「ラジオ深夜便」アンカーのエッセーをステラnetでも。今回は中村宏アンカー。最新のエッセーは月刊誌『ラジオ深夜便』8月号で。

6月に結婚すると幸せになると言われます。コロナ禍の前、ある結婚披露宴に出席しました。今は仲人を立てない披露宴がほとんど。その日は「人前結婚式」で、新郎新婦の友達が「誓いの言葉」を読み上げ、2人が「誓います」と、皆の前で誓いました。

披露宴が始まる前、出席者は前室でお酒を飲みながら待ち、会場に入るとすぐにビールと簡単なオードブルが出されました。
したがって、主賓の挨拶も飲みながら聞きます。私は乾杯の発声をしましたが、そのころには皆さん、もう"でき上がって"いて、盛り上がっていました。出席者の大半が友人と同僚で、2人の上司のスピーチも"友達感覚"。今の職場では上司も"友達化"しているのだろうと感じました。堅苦しいスピーチやお説教くさいスピーチをする上司は嫌われるのでしょう。

それで思い出しました。40年余り前、私が出席したある披露宴では仲人が「簡単にお2人をご紹介します」と言って40分もしゃべったことがありました。実話です。

また、ある披露宴では来賓が「わが社は○○という製品を作っていまして、どういう物かと言いますと」とたっぷり説明し、「新郎のお父様には大変お世話になっています。新郎とは本日、初めてお会いしまして……」と自社の製品と新郎の父親の話ばかり。

そしてまたある披露宴では、「結婚生活には3つの袋が肝心でして、お袋と堪忍袋と給料袋」などと言って笑いを取る"昭和のお決まり"のスピーチがありました。そのころすでに給料は銀行振り込みでした。

数年前、趣味のバスケットボールを通じて知り合った2人の披露宴は、外に用意したバスケットゴールへの新郎の見事なシュートから始まりました。「外したら結婚はナシ」という前置きで。入らなかったらどうしたのでしょうか。何か考えていたのでしょうね。

今の披露宴は新郎新婦のアイデアがいっぱい。本当に2人が主役です。完全にコロナが去って、そんな披露宴が戻りますように。

(なかむら・ひろし 第2金曜担当)

※この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2023年6月号に掲載されたものです。

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