あるシングルマザーが、5歳の息子とアフリカのルワンダへ渡り、タイ料理屋を開くことに! でも毎日がトラブルの連続……。人生という「旅」の醍醐味が味わえるノンフィクション

からさんが30歳で会社を辞め、ルワンダでタイ料理店を開いたいきさつや、最近のコロナ禍の状況までが記録された本です。
驚いたことに唐渡さん、休暇で初めて滞在したルワンダに魅せられ、移住を決めたといいます。

じゃあ生活の糧は? 飲食店を開こう! タイ料理店なんていいんじゃない? と、最初から軽いノリです。

ルワンダといえば、1990年代前半、激しい内戦と大虐殺が起こった国。現在は政情も安定し、治安もよいとのこと。
国が観光誘致に積極的なので、外食産業が成長するというもくろみでしたが、いざ準備を始めると大変。日本の常識はここでは通じません。

借りた店を改装したいが、工事は進まない。現地スタッフにレシピを教えても、勝手に作り方を変えてしまう。レンジが突然壊れたというのでわけを聞くと、汚れたから水で洗ったと……。

でも、ルワンダの人々がいいかげんなのではありません。生きる哲学や時間の感覚が違うだけなんです。
その証拠に、この生活に慣れてしまった唐渡さんが一時帰国すると、心に余裕のない日本人に違和感を抱くこともあるのだとか。

店の前で撮られた表紙写真。前列左のイノセントさんは、幼いころ路上生活をしていたといいます。
みんなに助けられたから、僕も人を助けられるグッドマンになりたい、と――。優しい人々に囲まれて仕事ができるのはいいなあ、と思いました。

(NHKウイークリーステラ 2021年7月30日号より)

北海道出身。書評家・フリーライターとして活躍。近著に『私は本屋が好きでした』(太郎次郎社エディタス)。