紀伊国を縦横に走る熊野古道は、いにしえより人々を聖地へと誘い、その思いを刻んできました。長い間、熊野の巡礼の道を歩いてきた大上敬史リポーターが、熊野古道を案内します。
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家にあれば笥に盛る飯を草枕
旅にしあれば椎の葉に盛る
飛鳥時代、天皇の子に生まれながら謀反の疑いで処刑された有間皇子の辞世の
句。悲劇の皇子は熊野古道を護送され、藤白坂で19年の短い生涯を終えた。
海南駅から古道に入ると、坂の入り口に皇子の墓がある。丁石地蔵をたどり難所
を上り切ると視界が開け、「御所の芝」に着く。熊野随一の絶景を目にした皇子の気持ちはいかばかりだったか。眼下の海を見ながら、千年の時を経て古道を往来した人々に思いをはせた。
大上 敬史 (おおうえ・たかし)
和歌山県海南市生まれ。熊野古道に魅せられ、長年、古道
の撮影や古老からの聞き書きを続ける。「日本列島くらしの
たより」に出演。
(月刊誌『ラジオ深夜便』2023年3月号より)
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