「東京・世田谷には大切な“居場所”がたくさんある。そのことを自分たちで確かめて、発信してみよう!」
そんなプロジェクトを立ち上げたのは、駒澤大学経済学部・松本典子教授のゼミ。学生たちが地域と向き合った奮闘記を全4回でお届けします!
▶▶プロローグ編「東京・世田谷には大切な“居場所”がたくさんある!」
▶▶第1話「河川敷で見つけた宝もの」
▶▶第2話「こころを育む子ども食堂」
▶▶第3話「ようこそ小さな本屋さんへ」


今回紹介する学生が制作した動画リポートはこちら!
「まつばらキッチン(通称:まつキチ)」

▼「まつばらキッチン(通称:まつキチ)」の動画リポートはこちら▼


クリスマスが近い、12月のある日。
その部屋にはたくさんの子どもと大人が集まって食事を楽しんでいました。18歳以下の子どもが無料で食事をすることができる「世田谷子ども食堂まつばらキッチン(通称:まつキチ)」です。食事の前後には、友達やボランティアの大学生と遊ぶこともできます。子どもたちの成長を見守りながら、地域に根差した子ども食堂を目指している団体です。

利用には参加注意事項を確認の上、事前の申し込みが必要です
友達とクリスマスの食事を楽しむ子どもたち

そんな「まつキチ」の活動に興味を持ち、動画リポートを制作することにしたのは、駒澤大学経済学部の髙橋あかねさん。

取材、構成、撮影、編集、ナレーション・・・全部一人で担当した髙橋あかねさん

たくさんある団体の中から「まつキチ」を選んだのはなぜでしょうか。髙橋さんに伺いました。

髙橋「大学で松本ゼミに入って非営利組織について勉強していく中で、ひとり親世帯を救う存在として、子ども食堂の活動を知ったのがきっかけです。今まで『まつキチ』の活動については知らなかったのですが、ちょうど『居場所サミット』に参加されていたので​話を聞いてみたんです。そうしたら人どうしの温かいつながりを感じてより興味を持ちました。また、『まつキチ』は発足してまもない団体なので、私が取材して発信することで、多くの人に存在を知ってもらい、活動を広げるきっかけにしてもらえたらと思って、取材を決めました」

取材に向けて準備を進めることにした髙橋さん。構成を決め、具体的にどのような場面を撮る必要があるのか考えていきました

髙橋「私はふだんから、趣味で旅行の思い出などの動画制作をしているのですが、いつもは、まず撮ってから内容を考えているんです。今回のように構成表を作ってから動画を撮って、編集して……というのは、いつもとは違う感覚でした。でも、取材やロケの前に、ネットでの下調べやヒヤリングなどの事前の準備をしっかりしたからこそ​、安心して作業を進めることができました。
実は本格的な取材の前に、一度『まつキチ』に下見に伺ったんです。自分が体験しないと、どういう映像が撮れるのか分からないと思ったので、お願いして、スタッフとして一日過ごさせていただきました。そのおかげで、どのような映像を撮りたいかイメージすることができました。
構成表や下見など、事前に考えることの大切さをここで学ぶことができました」

事前に構成を練る髙橋さん

しかし、どれだけ事前に準備をしていても苦戦した場面があったそうで……。

髙橋「子どもたちを撮影するのが大変でした。やっぱりカメラを向けると緊張してしまうんですよね。下見のときから子どもたちと仲良くなろうと話しかけたり、取材当日もまずはカメラを持たずにお話ししたりと頑張ったのですが、いざ撮影となると逃げ出してしまう子もたくさんいました。
それで気付いたのは、言葉じゃなくても子どもたちの感情は表現できるということでした。ちょうどクリスマス会の日に取材に伺ったのですが、プレゼントを真剣に選んでいる顔とか、無理に質問しなくても、伝えられることはあるのかなと思いました。友達・スタッフさんとしゃべっている様子や、サンタさんにプレゼントもらってにこにこしている顔など、自然な姿をカメラに収めました。『まつキチ』は、友達やスタッフさんと楽しくコミュニケーションをとれるというところも魅力の一つです。無理してインタビューをしないことで、『まつキチ』のすてきな部分を見ることができたように思います」

楽しそうにお菓子の準備をする男の子

「まつキチ」に何度も足を運んだ髙橋さん。すると、ある変化が起きたとのこと――。

髙橋「取材を重ねるにつれて、スタッフさんや子どもたちとの距離が縮まっていくのが感じられたことです。初めは、皆さん警戒されていて、心の距離を感じていたんです。でも、この取材は私が本当にやりたかったことですし、毎回しっかり準備して何度も通っていくうちに、変化がおこりました。取材に行く間隔があいてしまったときは、子どもたちから『なんでこの前、来なかったの』と聞かれたり、スタッフさんから話しかけてくださったり。代表の村上由美さんからは『初回と比べてすごく印象が柔らかくなった』とのお言葉をいただきました。私の中では何かを変えたつもりはなかったのですが、『まつキチ』がアットホームな場所だったおかげだと思います。やっぱり、人間の関係性って1回きりでは築くことが難しい。でも毎回、真摯に向き合っていくことで、これくらい印象を変えられるということを知りました」

「世田谷子ども食堂まつばらキッチン」代表の村上由美さん

授業や就活と両立して動画制作をやりきった髙橋さん。この経験をどのように生かしていくのでしょうか。

髙橋「人との関係を築くのは、簡単ではありませんでした。一方で、丁寧に向き合うことで絶対に悪くはならないとも感じました。子どもたちと話すときはこちらから話しかけて警戒心を解いたり、大人と話すときは相手の意図を一度しゃくしてから発言したり。どんな人に対しても興味を持ち、気になったことはすぐに質問するようにして、これからも関わる人たちとのつながりを大切にしたいです」

最後に、動画を見てくださる方に向けて、メッセージをいただきました。

髙橋「代表の村上由美さんや子ども食堂を支えるスタッフの皆さん​が思い描いている『まつばらキッチン』は、温かくて居心地の良い場所です。私も実際に取材に伺って、そのように感じました。人と人とのつながりによってこのような居場所が生まれているということを、動画で伝えられたら良いなと思います」

食後は友達やボランティアの大学生と遊びます。

動画リポートの制作を一人で頑張った髙橋さん。子ども食堂「まつばらキッチン」の活動を社会に発信したいという強い意志が感じられました。

髙橋さんの強い思いがこめられた、「まつばらキッチン」の動画リポートの視聴はこちらから↓

次回「第3話」は、町の小さな本屋さんを取材した女子5人のチームの取材体験記です。
似た者どうしの仲の良い班ですが、制作過程では、そのために少し困ったことになったようで……。ぜひ、ご期待ください!