インターネットやソーシャル・メディア(SNS)の普及に伴い、私たちの生活は大きく変わりました。興味の趣くままに世界中からリアルタイムで情報を得たり、自分で動画を投稿したりして多くの人の共感を得られるようになりました。便利になったことはもちろんですが、その反面、フェイクニュースに惑わされたり、気軽にSNSで発信したことが、多くの人から反感を買ってしまうことになったり…負の側面も取り沙汰されるようになりました。

今の子どもたちは、生まれたときからさまざまなメディアにふれ、情報の洪水の中で暮らしていると言っても過言ではありません。
そんな子どもたちにとって重要となるのが、「送り手の意図を踏まえ情報を読み解く力」や「影響力を意識して情報を発信できる力」などのメディア・リテラシーです。

今回は、NHKの取り組みのひとつ「つながる!NHKメディア・リテラシー教室」について、紹介します!

全国各地の複数の小学校がオンラインでつながり、進行役のNHKアナウンサーと一緒に楽しみながら、メディア・リテラシーを学ぶ体験型の教室です。この教室は昨年度から本格的に始まり、すでに3000人を超える児童が参加。「画像や映像のねらいを読み解こう!」 をテーマに、写真を使った学校紹介、画像のアップとルーズの特性、画像加工、編集された映像に込められた意図を考えるといった課題に、参加校みんなで取り組んでいきます。

9月15日、今年度3回目となる「メディア・リテラシー教室」が開催されました。
参加したのは、北海道富良野市立山部小学校、栃木県壬生町立羽生田小学校、北海道函館市立北美原小学校、北海道湧別町立富美小学校、東京都世田谷区立用賀小学校の5、6年の児童たち。

用賀小学校の教室では、モニターの画面が切り替わり、「つながる!NHKメディア・リテラシー教室」の文字が見えると、「緊張するね」「楽しみ!」と児童たちの元気な声があふれます。進行役を務めるNHK・石井隆広アナウンサーがモニターに登場すると、「知ってます!」「見たことある!」といった声が飛び交いました。

各校の学校紹介から「メディア・リテラシー教室」がスタート。
「私たちの小学校には、35年続く全校合奏があります」
「周りに巨大な山があり、リスなどの野生動物がたくさんいます」
などなど、一つ一つの紹介に、「えぇー!すごい」と顔をキラキラと輝かせる児童たち。発表の順番が回ってくると、発表者に「頑張って!」とエールを送る場面もありました。

この教室の特色は、遠く離れた全国の小学校とつながり、同世代の児童と一緒に学べること。
用賀小学校の児童に話を聞くと、各校のご当地話も新鮮だったようで、なかなかない経験だから楽しかった!と声を揃えて答えてくれました。またその一方で、他校と交流したことで、同じ物事でも感じ方が人それぞれだということにも気づかされたと言います。

特に活発に意見交換がされていたのは、画像加工を考えるパート。
「証明写真として使うとき、この画像加工はアリですか?ナシですか?」
加工が一切されていない写真と、アプリで顔が加工されている写真を比べて、石井アナが意見を求めました。
多くの児童が「加工はナシ!」と言う中、石井アナからこんな質問が!
「では、顔が暗く映ってしまったから、画像を明るくするのはどうですか?」

このように、教室ではアナウンサーが児童に意見を求める場面が多くあります。児童は自分の考えをカメラの前で発表し、時にはこうして思わぬ角度から深掘りの質問を受けます。
この質問を受けた児童は、うーんと悩んだ末「それは良いと思います!」。でも、「鼻を高くするのはどう?」という質問には「それはダメだと思います!」と答えていました。聞いている児童からは「あ~そうか」「なるほど」といった声もあがり、自分では思いつかなかった考えを受け入れながら、さらに学びを深めていました。
教室終了後に、児童に感想を尋ねてみると、

「いろんな学校の発表を聞いて、一つの学校が一つの意見じゃなくて、いろんな意見を持っていたのがすごいなと思いました。同じ学校でも違う人が発表すると、一つの内容でも違う見方をしていて、人ってやっぱり違う意見を持つんだなって思いました」

「それぞれの学校が自分とは違ういろんな意見を出していて、理由を聞いてみたときに、そういう思いからこの意見になったんだとわかりました。これからいろんな人と接するときに意見が違っても、理由を聞いてみたいし、それでも納得できなかったらちゃんと話してみたいなと思いました」

と、異なる意見があることを理解し、その違いを前向きにとらえていました。
担任の鈴木教諭も

「(児童は今回の教室で)自分なりに考えて、物事にはいろんな見方があるということをすごく実感したと思います。人として考え方を決めつけるのではなく、多面的に受け止めることができる人物になっていってほしいなと思っているので、今日の教室が良い機会になったと思います」

と児童の成長を感じていたようです。
子どもたちはさまざまなメディアにふれ、多くの情報を得て、自分自身が発信できる立場にいます。そんな中で、受け取る情報に疑問を持ち、理由やソースを探ることは、重要なステップになります。児童たちは、この教室を通して、その第一歩を確実に踏み出しています。

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「なんで今の仕事をしようと思ったんですか?」
ある児童にドキッとする質問をされました。焦りながら、NHKに関連するグループで、社会貢献事業に関わりたかったと返答。上手く答えられたかは疑問ですが、「すごい!」と納得してくれたのでほっとしています。
今回の取材で感じたのは、児童が想像以上にメディア・リテラシーを理解して身に付けてくれていたこと。リアルな声を聞けたことで、その理解度を実感できました。また同時に、皆の楽しそうな笑顔を見て、この教室が学びのきっかけとして、児童の記憶に残っていくのだな、という確信も得られました。
教室に参加した児童が、メディア・リテラシーを身に付け、迷いなく社会を歩いていける。これからもそんな教室であり続けられるよう尽力していきたいと思います。

(文/NHKサービスセンター 花田 歩)

つながる!メディア・リテラシー教室 参加校募集中です。
https://www.nhk.or.jp/info/about/ml/school.html
9月30日現在募集中の日程です。定数が埋まり次第、締め切ります。
詳しくはホームページをご確認ください。

【全国版】
3月3日(金)開催
【エリア版】
11月10日(木)東海・北陸エリア(愛知、石川、静岡、福井、富山、三重、岐阜)
11月30日(水)東北エリア(宮城、秋田、山形、岩手、福島、青森)
12月14日(水)北海道エリア
1月27日(金)四国エリア(愛媛、高知、徳島、香川)
※全国の小学校5年生、6年生対象です。学校からのお申し込み制です。
(個人でのお申し込みはできません)
※1回の参加人数は1クラス(40人)前後を想定しています。