2000年から5年間にわたって放送された「プロジェクトX〜挑戦者たち〜」。名もなき人々の知られざる活躍を描き、今もなお多くの人の記憶に残る人気ドキュメンタリー番組だ。

それが今年、18年ぶりに新シリーズとして復活することになった。新シリーズでスポットを当てるのは、主にバブル崩壊以降の平成・令和のプロジェクト。「失われた30年」と評されるこの時代のドラマを掘り起こしていくという。

4月6日(土)に第1回目が放送されるのを前に、4月1日(月)に試写・取材会が開催された。登壇したのは、MCを務める有馬嘉男記者と森花子アナウンサー、制作統括の久保健一さん。試写後の会見ではさまざまなエピソードが飛び出した。


第1回(4月6日放送)
「東京スカイツリー 天空の大工事~世界一の電波塔に挑む~」

【第1回の概要】
スカイツリーの敷地面積は東京タワーの約4分の1。狭い敷地に超高層タワーを建てる難工事に、凄腕すごうでの設計士や全国各地から選りすぐられた精鋭の職人、のべ58万人が挑んだ。雷や突風、太陽熱などと闘い、完成直前には東日本大震災の激震に襲われながらも高さ600メートルでズレがわずか2センチという圧倒的な精度で鉄骨を組み立てた。たび重なる難題を乗り越え「世界一のタワーをこの手で作る」と集った技術者たちの意地の物語。

新シリーズでMCを担当することになった有馬記者がオファーを受けたのは、今年1月のこと。ウクライナのキーウで出張取材をしている時に、「『プロジェクトX』を復活させるので、帰国してほしい」と言われたという。

「それ以来、個人的に考えていたのは、“昭和からの決別”みたいな裏テーマを持てないものかなということ。我々が新シリーズで取り上げるのは平成・令和のプロジェクトですから、 男たちは滅私奉公、女たちはそんな男たちを内助の功で支える、もうそんな時代ではないだろうと。

新しい時代のプロジェクトってどういう価値観で、どんな人たちが実現してきたのかを見ていくのが面白いのではないかと思いました」(有馬

ところが帰国後、取材や収録ををし、スタッフたちと打ち合わせを重ねていくにつれて、そう簡単ではないということが分かってきたという。

「大勢の人が関わる大プロジェクトは、人々の純粋な思いで支えられているんですね。上司と部下の信頼関係だったり、 時には自己犠牲をいとわないチームワークだったり、無償の家族愛だったり、あるいは友情だったり。

いつの時代も変わらないその人たちの思いが、プロジェクトを大きく動かしているんだなということを、改めて知りました。なので、 18年前のシリーズとやることは基本的に変わりません。

努力は報われる。きっと夢は叶う。そう信じて頑張ってきた人たちのドラマを丁寧に掘り起こして、丁寧に伝えていく、そんな新シリーズになります。 とはいえ、僕は個人的には“昭和からの決別”も裏テーマとして持っていきたいなと思っています」(有馬

番組が取り上げるのは、平成から令和にかけて“失われた30年”と呼ばれる時代だ。有馬記者は、

「僕が記者として取材してきた期間とまるまる重なるんですけど、昭和の時代にぐーっと作り上げて勝ち取った世界でのポジションを、もう1回失い、自信や活力をも失ってしまう、そんな時代です。

美談やサクセスストーリーで溜飲を下げるだけじゃなくて、この30年の失敗や挫折から読み取るべき教訓を、時にはストレートに、時にはにじみ出るように、仲間たちとひとつひとつの作品を丁寧に作っていきたいと思っています」(有馬

一方、森花子アナウンサーはNHK水戸放送局所属のまま、MCに抜擢ばってきされた。

「『新プロジェクトX』のMC、水戸放送局の業務、そして子育てや母親業を並行しながら番組に挑むことになりました。慣れない中でいろいろな挑戦をしながらこの番組と向き合っていきたいなと思っています。

いち視聴者としてこの番組を通して、皆さんの知恵や工夫、働き方、考え方を学ばせていただいて、日々の生活に生かしていきたいですね。皆ささんと一緒に楽しめる、勉強できる、 学びがある、希望を持てる、そういう番組にしていきたいなと思っています」(

そして制作統括の久保健一さんは、旧シリーズではディレクターとして参加していたという。

「18年ぶりに復活するということで、大きな仕事になるなと思いました。もう1回、今の挑戦を発掘したら、どんな人たちを掘り起こせるんだろうかということを楽しみに思いながら、去年の秋くらいからいろんなお話を発掘してきました。

すると、昭和の時代に負けない挑戦者がたくさんいるんですね。そのことに励まされながら、よし、じゃあそういうテーマもやってみよう、こんなテーマもやってみようという感じで、新しいシリーズを少しずつ制作し始めています。1作目はスカイツリーを取り上げていますが、ぜひ2作目以降も楽しみしてもらえれば」(久保

「プロジェクトX」といえば、中島みゆきさんのオープニング曲「地上の星」と、エンディング曲「ヘッドライト・テールライト」、俳優・田口トモロヲさんのナレーションは欠かせない。

新シリーズでも継続されることになっており、特に「地上の星」は、中島みゆきさんの提案で、キーを1つ上げた「新・地上の星」を新規録音することになった。久保さんは、他の曲にすることは頭に浮かばなかったと話す。

「中島みゆきさんと田口トモロヲさんは、(番組と)イコール。またやらせていただきます、ついてはご協力いただけませんか、とお願いしたところ、お二人から『大変ね』と言われつつも快諾いただけました。なぜ中島さんがキーを変えるか、どういう意図があるかというところは、正直曲が来るまでわかりませんでした。

僕らは編集作業を進めていたので、録音した曲が来るまでは、旧『地上の星』を編集作業に使っていたんです。旧シリーズのときは、白黒映像にあの曲がかかっていることが多く、それがしっくりきていました。

でも、カラーの新しい映像に新しく届いた『新・地上の星』を当てたら、やはりピタっときたんですよね。どうやってそのことを見抜かれたかはわからないのですが、さすがだなと思いました」(久保

旧シリーズ放送時はまだ学生で、剣道に没頭している毎日だったという森アナウンサー。朝から晩まで道場にこもっていても、この番組や「地上の星」は知っていたという。

「実はカラオケに行って必ず歌っていたのが『地上の星』だったんです。ちょっとモノマネ風に歌うのが私の十八番おはこでした(笑)。そんなご縁もあり、この曲と一緒に番組に出られる喜びをかみしめています」(

森アナウンサーはまた、田口トモロヲさんのナレーション収録風景にも立ち会っており、その時の話も披露した。

「私は言葉をゆっくり話すことが非常に苦手で、田口さんのようにゆっくり、かつハッキリしたナレーションができないんです。だからどういう風にナレーションを録ってらっしゃるんだろうと思っていたら、田口さんはすごくリラックスした状態で、ふわっと声を出されていたんですよね。

これは勉強になるなと思ったので、引き続き、田口さんの収録現場を訪れて、ナレーションの勉強をさせていただきたいなと思っています」(

新シリーズでは平成、令和の出来事にスポットを当てていく予定ではあるものの、「昭和のプロジェクトを取り上げるつもりはあるか」と問われると、その気持ちはあると、制作統括の久保さんは答えた。

「当時の話を聞ける方、いきいきと語ってくださる方となると、必然的に平成や令和のプロジェクトになっていきますし、昭和のものは旧シリーズでやり尽くしたところはありますが、できれば新シリーズでも取り上げたいと考えています」

ただ、平成・令和をメインにしたのは、それだけが理由ではない。

「有馬さんの入局が平成2年で、 僕は今年51歳なんですけど、そうすると、大人になってからの30年が、失われた30年ということになるんですよね。僕ら、大人になってから何も生み出してないんですか? というのは悔しいというか……。でも、そんなことはないでしょう、と。 頑張ってきた人はたくさんいるし、すごい発明もたくさんあるし、むしろそこを積極的に掘ることに意味があると思っていて、むしろ発掘したいなと思っていきたいですね」(久保


【今後の放送ラインナップ】

4月6日(土) 総合 午後7:30~
「東京スカイツリー 天空の大工事〜世界一の電波塔に挑む〜」

4月13日(土)総合 午後7:30〜
「弱小タッグが世界を変えた~カメラ付き携帯 反骨の逆転劇~」

4月20日(土)総合 午後7:30〜
「約束の春~三陸鉄道 復旧への3年~」