ラグビーで生まれた新たな絆

岩手県釜石市といえば、鉄と魚、そして「ラグビー」のまち。
“北の鉄人”と称えられた、新日本製鉄釜石ラグビー部による日本選手権7連覇(1978~1984)の偉業、そして2019年にはラグビーワールドカップが開催されるなど、そのレガシーと熱い思いが強く根付いている土地だ。

この釜石の地で、「流通経済大学ラグビー部と釜石市民交流会」が6月24日に開催された。「であうアート展in釜石」開催を記念して行われたスペシャルイベントのひとつだ。

会場となったのは、ラグビーワールドカップも行われた「釜石鵜住居復興スタジアム」。東日本大震災で被害を受けた旧鵜住居小学校、釜石東中学校の跡地に建設された、復興のシンボルともいえるスタジアムに、流通経済大学ラグビー部員約20名に、ラグビー経験者はもちろん、今回がラグビー初挑戦となる方も合わせた釜石市民約15名が集まった。


午前9時、交流会がスタート。
それぞれ入念にウォーミングアップを行った後、早速試合へ! 4つのチームに分かれ、総当たり戦で優勝チームを決めていく。試合形式は、タックルをタッチに置き換えた「タッチラグビー」。ハンデとして、男子ラグビー部員の得点は1点、女子ラグビー部員は2点、釜石市民は3点に設定。

より高得点を目指すべく、釜石市民にパスを回す戦略や、なりふり構わずトライを目指すなど、チームによって個性があり、どの試合も白熱。試合時間は、当初前後半計10分だったが、想像以上のハードなプレーに、釜石市民から白旗が上がり…、途中から8分に変更。「きつい、もう動けない!」と叫びながらも、学生たちとコミュニケーションをとりながら、全力でプレーをする釜石市民の笑顔が印象的だった。

楽しい時間はあっという間に過ぎ、惜しみながらも交流会は閉幕。
全員が口をそろえて「楽しかった!」と充実した表情で語る参加者の様子に、ラグビーを通して新たな絆が生まれたことを感じる時間となった。 

チーム1は、釜石市民が大活躍! 3点のトライを積み重ね、見事全勝で優勝を果たした。

また交流したい、戻ってきたい

今回、この交流会に参加した学生は、どのような思いを抱いたのか――。交流会終了直後、率直な感想を聞いた。

左から、ステファン・デュトイさん、鈴木凜々さん、主将・原田季弥さん

原田「釜石の方が全力でラグビーを楽しんでいる姿に、大きな刺激を受けました。僕たちは全国大会でベスト4入りし、国立競技場でプレーすることを目標にしています。その目標がかなったとき、釜石の皆さんも招待したいと思います!」
鈴木「釜石の皆さんと交流することができてすごく楽しかったです。ラグビー初心者の方も笑顔で楽しんでいて、自然と皆さんとなじむことができました。このような機会はなかなかないので、またぜひラグビーを通じてさまざまな方と交流できたらいいなと思います」
ステファン「ワールドカップも開催された自然あふれる釜石の地で、地元の皆さんと一緒にプレーできたこと、誇りに思います。この経験は本当にハッピーなこと。またこの地に戻ってきたいです」

「また交流したい、釜石に戻ってきたい——」
その言葉が、釜石市民と参加学生とのつながりをものがたっている。
全力プレー後のへとへとのなかでのインタビューだったが、スッキリした笑顔で、朗らかに交流会を振り返る姿がまぶしく映った。


子どもたちに、釜石が持つ力を!

今回のラグビー交流会を発案したのが、釜石ラグビー応援団副団長の浜登寿雄さん。学生と交流を結びたいという浜登さんの思いから、今イベントが実現した。交流会終了後、ラグビーによる交流から見えてきたものについて、浜登さんが語ってくれた。

――交流会を終えた今、率直な思いを教えてください。
浜登「ラグビーってこんなに楽しいんだというのが、率直な感想です。男性女性、初心者経験者関係なく、チームの勝利のためにみんなで力を合わせて、パスを回してトライを目指すというのが、本当にすばらしいなと。『ラグビーの力』を実感した一日でした。『であうアート展』から大きく派生して、流経大ラグビー部の皆さんと交流する機会をいただいたこと、本当に感謝しています」

――今回の交流会から、今後どんなことを目指していきたいですか?
浜登「このつながりを大切に、今後私たちが流経大に伺ったり、学生さんがまた釜石に足を運んでくれたり、といったことを長く続けられたらと思います。釜石市は、約60年前のおよそ9万2千人という人口をピークに減り続けていて、いまでは約3万人となりました。人口をすぐに回復させることは難しいですが、交流人口を増やすことはできます。もっともっとこの輪を広げ、釜石の子どもたちも参加するようになるまで広げていけたら。このイベントの可能性は、無限大です」

――ラグビーを通じて、子どもたちに伝えたい思いは?
浜登「『ラグビーのまち・釜石』が持つ力をしっかり伝えたいと思います。ラグビーワールドカップを観戦した子どもたちに、これから何がやりたいのか、アンケートを取ったことがあるのですが、いちばん多かったのは、『世界の同世代の仲間と交流したい』そして『ボランティアをしたい』という回答。世界とつながりを深め、地元・釜石のために何かしたいという思いがあることを強く実感した結果でした。ここ釜石は、そういった子どもたちの思いを実現できるまちです。そのきっかけ作りを今後も行っていきたいと思います」

学生と地域住民との交流から生まれる可能性は無限大――。
「ラグビーのまち・釜石」から生まれた交流が、日本全国、そして世界とつながる架け橋になっていくに違いない。

記念写真は、釜石(かまいし)のC(シー)ポーズで!