを書き出したりしてきました。

「カーネーション」(2011~2012年)なんかは構成を書き出したり……。朝ドラの名作たちと自分の作品を同列に並べるのは恐れ多いんですが、でも肩を並べたいと思って書いているので、もし誰かシナリオを読みたいと思ってくれたらいいなって……。

そんな旨を、小説版「恋せぬふたり」の編集であるNHK出版の砂原さんに相談したところ、さまざまな方がご協力してくれて電子書籍を出せることになりました。
しかも1週ごとに! なかなか革新的なことだと思います(第1週のシナリオはリリース済みです)。
是非映像と見比べて楽しんでもらいたいです。

ここにたどり着くまでに沢山の意見をいただき、完成した原稿です。
演出、プロデューサーさんは勿論もちろん、大勢の考証の先生方にもご意見いただいております。自分なりに調べて執筆はもちろんしますが、そのうえに分からないこと間違っていることを指摘してもらえる贅沢ぜいたくさに毎日震えております。

当時の言葉遣いや法律の捉え方などを踏まえて、あえてドラマとしては現代に寄せることもあるのですが、その際も柔軟にアイディアやご意見をいただいております。この場を借りて感謝申し上げます。

朝ドラの15分って、本当に難しい尺で、それは手に入る限りのシナリオブックを読んできても痛感していて、実際自分が書いてきても痛感しまくりです。どこをどうカットされてもぎゅっと濃厚であることを意識してきたので、私の脚本は基本的にいつも長めです。

それをどう15分にまとめていただけるのか、ドキドキするのですが、演出の梛川なぎかわ善郎さんの第1週、素晴らしかったですね。梛川さんは何度も朝ドラに参加されてきた方で知識も経験も豊富。そして凄く芯がある方なのに、とても柔軟。

こういう大人になりたいなって思っています(もうとっくに大人なのですが……)。梛川さんとは今回はじめてご一緒したのですが、大好きです。馬鹿みたいな書き方だけど、直接はなかなか言えないので、ここで言っておきます。

第1週は、主要人物はもちろん、街を歩く人々に全てに血が通っている素晴らしい演出となっていました。例えば、女学校の教師が寅子と直言を説得しようとした後、一人で佇むシーンはシナリオにはありません。

実を言うと、私は初見では、ちょっとドキドキしてしまったのです。教師の想いは前シーンで伝わっているはずなので、ここまで追わなくてもいいんじゃないかって。

でも完パケを見てみると本当に素晴らしかったし、物凄く深みが出た。作品に込めている想いが、より視聴者の方にも届いた。こういうのが映像作品の素晴らしさだし、脚本をやっていて興奮する所です。

その他でいえば、直道と花江ちゃんの出会いのシーン。水をかけられるのも、第1週完本後に、梛川さんからご提案されたものです。女学校の生徒が窓から水を捨てるかしらと思って調べてみると、昔は割とよくやっていた行動みたいなので、非常に勉強になりました。

脚本執筆時は、直道はここからどんどん好きになってもらえばいいと思い書いていましたが、水浴びによって一気に花江と直道のことが好きになるシーンになりましたよね。

……と、いうように是非脚本が映像になるうえでどうなっていくかをシナリオと比べて楽しんで欲しいです。
そして映像ではカットされてしまったセリフも多々ありますので、そちらも楽しんでください。

第1回などは、はるさんの怖さがより伝わると思います。念のため書きますが、セリフがカットされて嫌だったとかではないです。少なくとも「虎に翼」に関しては一切ないです。本当に脚本を、作品のメッセージを大切に大切にしていただいていると思って、感謝感謝です。(あと基本的に、私が長く書きすぎなのです)。

私は若い頃は脚本というのは映像において、設計図とか背骨的なものだと思っていたのですが、最近は設計図と旅のしおりの中間くらいに思っています。
無下にされたら悲しいけれど、作品が辿たどる旅路が最高になればそれが一番だと。

大勢の人間が関わる映像作品ですので、それに関わる人たちが楽しくお仕事してくれること、作品を大切にしてくださることが幸せです。そして「虎に翼」においては、最高の方々が集まって制作されているので、本当に素晴らしい作品になって嬉しいです。

あぁ、思ったより長くなってしまった。制作側があ~だこ~だ言うのは野暮だと思っているのに、ごめんなさい。とにかくここから半年間、「虎に翼」よろしくお願いします! みなさんに楽しんでいただける作品になるように最後まで頑張ります!!

1987年生まれ、神奈川県出身。脚本家・小説家として活躍。主な執筆作品は、「DASADA」「声春っ!」(日本テレビ系)、「花のち晴れ~花男 Next Season」「Heaven?~ご苦楽レストラン」「君の花になる」(TBS系)、映画『ヒロイン失格』、『センセイ君主』など。NHK「恋せぬふたり」で第40回向田邦子賞を受賞。