人が良くて妹思い、「俺には分かる」が口癖だけど、なんだかちょっとピントが外れてる……? 憎めないキャラクターで注目を集めている、とも(伊藤沙莉)の兄・直道。

第1週では、寅子の親友・花江(森田望智)と結婚したばかり。猪爪家でラブラブの新婚生活を満喫する直道を演じているのは、上川周作さんです。

上川さんは直道をどんな人間だと思って演じているか、猪爪家の収録の雰囲気はどんなものかなど、インタビューでたっぷり語っていただきました。


直道は両親からたくさんの愛情を受けて、のびのびと育ってきた

――「まんぷく」以来の朝ドラ出演ですが、現場の雰囲気はいかがでしょう。

まさに和気あいあいと言いますか、「家族だな」って思います。撮影に入る前は「馴染めるのかな」「待ち時間とかどんな感じなんだろう」って、いろいろ想像してソワソワしていたんです。

でも、いざ現場に来てみたら、皆さんと自然に会話できて。もちろん最初はある程度、当たり障りない雑談……「今日天気いいですね」みたいなやりとりがあったわけですけど(笑)。そのあとはだんだんと「こういうことを考えてます」って、自分のことをついしゃべってしまうような空気で。

それは沙莉ちゃんや石田(ゆり子)さん、望智ちゃんや岡部(たかし)さんが優しく話を聞いてくださるからなんですけど。こんなに自分の話ばっかりしていいのかな? というくらい聞いてくださって、本当に心地良く過ごさせていただいています。

――直道を、どんな人間だと思って演じられていますか?

自分が思ったことを、恐れずにスッと言えるタイプですね。言ったことが当たっているかどうかは置いといて(笑)。

直道は家族とのシーンが多いんですが、一人で脚本を読んでいたときは「これ、どういう空気になるんだろう?」と、僕自身ちょっと気がかりだったんです。面と向かってセリフを言ったとき、家族からどういう反応が返ってくるのかな、と。

でも、いざ皆さんとお芝居したら、いい意味で気になりませんでした。お父さん(直言なおこと/岡部たかし)も、お母さん(はる/石田ゆり子)も、直道のことを当たり前に受け入れて会話してくれる。だから、誰の顔色もうかがわないでしゃべれるし、すごく安心感があるんです。

「直道は両親からたくさんの愛情を受けて、のびのびと育ってきたんだな」と思いましたし、図々しいけど、僕も両親の穏やかで包み込んでくれる空気の中に飛び込もう! みたいな気持ちでやっています。

――素敵ですね。では、妹の寅子のことは、どう思っているのでしょう?

寅子は直道と違ってしっかりしているし、物事を順序立てて話すじゃないですか。これ、小さいころから直道の背中を見て「あ、これをやったらだめだな」とか「こうやったら上手くやれるんだ」みたいなことを学んで育ってきたからじゃないのかな、なんて想像しています。

それに、別に“お兄ちゃんヅラ”しなくても、寅子は直道のことを慕ってくれている気がするんですよ。主人公の幼少時代が描かれていないので、猪爪家の暖炉の上にある家族写真を頼りに、子どもの頃の直道と寅子の関係を想像しました。

――寅子役の伊藤さんとのお芝居はいかがですか?

何ていうか、伊藤さんはどんなセリフも受け止めてくれた上で、気持ちよく斬ってくれるんですよね。ズバッ!って。だから、思いっきり飛び込んでいける。会話で寅子にさばかれるのが嬉しくて、直道のほうから斬られにいっている感覚です(笑)。兄として、そういう関係性を大事にしたいですね。

――ちなみに、直道の口癖「俺には分かる」は、どんな気持ちを込めて演じていますか。

この口癖、だんだん繰り返されていくと、見ている方たちは「こいつの言ってること、違うな。別にわかってないな」って気付き始めると思うんですよ。ただ、多少は皆さんに「絶対ないけど、もしかしたら……当たっている時もあるかもしれない」と思ってもらえると嬉しい(笑)。

ちょっと話がずれるかもしれないんですけど、もし直道が正論を叩きつけられるような家庭で育っていたら、「俺の言いたいことはこうだから」と、周りに有無を言わせないタイプの人間になっていたかもしれない。でも、直言さんはすごく優しくて、子どもたちのことが大好きで……そんなお父さんと一緒に暮らしてきたから、今の直道ができあがったんでしょうね。

変な話、この時代だと長男としての自覚とか覚悟が大切だと思うんですが、直道にはそれがあるかどうか怪しい(笑)。妹もしっかりしてるし、直道ひとりが家を引っ張っていくというより、みんなで話をしながら家族の形を作っていく、そんな一家だろうなと思っています。


夫婦のシーンは、望智ちゃんに引っ張ってもらっています

――そんな直道ですが、第1週では、意外にも花江のほうが直道に一目れしていたことが判明しましたね。

そうなんです。そのシーンは回想でしたけど、あれは直道の優しさが、花江ちゃんの心に温かく、タイミングよく入っていけた瞬間だったのかなと思ってます。直道は本当に運がいいですよ。

――直道のほうは、花江のどんなところが好きだと思いますか?

花江ちゃんて、けっこう直道にツッコんでくれるんです。今までその役割は、寅子やお母さんだったんですけど、客観的に見ても、直道と花江ちゃんはそこがすごく合うな、と感じてます。だから、一目惚れから始まっているけれど、僕のことをちゃんと見てくれているんだなという、安心感が大きいのかなと。

――森田さんとの共演の印象は?

望智ちゃんは僕より若いんですけど、精神年齢がすごく高いなと思います。いつもかんして物事を見ていて、僕がちょっと芝居を変えただけでもすぐに気付いてくれるんです。すごく芝居の話がしやすくて、特に夫婦のシーンでは、2人で話し合いながら芝居を組み立てていますね。というか、引っ張ってもらってます(笑)。

――寅子を、兄としてこれからどう見守っていきたいですか?

世間一般から見たら、頼りないお兄ちゃんかもしれないですけど、これから寅子がいろんな壁にぶつかっていく中で、「おまえはそのままでいいよ」って言い続けたいですね。家族はみんな寅子の味方でありたいし、これから先、どんなつらいことがあっても家族一丸となって応援し続けたいです。

――ありがとうございます。最後に、視聴者の方へのメッセージをお願いします。

寅子って、例えば大きな壁にぶつかる場面で、自分で正解を見つけよう、声を上げようと頑張りますよね。必ずしもストレートに正解に行きつくわけではなくて、寄り道もするし、葛藤もするけど、がむしゃらに進んでいく。

僕はそんな寅子の頑張る姿を見ているだけですごく励まされるんです。だから皆さんも「昨日できなかったことも、今日はできるんじゃないか」というエネルギーをもらえる作品になっているんじゃないかなって。

「よし、今日も頑張ろう」と、良い1日のスタートを切ってもらえるような、そんなドラマになったら嬉しいです。

【プロフィール】
かみかわ・しゅうさく
1993年2月18日生まれ、大分県出身。NHKでは、大河ドラマ「真田丸」「西郷どん」、連続テレビ小説「べっぴんさん」「まんぷく」、秋田発地域ドラマ「金色の海」、2023年の正月時代劇「いちげき」、「旅屋おかえり 兵庫編」などに出演。