「誰一人取り残さない」を掲げ、地域社会との連携を進める流通経済大学と、「地域共生社会」の実現を目指す松戸市による、学官連携イベント「流経大×松戸市 地域共生シンポジウム〜みんなのために、ひとりのために、見つけよう、いまできること。ここ松戸で〜」が、10月16日(日)に千葉県の流通経済大学・新松戸キャンパスで開催された。地域社会との連携、共生について考えるきっかけが多く見られた今回のイベント内容を、早速紹介しよう!


今イベントは、障がい者支援施設「生活工房」所属アーティストの作品を展示した「であうアート展2022」をはじめとする『ブース出展』、ボッチャやバンブーダンスなどの『体験ワークショップ』、そしてシンポジウムや、チアリーディング、ボッチャ、ダンスのスペシャルステージが行われた『ステージイベント』の3つに大きく分けられる。

会場に入って、まず目を引くのは、パラスポーツの中でも「誰でもできる」ことが魅力の競技、ボッチャの体験コーナー。

担当する学生スタッフ、NECボッチャ部が丁寧にルール説明を行い、小さな子どもと年配の方が協力しながらボッチャを体験する姿が見られた。年齢や性別、障がいの有無にかかわらず、その場で偶然出会った人たちがコミュニケーションをとりながら楽しくプレーできるのがボッチャの大きな魅力だ。

続いて登場するのは、東南アジアの伝統舞踊「バンブーダンス」の体験コーナー。長い竹の間を、リズムに合わせてステップしながら踊るのは、簡単そうに見えて難しい。ベトナムや中国からの留学生たちが竹棒で3拍子の軽快なリズムを刻むと、子どもが次々と挑戦。その様子を、来場者がやさしく見守る様子が印象的であった。

その奥には、松戸市のキャラクターの「ぬりえ」や「であうアート」のクイズ、「多世代丸ごと居場所づくり〜まつどDEつながるステーション」の展示コーナーも。多様なコーナーや展示がキャンパス内の同じ空間で共有され、まさに“地域共生”が体験できる内容。

また、多くの人でにぎわいを見せていたのは、松戸市中学校特別支援学級による「作業学習展示物販売」コーナーだ。

生徒たちの手でつくられた、彩り豊かな作品が販売されていた。そこには、「わが子の作品が売れた」と聞いて喜ぶ親御さんの姿も……。ひとつの作品を通して、人の心と心がつながる場面がそこにはあった。

(2階の)特設ギャラリーで開かれた「であうアート展2022」では、絵画をはじめ、ニードルワークや粘土を使ったアートなどが展示。同大学が今年7月に開催した「海の日アートフェス〜みんなでつながる・あなたとつながる〜」に続き、障がい者アーティストによる繊細かつ豪快なタッチの作品が並んだ。その独創的な発想に、来場者も圧倒されていたようだ。

さらに使われなくなったおもちゃをアートに再生した「特別展示 トーイ&アート」など、多くの作品からあふれ出るエネルギーが見る人を魅了していた。

今回のメインイベントであるステージショーは、4つのプログラム。
・一般社団法人日本知的障害者チアリーディング協会、流経大チアリーディング部GLITTERSによる「チアステージ」
・NECボッチャ部がボッチャの魅力を紹介する「ボッチャステージ」
・シンポジウム「地域共生のまちづくりin大学のあるまち松戸市」
・流経大ダンス部による「ダンスステージ」

オープニングを飾ったのが、知的障がい者チアリーディングと、流経大チア部GLITTERSのコラボステージだ。

ふたつのチームがひとつになり、にこやかに見つめ合いながらパフォーマンスする姿に、一気に会場全体が笑顔に包まれた。のびのびとした子どもたちの演技に元気と勇気をもらえた、そんなすてきなステージショーであった。

続いては、NECボッチャ部によるパラリンピックの正式種目「ボッチャ」のパフォーマンス。ボッチャは誰もが参加できる、まさに「共生」を象徴するスポーツ。ステージで披露された実践プレーは、ボッチャの魅力を存分に伝える内容。スポーツには人と人がつなげる力があると改めて実感させられた。先ほど紹介した体験コーナーには、のべ200人を超える方々が参加されたという。

そして、5人の登壇者が熱いディスカッションを展開したシンポジウム「地域共生のまちづくりin大学のあるまち松戸市」。

司会:膳場貴子さん(ニュースキャスター、流通経済大学客員教授)
パネリスト:恩田忠治さん(松戸市町会自治会連合会会長、馬橋地区居場所づくり実行委員会委員長)
石和田二郎さん(松戸市副市長)
稻山敦子さん(一般社団法人日本知的障害者チアリーディング協会代表理事)
龍崎孝さん(流通経済大学副学長)

行政、大学、地域それぞれの活動や目指すものを共有し、意見交換、そして互いに協力できることがまだ多くあることを再確認。共生社会の可能性と広がりを強く感じられるシンポジウムとなった。
来場者は、地域共生について真剣に語り合う登壇者の話をどのように受け止めたのか——。「いま自分にできることは何か」を考えることが、「地域共生」の実現につながると実感した人も多いのではないだろうか。

そして、ステージショーのトリを飾ったのは、流経大ダンス部のパフォーマンス。「海の日アートフェス」での演技から、しなやかで力強い動きとチームの一体感が、さらにパワーアップ。

「ステージ上と観客席の境を無くして踊りたい」というダンス部・西山監督の思いのもと行われた、来場者と一緒に体を動かす「すわりダンス」で、会場がひとつになった。

学生たちが創作したダンスでは、初めて披露したとは思えないほどの堂々たる演技に会場から惜しみない拍手が。今後の飛躍がますます楽しみだ。


地域連携をより身近に感じられることができた「流経大×松戸市 地域共生シンポジウム」。家庭や職場、学校に続く第三の居場所を地域や大学が提供することで、そこに新たなコミュニティーが生まれる。居場所を求めている人がいるからこそ、人が集まり、輪が広まる。今回のイベントはまさにその象徴であったように思う。

一人ひとりにできることは限られている。イベントのタイトルにもあるように、まずは一人のために、そしてみんなのために何ができるかを見つけ、長い時間をかけて“つながり”を増やしていくことが共生社会への第一歩ではないだろうか。

各出演者のインタビュー記事は後日公開予定!

1999年、茨城県生まれ。女子校出身のトランスジェンダー。当事者としての経験をもとに、理解ある社会の実現に向けて当事者から性に悩み戸惑う方、それを支えようとする方への考えを発信する活動に従事する。