ほぼ毎週、デパートの屋上に通っています。ビアガーデンでも遊園地でもなく、目的は金魚飼育用品を買うこと。神社の金魚まつりですくった3匹は不幸にして1匹になり、8月に商店街の盆踊りでまた金魚をゲット、合計5匹の大所帯です。
孫は小さな黒い出目金と和金をすくったのに対し、じいじ(夫)は張り切って、鯉と見まごう容姿の大きな魚を左手の器に追い込みました。「これ、赤くないんだけど! 尾ひれが優雅にひらひらしていて、体つきは金魚っぽいが、焼き魚みたいな色合いなんだけど!」と私は未知の魚を前にぼやいていました。
規格外の魚が入ったことで、より大きな水槽を求めて、またデパートの屋上に。そこは金魚・熱帯魚コーナー。24時間循環ろ過装置完備の大型水槽を購入。ついでに、提供できる最高の住環境にしてやろうと、夫はお金に糸目を付けない買い込み方でした。
でも、ひとつわかりました。大きな魚は「玉サバ」という種類。え? サバ、鯖だったの? いえ、金魚なのですが、池で鯉と一緒に飼うよう改良作出された品種で、放っておくと40センチにもなるとわかりました。水槽の中ではそこまで大きくなることはないそうです。安心しました。
新たな飼育体制で毎日見守っています。元気に泳いでいるのを見ると、幸せです。いかに最新の装備とはいえ、ガラスが曇って緑色になることは避けられません。休日は水換えと水槽の掃除。その直前にデパートに出かけて、用具や薬品を買うのです。金魚コーナーのお兄さんとはすっかり顔なじみになりました。そもそも100円程度の金魚に、こんなに大金を注ぎ込んでいる私たちって大丈夫?と思うのですが、生き物とつきあうと、愛情が湧くものです。
ところで、玉サバは1匹1320円で売られています。夫は金魚すくいで考えられる最高値の獲物を獲得したのです。この釣果を褒めてあげたいという私は欲深でしょうか?
(わたなべ・あゆみ 第1・3木曜担当)
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