自分と異なる価値観や考え方を持つ人を、「理解する」ことはとても難しい。
納得できない部分も多い。だが、「理解する・しない」以前に、「理解しようとする」気持ちが大切だということに「恋せぬふたり」の第4回では気付かせてくれた。

カズくん(濱正悟)をかばったことで、階段から転落した高橋(高橋一生)。責任を感じたカズくんは、骨折した高橋の世話を泊まり込みですることに。そんなふたりのことが心配なさく(岸井ゆきの)は在宅勤務を始め、3人の同居生活がスタートする。

「男と女が同じ家にいて、何もないとか普通ないでしょ?」
高橋と咲子の関係性をますます疑うカズくんは、「アロマンティック・アセクシュアル」について理解しようと、率直にふたりに疑問をぶつける。一方、咲子は、仕事の企画を通して、一般的な「恋」や「恋愛」についてあらためて考える。咲子が出勤したある日、高橋は、カズくんに恋愛の価値観について語る。「恋愛とは、その時代と場所によって変化します」
そんな同居生活のなかで、カズくんが出したひとつの答えとは――⁉

今回、まず私が最初に考えたいのは、「アウティング」*という行為についてだ。
劇中で高橋が咲子に「アウティング」を指摘したとき、常々私も指摘したいと思っていたので、思わずうなずきながら見てしまった。

LGBTQの当事者として生きる私は、実は苦い思い出がある。

かつて、信頼していた友人に、知らぬ間に「アウティング」をされていたことがあった。それを他の友人を通して知り、大きなショックを受けた。しかも、知られたくない立場の人だったこともあり、私はがくぜんとした。憤りを感じるというより、とても悲しい気持ちになった。

その友人にとっては、きっと伝えても大丈夫な存在だと判断したのだろう。だがそれは、友人が判断することではない。当事者である私が判断することである。

「アウティング」という行為そのものを、このドラマで初めて知った方も多いと思う。それによって深く傷つく可能性があるということを、私の苦い経験とともに覚えておいてほしい。

また今回は、カズくんの主張が多い回となっていた。
少々ずうずうしいと感じてしまうくらい、率直な疑問を高橋や咲子に投げかける場面が多い。あれほどまっすぐに聞かれたら、私なら自分のことを話したくなってしまう。

センシティブな内容だからこそ、ふだんはなかなか他人に話せなかったりもするが、これまでの咲子同様、話せる相手が全くいないのもつらい。もちろん、聞かれることに対して、つらいと感じる人もいる。私も、状況や人によっては、話したくないときもある。互いに、言葉選びが難しいのが現実だ。

「わかりたい気持ちとしつけな質問はちがいます」
たしかにそのとおりである。私も過去に何度か不躾な質問をされたことがあるので、高橋のこの言葉は心に響いた。だが、それ以上に「理解したい」という今回のカズくんの姿勢が気持ちいいくらい、まっすぐで、すてきに感じるのだ。

「理解する」ということより、「理解したい」という思いや姿勢が、時として人の心を動かす。自分が思っていた「普通」や「当たり前」に疑問を持ち、「理解したい」というまっすぐな気持ちが立ち上がるとき、人と人との境界線がなくなるような希望が見える。

*「アウティング」…SOGI(性自認・性的指向)を本人の了承を得ずに、他の人に暴露すること。

1999年、茨城県生まれ。女子校出身のトランスジェンダー。当事者としての経験をもとに、理解ある社会の実現に向けて当事者から性に悩み戸惑う方、それを支えようとする方への考えを発信する活動に従事する。