女子校出身のトランスジェンダー正木菜々瀬が「東京レインボープライド」をリポート! これまでの経験をもとに独自の視点で綴っていきます。誰かの背中をそっと押すような、気づきや出会いを皆さんに届けていきたいと思います。

アジア最大級のLGBTQ関連イベントで「“性”と“生”の多様性」を祝福する祭典「東京レインボープライド2023」が、東京・代々木公園で4月22、23日に開催された。LGBTQをはじめとするセクシュアル・マイノリティ(性的少数者)が、差別や偏見にさらされることなく、より自分らしく、前向きに生きていくことができる社会の実現を目指し、2012年に始まったイベントだ。

▼イベント概要はこちらから▼
https://steranet.jp/articles/-/1777

▼イベント体験リポート記事はこちら▼
https://steranet.jp/articles/-/1799

トランスジェンダーである私の人生に大きな変化をもたらしてくれた「東京レインボープライド」共同代表の杉山文野さん、そして同じく共同代表の山田なつみさんに、イベントを通して感じた思いや、日本の課題であるLGBTQの法整備、そしてこれからの日本社会が目指す、本当の意味での国民の平等についての思いを聞いた。


―― 今回のパレードと多くのイベント参加者を見てどのように感じますか?

山田 朝はくもっていましたが、イベントスタートと同時に晴れ渡る、最高のパレード日和になりました。今年も39挺団という多くのフロートに参加いただき、自分らしい姿で、それぞれメッセージを掲げて歩みを進める姿は感動的でした。沿道からは、たくさんの方々が応援してくださって、本当にすてきな雰囲気の中で歩くことができました。会場に帰ってきた後も多くの方々がおかえりなさいと迎えてくださる、温かい雰囲気の中でパレードを行うことができました。

――今年のテーマに込めた思いを教えてください。

山田 今年のテーマは「変わるまで、続ける- Press on till Japan changes. -」。1回目の総動員数は約5000人でしたが、コロナ前に開催した時には、20万人を超える方に参加いただき、12回目の開催となる今年も約23万人以上の方にご来場いただきました。ここまでイベントが大きく成長し、たくさんの方に興味関心を持っていただいていること、とても喜ばしく思っています。と同時に、まだまだ偏見や差別に苦しんでいる当事者がいらして、その法整備が整っていないことも実情としてあります。LGBTQの方もそうでない方も自分らしく、胸を張って生きていける社会が実現するまで、私たちの歩みを止めないで続けるという強い思いを、テーマに込めています。

――今年の新たな取り組みを教えてください。

山田 日本国内で開催されるパレード・フェスティバルのプライドイベント主催団体のネットワークである、JAPAN PRIDE NETWORK(全国プライドネットワーク)に所属する18団体が集結して、大きなブース出展を行いました。ご縁のある地域を応援しに駆けつけてくださるなど、とても温かい場となりました。さらに、今年5月に広島でG7サミットが開催されることもあり、大使館ブースを設け、各国の大使館の方がスピーチくださりました。

杉山 全国各地からそして世界中から応援してくださっていること、大変うれしく思っています。

――首相秘書官の差別発言で、LGBTQ問題への世の中の関心が高まりました。その中で、今回のパレードの意義をどのように考えますか?

杉山 批判的に捉えるというより、LGBTQに対する注目がより集まるきっかけに、そして今の社会に何が必要なのかを考える機会になったと思います。今回、多くの政治家の方、世界各国の大使館の方も参加されています。どのくらいの人たちが興味関心を持って集まっているのか、そしてどんな風に発信され、世間がどんな反応をするのか、霞が関の方たちもかなり注目されていると思います。このイベントが今の社会に必要だということを感じていただける大きな機会になるのではないでしょうか。また日本は、G7の中で唯一、同性に対するパートナーの保障がなければ、婚姻の平等もなく、差別禁止法もありません。トランスジェンダーの性別変更の条件も非常に厳しくあります。G7開催国として、世界に恥じない法整備をしっかり進めていただきたいと思います。

――日本政府が提案したLGBT理解増進法に対してはどう思われますか?

杉山 法律の制定はとても大事なことです。法律がない限り、私たちは今の日本社会で存在していない形で扱われてしまうのが現実です。すべての国民は皆平等だとうたいながら、結婚できる人とできない人がいる。つまり、すべての国民の中にLGBTQの人は含まれていないんです。その問題が根強い差別と偏見につながっているのだと思います。多様な人々と共に暮らしているということを、まずは社会のルールとして組み込むことが大事です。私たちは同性婚(婚姻平等)を強く求めています。

また理解増進ではなく、「差別禁止法」をしっかりと作っていただきたいと思っています。理解増進法ができたとしても、差別禁止法が制定されている国から見れば、意味のない法律として捉えられてしまう。むしろ「日本、何やってるの?」と思われてしまうのではないでしょうか。ですので、しっかりと差別禁止法を盛り込んでほしいと思います。ただ、すぐに実現することは厳しい状況であると思いますので、まずは法整備を少しでも前に進めていただきたいです。


日本と世界のLGBTQに対する認識と法整備の差を、改めて共同代表の話から実感した。
いまだ法整備が進まない日本の現状に対し、悲観せず前向きに歩み続けるその姿は、リーダーとして、とても頼りになると感じた。

杉山さんとの出会いが私に大きな影響を与えたように、誰かの行動や発言は人を動かす大きな力へと変わっていく。今回の「東京レインボープライド」のパレードは、まさにそれを象徴していた。それぞれが声をあげ、小さな一歩を踏み出すことで、私たちの世界は変わっていくのだ。そう信じて、これからも歩み続けたい。