震災から12年を経た三陸の地で「であう」「つながる」
2021年から流通経済大学が、教育プログラムの一環として展開している「であうアート展」。展示作品を通して、障がい者アーティストや学生、地域住民たちが「であう」「つながる」場を目指している。
現在、岩手県釜石市で「であうアート展in釜石」が開催中!
会場は、釜石市民ホールTETTO ギャラリー。7月2日(日)まで開催予定だ(詳細はこちらから)。
「アートが創り出す空間に浸り、知っている人同士、知らない人同士、学生や市民など多様な人々が集い、行き交う。また、そういう『場所』をたくさんの人たちの手で創り出す、それが『であうアート』です」
と語るのは、「であうアート展in釜石」の実行委員長を務める流通経済大学の龍崎孝副学長。
その言葉の通り、会場は、アートを媒介に来場者同士が時間を共有する空間に。
「どうやって描いたんだろう?」「色の組み合わせが斬新!」
と、それぞれの作品に思いをはせる来場者の様子が印象的だ。
東日本大震災から12年。
大学そのものを「コモンズ(共有の空間)」とすることを目指す流通経済大学と三陸の人々との交流から、新たな価値や可能性が生まれる予感がした。
地元アーティスト小林覚さんの作品も出展!
今回の展示では、「であうアート展」スタート時から出展している、千葉県成田市の障がい者支援施設「生活工房」所属アーティストの作品のほか、前回の巡回展から参加している宮城県大和町の「nisipirica(にしぴりか)」「いこいの家たんぽぽ」の所属作品など、合わせて50点が展示されている。
注目したいのは、岩手県花巻市の「るんびにい美術館」で創作活動を続ける釜石市出身のアーティスト・小林覚さんの初出展。
一見、直線や曲線をつなげた規則性のないものにも見えるが、実はこれは文字。この独創的な表現は「サトル文字」と呼ばれ、観る人を惹きつける。じっと目を凝らしてみると、だんだんと文字が浮かび上がってくるのだ。小林覚さんが描く独自の世界を、ぜひ直接堪能してほしい。
「作品を見て、勇気と希望が湧いてきました」
今展示で最多15作品の出展となったのは、公益社団法人 東北障がい者芸術支援機構の推薦作品。こちらも「であうアート展」初出展となる。
「学生や大学が主体となって、障がい者アートの展示を開催していることを知り、感銘を受けました。我々もぜひ一緒に参加したいと思い、今回出展しました」
そう語るのは公益社団法人「東北障がい者芸術支援機構」事務局長の阿部賢さん。
東北障がい者芸術支援機構では、障がいのある人の芸術活動の普及と振興を図るという目的のもと、「Art to You! 東北障がい者芸術全国公募展」を毎年、仙台市内にて開催している。障がい者アートの魅力について、阿部さんは——
「障がい者の方が描く世界観は、自分では到底生み出せないと感じるものばかりです。人が持っている能力って本当にすごい。その作品から何か感じることは絶対にあると思います。
これは当法人での巡回展の話になりますが、小さい子どもを連れたお母さんが、熱心にアートを見ていて、その帰り際に声をかけてくださいました。
『子どもが失語症で、どうやって育てていけばいいのか自問自答していたんですが、同じ境遇の方が制作されたすばらしい作品を見て、勇気と希望が湧いてきました。自分自身、一歩前に踏み出すことができました』と。
まさに、アートが人と人とのつながりを生み出した出来事でした。今後も、このような“であい”をより多くの人に届けたいと思います」
独創的で生き生きとした作品と「であう」「つながる」ことができる「であうアート展」。障がい者によるアート作品は、いわば彼らの第二の言語。作品の力強い色づかい、細かな線の一本一本を通して、語りかけてくる——。
多くの可能性を秘めた、心揺さぶるアートと、あなたも触れ合ってみませんか。
「であうアート展in釜石」
【日程】2023年6月17日(土)~7月2日(日) 午前10:00~午後6:00
【会場】釜石市民ホールTETTO ギャラリー
https://tetto-kamaishi.jp/event/4890
入場無料