憧れを抱き、その夢を叶えるために人は努力をする。だが、その夢を諦めても守りたいと思うものができたとき、そのために自分を犠牲にして行動できる人は決して多くはないだろう。
7月14日(金)放送の「超多様性トークショー!なれそめ」は、自分のこと以上に大切な家族のために頑張れる強さが導く、幸せのかたちを教えてくれた。
今回のゲストカップルは、家族を支えるためにパティシエの夢を諦めた濱根綾華さん&サッカー選手になりたかったインドネシア出身のウギアさん。
家族を支えるために夢を諦め、新たな夢を見つけて国際結婚をしたふたりは、どのようなきっかけでカップルに?
そして、それぞれの家族を支えながら生活していくなかでの苦悩や、夢を諦める選択をした葛藤、国籍や言語の壁を超えられたふたりの強さとはどのようなものなのか?
ふたりの「なれそめ」のキーワードを記した「なれそメモ」をもとに、司会の田村淳さんとゲストの方々が解き明かしていく――。
ウギアさんは漁師の勉強をするために技能実習生として来日。ウギアさんが暮らす寮に、綾華さんがたまたま遊びに来たことで、2人は出会った。ウギアさんに日本語を教えるために、毎日のようにメールを送り合うことが日課となり、その後交際へと発展。
綾華さんはパティシエ、ウギアさんはサッカー選手と、描いていた夢がそれぞれ にあった。けれど、家族を支えるために夢を諦めた。共通の境遇から、ふたりの絆が深まっていく。
国籍や文化の違いという壁がありながらも、離れたくないという強い思いが原動力となり、ふたりは結婚することを決意する。
ふたりの共通点である「夢を諦めた経験」。
諦めるという決断をするまでには、きっとさまざまな葛藤があったと思う。やりたいことがあるのにできないやるせなさ、一方で家族を支えていかなければいけない覚悟。
ふたりが選んだのは、自分の夢よりも大切な家族。
綾華さんは、父やきょうだいを支えるために――
ウギアさんは、母国にいる貧しい家族のために――
その先は、ふたりの選択肢を輝かせる「新たな夢」へとつながっていく。
何度でもやり直せるのが人生
ふたりの話を聞いて、私も夢とまではいかないが、やりたかったことを諦めた経験があることを思い出した。
小学5年生のとき、兄が通っていた硬式野球のクラブに憧れて野球を始めたことがある。その当時は、女の子は私しかいなく、周りは全員男の子だった。体格の違いやコーチからの扱われ方、その差がLGBTQのTであるトランスジェンダーの私にとっては、とてもつらかった。周りの男の子同様に接してほしかったのに…。
そして、中学で野球部に入ったとき、女の子は公式戦には出られないことを知った。大会に出ることができないのなら、活躍できる場がある他の部活に行く選択をした。
続けたくても続けることができないもどかしさや、諦めざるを得ない状況に直面し、自分が置かれている立場や生い立ちを憎んでしまった。
だが、私は新しく始めたソフトテニスで、中学・高校と充実した学生時代を過ごすことができたのだ。
私が本当に大切にしていたのは野球ではなく、自分らしさを発揮できる居場所なのだと気づいた。諦めるという選択は間違いではなく、大きな財産となる経験や出会いをもたらしてくれるものであることを、ふたりの「なれそめ」が改めて気づかせてくれた。
そして、ふたりが思う「超多様性」とは――
「粘り強くいること」(綾華さん)
「知ろうとすること」(ウギアさん)
諦めるということは、新しい出会いや幸せのかたちをつかむ新たなスタートでもある。今ある状況を人と比べて落ち込む日々もたくさんある。自分が描いていた未来とはまったく違うものかもしれない。
だが、大切な人を守りたいと思うその感情を大事にすることで、切り開かれる未来がある。
私たちはどんなことがあっても乗り越えられる愛情というツールをもっているから。
「夢を諦めたこと」 がもたらしてくれた「新しい夢」――。
自分の信念を貫き、大きな壁を乗り越えたふたりが見つけた幸せのかたち。起きるすべてのことに意味があると私に教えてくれた。
「夢を諦め、2人で新たな夢を見つけた国際結婚カップル」 は、本放送から1週間見逃し配信しています。
次回の放送は、7月21日(金)
「髪の毛のないモデル“ボールドヘアモデル”に挑戦した #土屋光子さんと、 超粋な日本舞踊家の #尾上菊紫郎さん」カップル! (再)
(初回放送2022年9月17日)
1999年、茨城県生まれ。女子校出身のトランスジェンダー。当事者としての経験をもとに、理解ある社会の実現に向けて当事者から性に悩み戸惑う方、それを支えようとする方への考えを発信する活動に従事する。