NHK放送博物館館長の川村です。今回は放送の歴史にまつわる「アート」な世界にご案内します。
日本の放送は1925年の東京・大阪・名古屋の各放送局の開局で始まりました。その後約10年で、ラジオのネットワークは、北は旭川から南は鹿児島まで全国27局まで広がり、ほぼ全国をカバーしました。当館で所蔵している各放送局の開局を記念して作られたポスターや絵葉書には地元の名所や風物が描かれていて、それぞれ各地の放送に対する期待の大きさがうかがえます。そこで今回は凝りに凝った「開局記念アート」の数々をご紹介します。
ではまず初めに日本初のラジオ放送開始を記念したポスターをご覧ください。
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こちらは日本を代表する挿絵画家・漫画家の樺島勝一氏の手による「東京放送局」の開局ポスターです。縁側で真空管式のラジオを聴く女性がペン画で描かれていますが、さりげなくスピーカーの横で犬も涼しい顔でラジオを聴いている(と思います)絵柄がユーモラスです。
ちなみに樺島勝一氏の代表作は戦前の漫画「正チャンの冒険」などがありますが、さらに現代の人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の初代担当編集者だった椛島良介氏は勝一氏の孫にあたります。樺島作品の開局ポスターはもう一つあります。
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同じく1925年に開局した名古屋放送局のポスターです。東京放送局とほぼ同じレイアウトですが、こちらはヨットの上でラジオを聴く男女が描かれていてたいへんモダンな感じです。
さて1925年に3局が開局すると次は3年後の1928年、札幌・仙台・広島・熊本でラジオ放送が始まりました。ではその中から仙台局の開局ポスターをご覧いただきましょう。
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こちらは東京・名古屋とは趣が異なりますね。「学都大仙台に恵まれたるJOHKは信用の放送と徳義の聴取によって大発展を期す」という仰々しいコピー(というよりスローガン? このメッセージの意味はいずれまた改めてご説明します)がど真ん中にどーんと配されており、重厚さと軽妙なイラストの調和が何とも言えません。局舎のシルエットの中にはダブルボタンマイクとコーン型スピーカーが描かれ、個人的にはデザイン性も優れていると思います。
さて地方局の開局が相次いでいくにつれて開局ポスターは地域性が色濃くなってきます。たとえばこちら。
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四国初の放送局として1932年に開局した高知放送局の開局ポスターです。描かれているのは高知原産の特別天然記念物オナガドリです。なんとこの時代に放送で使用されていたライツ型マイクの上にオナガドリがとまっております!! 当時は縦長のパネル式のポスターが多かったようですが、その形をうまく利用したデザインです。
続いては有名な観光地が描かれたポスターを2つ。
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1932年開局の京都放送局と松江放送局です。京都局は広重の東海道五十三次に描かれた京都三条大橋をベースにしたもので、松江局は宍道湖のイラストがデザインされています。どちらも大変よくできたポスターですが、特に京都局のものは下半分が黒一色。浮世絵とのコントラストがすばらしく、90年も前のデザインとは思えないシックでおしゃれな逸品です。
こうして見てくると、各局とも開局ポスターに力を入れていることがよくわかります。中にはこんなポスターもありました。
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これも1932年開局の秋田放送局のポスターです。描かれているのは山間部の吹雪の風景と真空管ラジオから流れる放送をこたつに入って聴いているおばあさんの様子です。厳しい豪雪地帯でも温かい部屋でラジオを聴きながら過ごすという当時の新しい生活様式を、新時代のページをめくるようなデザインで描いた作品です。これも地域色を描いた逸品といえるでしょう。
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さて開局ポスターの多くには放送局の送信塔(アンテナ)が描かれているのが特徴です。当時の人にとって、それまで見たこともない鉄塔は新しい時代を象徴する風景として映ったのかもしれません。なお私事ですが川村が局長として赴任したことのある旭川放送局の開局ポスターには当時珍しかった旧陸軍の飛行機と送信塔が描かれています。1933年の開局当時、旧陸軍第7師団がおかれていた旭川を象徴する絵柄でもあります。
いかがでしたでしょうか? このようにレトロな魅力が満載の開局ポスターは当館3階のヒストリーゾーンでその一部を複写で展示しています。是非お立ち寄りください。
コラム「放送百年秘話」は、月刊誌『ラジオ深夜便』にも連載します。
第4回は、9月号(8月18日 定価420円)に掲載。10局のポスターを一覧できるこちらもどうぞお楽しみに!
▼今後の掲載予定はこちらから
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(NHK放送博物館)
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(アクセス)
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