今年、芸能生活60周年を迎えた漫才師の西川きよしさん(77歳)。横山やすしさんとコンビを組んだ漫才では、ボケとツッコミが交互に入れ替わる独特のスタイルを確立して人気を博しました。やすしさん亡きあともテレビや舞台などで活躍中の西川きよしさんに、これまでの漫才人生や、やすしさんへの思いを伺いました。
聞き手/小野塚康之
この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2023年11月号(10/18発売)より抜粋して紹介しています。
コンビの愛情は恋愛以上
――1966(昭和41)年に「横山やすし・西川きよし」のコンビ名でデビュー。翌年には上方漫才大賞で新人賞を、その後は大賞も数回受賞しています。やすしさんとのコンビは、どんな感じだったんでしょうか。
西川 約30年おつきあいさせていただきましたけど、やすしさんは人に触れられることが嫌な人です。せいぜい触れて握手くらい。だから人間関係を築くのにちょっと時間かかりましたわ。
僕の方が後輩ですから、楽屋には必ず僕が先に入ります。それでやすしさんが「おはよ」って入ってくるんですけど、ゆうべ遅くまで飲んでたのか、それとも家に帰って家族と過ごしていたのかは大体分かりますからね。ちょっと疲れているなと思ったら、まずはやすしさんを笑わすんです。ドライヤーをかけるやすしさんに、「あれ、いつもと違うコロンの匂いがしますね」と僕が声をかけると、やすしさんが「ええ、そんなことないよ」と笑いながら返事をする。そういうやり取りをしながら、片方の袖を内側に入れた背広を渡したりするわけです。
――それはわざとですか?
西川 そう、わざと。で、やすしさんが「腕入れへんがな!」ってツッコミを入れるという、いわゆる種火を入れて尻に火をつけるような感じです。そこからやすしさんにぐーっと盛り上がってもらうんですよ。
出番前になると、僕は斥候係として舞台の袖へ行って客層を確かめ、楽屋に戻ってやすしさんに報告します。で、例えば「今日は家族連れが多いからあのネタでいきましょうか」と提案すると、やすしさんは「分かった」とだけ返事して、2人で舞台にぱっと出て漫才をやる。そうやって5年、7年、10年が過ぎ、親しくなればなるほど漫才はおもしろくなりますから。恋愛以上に、本っ当に計り知れない愛情が生まれますね。
※この記事は 2023年7月8日・8月5日放送「笑いで幸せを届けたい~芸能生活60年を迎えて~」を再構成したものです。
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