「藤子・F・不二雄SF短編ドラマ」
【公式HP】https://www.nhk.jp/p/fujiko-sf/ts/N93R8JJ329/
「おれ、夕子」は、NHKオンデマンドで配信中(2024年3月28日まで)。

『ドラえもん』『パーマン』など子供向けの明るい作品を描いた漫画家、藤子・F・不二雄のもう一つの一面がみられる『SF短編集』。年月を経てNHKで実写ドラマ化された作品「おれ、夕子」を見て、“今どきの女子大生”はこう思った――!?

「おれ、夕子」のあらすじ
ある朝、弘和(鈴木福)が目覚めると、自分のものではないペンダントを身に着けていた。記憶をたどるとそれは最近亡くなったクラスメート夕子(田牧そら)のものだった……。

葬式の数日後、夕子の父(山本耕史)に呼び出された弘和は夕子の家を訪ねる。思いもよらぬことを告げられたが、呼ばれた本当の理由は不明のままだった。学校では、勉吉(柴崎楓雅)が夕子の幽霊を見たというが誰も信じない。そして再び、怪事件が起きる――。


キャラクターたちは原作漫画を飛び出してきたの?

まず、ドラマが、本当に原作漫画に忠実!という驚き。何より山本耕史さん演じる夕子のお父さんが、思わず笑っちゃうほど漫画のまんま。見た目もそうだし、狂気を秘めた感じも、奥底にあふれる愛情も。鈴木福さんも、“おれ”のなんだか可愛らしくて少しおバカな感じが本当にぴったり。
というか、福さんって呼ぶの慣れないなあ。私たち世代は福くん(ごめんなさい!)を勝手に弟のように思っていた世代(だよね?)なので。大きくなったなあ……、恋なんてしちゃって、もう!(誰目線?)

夕子ちゃんも本当に可愛くて。田牧そらさんの透明感あるかわいらしい感じ、それは夕子ちゃんでしかなかった。夕子ちゃんは聡明で優しくてパパが大好き。家に帰ってきて、すぐにパパに抱きついて「会いたかった!」って言えるんですよ。すごくないですか? 
私が中高生の時にはもう無理だったような……(お父さんごめんね笑)。きっと、娘を持つお父様がたなら、夕子ちゃんの可愛らしさにグッときたんじゃないでしょうか?


“おれ”と夕子の甘酸っぱくて切ない〇〇シーン

“おれ”と夕子ちゃんは、実は両片思い(一番イイ時期!)。なんだけど、ドラマの中で思いを通じ合わせるシーンもなければ、もちろん手をつないだりするシーンもない。イマドキの小学生が読む恋愛漫画より遅れてるよね……。なんなら、ドラマでは最初から夕子ちゃんは死んでしまっているので、生きている2人が話すシーンを視聴者は見られない。(悔しい!)

そして、“おれ”は、夕子ちゃんのお父さんからの証言によって、はじめて夕子が自分のことを淡く思っていたことを知るんだけど、そこでインサートされる回想シーンが、すてき。夕子ちゃんの頬っぺたがオレンジ色で、めちゃくちゃかわいいのだ(このオレンジ色は後半につながってくる。今からハンカチのご用意を)。

なんとそのカットだけが、このドラマにおいて“おれ”と夕子ちゃんが同じ空間に存在できている唯一の会話シーン。主人公とヒロインのはずなのに、そんなことってあるの?

そもそも、主人公とヒロインが同じ体に入るという設定が斬新すぎる。恋愛が主軸のストーリーじゃないからこそ成り立つんだろうけど。後半、夕子ちゃんが「この体、弘和君の……」って確かめるところが本当に切ない。

好きな人の身体と意識を乗っ取るって、どんな気持ちなんだろう。きっとドキドキするだろうけど……、“おれ”と夕子ちゃんが求めているドキドキじゃないよね?


お父さんと夕子ちゃんのオレンジ色の頬っぺた

そして、夕子ちゃんに会いたい一心で禁忌を犯してしまったお父さん――。死んじゃった大好きな人にもう一度会いたいという感情、理解できる部分もあるんじゃないかな?

ただ、天才科学者だった夕子ちゃんのお父さんは、夕子の遺伝子を抽出し、“おれ”に入れることで叶えてしまったわけです。なんだか科学的で、ありえそうな話! 実際、オープンAIのChat GPTとか、身の周りのテクノロジーが急激に発展していますよね? 

一方、私たち人間は、その発展スピードに追いついていけない。まじめな話、使い方を間違えると、すばらしい技術ってすごく怖い。アインシュタインが発表した「特殊相対性理論」と核爆弾しかり、その技術を扱えるほどの倫理や知識を身に着けていないと、私たち人間は道を踏み外す――今回のお父さんみたいにね。

でも、夕子ちゃんの思いを聞いたお父さんは、“おれ”の身体に、おれを戻すことに。夕子ちゃんをぎゅっと抱きしめるお父さん、そして……。
夕子ちゃんの「夕」は、夕日の「夕」だったんでしょうね。夕子ちゃんのオレンジ色の頬っぺたが、お父さんの記憶にはありありと刻まれているのだ。


勉吉―っっっ!!! 好きだ―――!!!

そして、このドラマで忘れちゃいけないのが、愛すべき勉吉というキャラクターです。(見終わった後、みんなが好きになるキャラクターって勉吉じゃなかったですか?)
“おれ”の意識が夕子に乗っ取られたことから、ドラマ後半は勉吉視点で描かれていきます。これも珍しい展開の仕方ですよね。

死んだはずの夕子を見た!と学校で話したことから、嘘つき呼ばわりされた勉吉。真相を解明するべく、夕子ちゃん(“おれ”を乗っ取った姿)を尾行して、夕子ちゃんの家までついていくわけですが……。

(号泣)

部屋の扉の外で、お父さんと夕子ちゃんの会話を聞いた勉吉は、大号泣。他人の家庭の話で、あんなに泣ける勉吉って本当にまっすぐで、かわいい。そして、“おれ”が家に帰るまで、ちゃんと見送ってあげている。後で“おれ”は、その話を聞いて真実を知ることになるという。

真相を解明するだけのつもりが、クラスメートの家庭事情を知って号泣し、最後に友達の帰りもちゃんと見送る勉吉。何て良い子なの……!? というか、この作品の中で一番ヒロインみたいな役回りじゃなかった?(笑)

原作漫画にはなかった謎の説明シーンのわざとらしさ&仰々しさも、めちゃくちゃよかった勉吉。ひょうきんで健気で共感できて、何より優しい。最強です。

勉吉―っっっ!!! 好きだ―――!!!

2001年、東京都生まれ。神話や民話、妖怪等の日本文化に興味を持ち、大学では童謡『サッちゃん』から派生した都市伝説「さっちゃん」について研究している。趣味はカフェ巡りと、小説や漫画を読むこと。