「東京・世田谷には大切な“居場所”がたくさんある。そのことを自分たちで確かめて、発信してみよう!」

そんなプロジェクトを立ち上げたのは、駒澤大学経済学部・松本典子教授のゼミ。

学生たちの手で世田谷のNPO法人や住民の活動を取材し、動画リポートを制作しようというもの。ゼミ生たちは3つのグループに分かれ、自ら地域を取材し、動画制作に取り組みました。この記事では、学生たちが地域と向き合った奮闘記を、全4回にわたりお届けします。

「動画リポート制作」プロジェクト
①せたがや居場所サミットにて、どのような団体があるのかリサーチ
②企画書作成 ③出演交渉、ヒアリング ④構成検討、構成表作成
⑤ロケ ⑥編集試写 ⑦動画リポート完成

実際に学生が制作した動画リポートはコチラ↓
各団体の取り組みはもちろん、動画制作と向き合う学生たちの姿も魅力的です。

▼「砧・多摩川あそび村」の動画リポート▼

▼「まつばらキッチン」の動画リポート▼

▼「WARP HOLE BOOKS」の動画リポート▼


今回のプロローグでは、動画リポート制作プロジェクトの概要とねらいについて、松本典子教授のインタビューとともに紹介します!

松本典子教授

Q.このプロジェクトを始めた理由を教えてください。
A.第1の理由は、駒澤大学と同じ世田谷にある用賀商店街さんを通じて、NHKサービスセンター(現・NHK財団)の皆さんにお会いしたことがきっかけです。もともとこのゼミは、商店街主催の夏祭りや屋台村などを通じて13年間にわたり交流がありました。

その後、用賀で開催された防災イベントで元NHKアナウンサーの星野豊さんと出会い、動画リポート制作で何か地域貢献できる取り組みができるとおもしろいね、ということでこのプロジェクトが始まりました。

第2の理由は、「第3回せたがや居場所サミット」(2022年7月)に実行委員としてゼミ生と一緒に参加し、当日参加した、世田谷で福祉的な居場所をつくる団体のお話を聞けたことです。同サミットでは駒澤大学のホールに約30団体が集い、交流しました。学生たちは各団体のことを知り、自分が社会に発信したいのはどの活動か、考えることができました。

第3の理由は、今年度から、駒澤大学で「駒大生社会連携プロジェクト」が始まったことです。最近はどの大学でも、持続可能な社会の実現に向けてSDGsに関連した取り組みを実施し、発信していこうとしています。駒澤大学も、その活動の一環として、学生たちが社会連携・地域貢献する活動に、学内公募型の助成が実施されることになりました。そして、この動画リポート制作プロジェクトが採択されたのです。

「せたがや居場所サミット」
これまで関わりが少なかった子ども、若者、障害者、高齢者、外国人、貧困者など、さまざまな立場の人をつなぎ、「ケアする社会」の実現を目指すイベント。駒澤大学に集まった団体が、トークセッションや展示を通してお互いの理解を深めた。
取材の基礎を学ぶ学生たち

Q. このプロジェクトを通して、学生にはどのように成長を期待しますか?
A.学生には最初から最後までやり抜く力を身につけてほしいと考えています。仕事をやり抜くことは、社会に出たら当たり前のことです。しかし、高校時代までの与えられる教育に慣れきった今の大学生にとっては一苦労です。自分が共感する団体を見つけ、社会に向けて発信したいという思いから始まり、各団体の代表の方との対話を通して、信頼を得ながらプロジェクトを進めていく。そのプロセスで出てきた課題を、さまざまな経験をもつ星野さん、そして私と一緒に解決しながら、次の工程へと進んでいくことは簡単ではないかもしれません。だからこそ、その1つ1つを大事にしてほしいと思っています。

ゼミの時間には、他の班と情報交換をすることも

Q.実際にプロジェクトが始動して、学生の反応はいかがでしたか?
A.小さなことかもしれませんが、関わったゼミ生は社会人顔負けというほど、連絡をとるスピードがあがりましたし、プロジェクトに必要なことを積極的に提案してくれるようにもなりました。今回とても良かったのは、学生たちが頑張って連絡をとるほど、各団体の代表の方たちが学生の思いに応えてくださったことです。世田谷の人たちは本当に温かい方たちが多く、常に学生の成長を願ってくれています。そのような大人たちの思いを受け止めつつ、さらに、後輩にも温かい視線を送れるような大人へと成長してほしいと考えます。

Q.プロジェクトのなかで印象に残っている出来事を教えてください。
A.動画の構成検討会です。NHKサービスセンター(現・NHK財団)さんのオフィスで構成の検討会をさせていただいたのですが、そのときにいつもはおとなしいゼミ生が比較的積極的に発言をするなど、私がいつも見ている風景とは全然違っていて。もっとみんなの気持ちを受け止めつつ、いいところを生かせるようなゼミにしていかなければならないと感じました。

ポストイットを使って動画の構成を考えました

学生たちが制作した動画は、世田谷という地域の魅力と可能性を伝えるリポートであるのと同時に、彼らの「成長物語」でもあります。ぜひ、3つの動画でそれを実感していただきたいと思います。

次回は、「砧・多摩川あそび村」(通称:きぬたま)をリポートした、石井さん、永井さん、福岡さんのグループの奮闘を紹介します。どうぞ、お楽しみに!

(取材・文/NHK財団 宇田川花奈)