「東京・世田谷には大切な“居場所”がたくさんある。そのことを自分たちで確かめて、発信してみよう!」
そんなプロジェクトを立ち上げたのは、駒澤大学経済学部・松本典子教授のゼミ。学生たちが地域と向き合った奮闘記を全4回でお届けします!
▶▶プロローグ編「東京・世田谷には大切な“居場所”がたくさんある!」
▶▶第1話「河川敷で見つけた宝もの」
▶▶第2話「こころを育む子ども食堂」
▶▶第3話「ようこそ小さな本屋さんへ」


この記事、第1話で紹介する学生が制作した動画リポートはこちら!
▼「砧・多摩川あそび村」の動画リポート▼


とある冬の日。
どこまでも真っ青な空の下、多摩川の河川敷に子どもたちの遊び声が響いています。この外遊びの会を開いているのは、NPO法人「砧・多摩川あそび村」(通称:きぬたま)。毎週月・水・金・土に開催し、虫取りや木登りをして遊んだり、工作をしたりと、「遊び」の内容は多岐にわたります。

理事長の上原幸子さん

そんな「きぬたま」に地域の魅力と可能性を感じ、動画リポートを制作したのは、駒澤大学経済学部の石井和輝さん、永井花音さん、福岡拓実さん。

左から石井和輝さん、永井花音さん、福岡拓実さん

2022年7月に駒澤大学で開かれた「せたがや居場所サミット」で「きぬたま」のことを知り、興味を持った3人。数ある団体の中から、「きぬたま」を取材しようと決めた理由は何だったのでしょうか。チームのリーダーの石井さんに聞きました。

石井「子どもの成長に興味があったからです。僕はふだん塾講師のアルバイトをしていて、塾だと成績によって子どもたちの成長を知ることができます。ただ、もっと他の形でも、子どもの成長を感じられるものはないだろうかと考えていたとき、『きぬたま』のことを知りました。

『きぬたま』には、学校や地域のコミュニティになじめない子どもたちも集まってきます。外遊びを通して、居心地の良い空間と人間関係を見つけてもらう。そんな『きぬたま』の活動に惹かれて、取材してみようと思ったのです」

一生懸命何かを運んでいる姿が微笑ましい男の子

理事長の上原幸子さんと連絡をとり、1時間余りにわたって活動の概要を伺った3人は、実際に活動が行われている多摩川の河川敷を訪ねました。

石井「ツリーハウスや木登りを一緒にやってみたんです。でも、子どもたちのペースについて行けず、すべったり、転んだりで……(笑)」
永井「子どもたちはみんな元気いっぱいで、私たちをいろいろな遊び場に案内してくれました」
福岡「休憩できるベンチや井戸など、設備も充実していてびっくりしました」

そんな中、石井さんは子どもたちの表情に注目しました。
石井「表情が生き生きと輝いているんですよ。塾の講師をしていても『成績が上がったよ~』とうれしそうな子どもたちの笑顔に出会うときがあるんですが、青空の下、河川敷で遊ぶ子どもたちの表情は、とても健康的でまぶしかったです。この笑顔に支えられて『きぬたま』のスタッフの皆さんは長く活動を続けているのかなと思いました​」
永井「明るく、活発な雰囲気を感じて、すてきな動画になると直感しました!」
福岡「うんうん。そうだったね」

多摩川の河川敷で元気に遊ぶ子どもたち
きぬたまのスタッフにインタビューをする永井さん

ところが、動画の制作は苦労の連続。特に3人の先頭に立って交渉や調整を引き受けた石井さんは大変だったと言います。
石井「僕たちがどう描こうとしているのか、イメージを上原理事長に伝えたり、過去の活動の写真提供をお願いしたり、取材の日程を調整したり、かなりの数のメールをやりとりしました。取材しようと思っていたことが、コロナの影響で取りやめになったこともありました。ゼミの松本典子先生やアドバイザーの星野さん(NHK財団)との連絡も日常茶飯事で、文面にも気を遣いました(笑)。アドバイスや連絡事項をうまく伝えられなかったり、メールのCCに誰を入れるか迷ったり。とにかく今まで悩んだことのないことにも気を遣いました」

永井さん、福岡さんにも大変だったことを聞いてみると――、
永井「大学の外の皆さんと連絡したり、調整したり、ふだんの学生生活では、経験できないことを経験しました。和輝(石井)が先頭に立って頑張ってくれたのは、心強かったです」
福岡「やっぱりパイプ役の和輝が一番大変だったと思います。自分が大変だったことを挙げるとしたら、学業や就活との両立かな。インターンや面接を受けながらロケに行くのが大変でした」

リーダーの頑張りはチームメイトにしっかり伝わっていたようです。

制作の日々を楽しく振り返る3人

今回の動画制作プロジェクトに取り組んだ感想や学びを教えてください。
福岡「取材して、動画リポートを制作するという作業自体が、貴重な経験になりました。みんなに自慢したいです(笑)」
永井「学生のうちに社会人と何かする経験ってなかなかないと思うし、このプロジェクトがなければ、『きぬたま』の方々とお話しすることもなかったと思います。動画を一つ作るだけでも、企画書や構成表が必要なことも全然知らなかったので、すごく貴重な経験になりました」

石井「『きぬたま』の皆さんが、こういう活動をやろうと一歩を踏み出す姿、そしてそれを四半世紀近くも続けている姿に感動しました。学校などで居心地が悪くても、学校以外で誰でも気軽に利用できる場所がある、そこに行けば助けてくれる大人や、同じ悩みを抱えた友達もいっぱいできるということを発信する活動のすべてが学びでした」

石井さんは動画のナレーションも担当

最後に、この動画を通じて伝えたいことを3人に聞きました。
永井「子どもたちがすごく楽しそうに遊んでいる姿と、『きぬたま』の皆さんのすてきな思いを、多くの人に知ってもらいたいです」
福岡「『きぬたま』ができた経緯とか、実際に聞かないと分からないこともすべてをこの動画にまとめているので、多くの人に見ていただきたいです」
石井「コロナで外に出られない日々が続いていましたが、改めて外遊びの意義というか大切さを感じてもらいたいです」

3人の思いが詰まった動画の視聴はこちらから↓。ぜひ、ご覧ください!
▼「砧・多摩川あそび村」の動画リポート▼

次回「第2話」は、こども食堂の取材体験記です。動画の構成を練るところから取材まで、一人でこなしました! 取材を進めるにつれ、こども食堂の方々との関係性に変化があったようで…。ぜひご期待ください!

(取材・文/NHK財団 宇田川花奈)