連続テレビ小説「ちむどんどん」の主題歌として書き下ろされた、三浦大知さんが歌う『燦燦さんさん』。ドラマの世界を彩る『燦燦』は、実は三浦さんがおばあちゃんへの思い出をつづった楽曲とのこと。タイトルや歌詞に込めた思いについて、三浦さんにお聞きしました。

実は、「半分、青い。」でも主題歌に参加!?

長い歴史がありたくさんの方に愛され続ける“朝ドラ”に、僕も参加させていただけることは本当に光栄です。

実は、連続テレビ小説「半分、青い。」(2018年)の主題歌『アイデア』(歌・星野源)では、振り付けを担当させていただきました。主題歌を担当する前に、振付師として“朝ドラ”に関わるのは特殊かもしれませんが(笑)、『アイデア』はとても思い出深い曲です。


おばあちゃんに送る手紙のように

オファーを受けて、まず3曲試作しました。1曲目は、沖縄の風を感じるようなアップテンポな楽曲。2曲目はミッドなもの。そして3曲目がバラード曲の『燦燦』です。3曲聴いたスタッフが、「『燦燦』はさわやかな沖縄の一面だけでなく、歴史など、沖縄のさまざまな側面を内包している楽曲ですね」とおっしゃって。それで曲は『燦燦』と決まりました。

当初、歌詞の中で何を伝えるべきか、とても悩みました。そこで、まずはドラマのストーリーに沿って歌詞を書いていったんです。

すると、それを読んだスタッフが、「この歌詞はもちろんすてきです。物語を意識して書いてくださりとてもうれしいのですが、三浦さんのパーソナルな部分をもっと出していいと思います」と言われて。この言葉にすごく救われたんです。楽になったといいますか。“朝ドラ”の主題歌であることは意識しながらも、三浦大知の曲として書いていいんだという決意を固めることができました。

今回、「家族」が「ちむどんどん」のひとつのキーワードだと感じました。

そこで、自分にとっての家族ってなんだろうと考えて、ふと思い浮かんだのが、昨年亡くなった父方のおばあちゃんです。

おばあちゃんは常に僕のことを信じてくれる、三浦大知の人生を常に全肯定する人でした。「そのままで大丈夫だからね。感謝の気持ちを忘れずそのまま頑張りなさい。大丈夫だから」っていつも言ってくれて。おばあちゃんが僕に注いでくれた光が、自分にとっての「家族の光」だと思ったんです。そこで、おばあちゃんに送る手紙のような一曲にしたいと考え、歌詞の制作を進めていきました。


「大丈夫、ほら見ていて」に込められた思い

本当におばあちゃんに手紙を書くつもりで歌詞を書いていたのですが、手紙を書くって難しくないですか? いつまでも完成しない感覚があるといいますか。だから夜な夜な手紙を書き、それをいったん引き出しにしまって、次の朝に読み返して修正するということをずっと繰り返していましたね。

その中でいちばん最初に浮かんだフレーズが、サビの最後の「大丈夫、ほら見ていて」。この言葉はおばあちゃんのセリフでもあり、自分がおばあちゃんにそういうふうに言えたらと思う言葉でもあります。自分にとっても大切なフレーズですね。

そういった思いを聴いてくださる皆さんにしっかり届けたくて。歌唱するうえでは、言葉一つ一つの“つぶ”を壊さないように意識しながら、大切に歌っています。


生活感のある言葉をあえて歌詞に

今回は限定的な言葉を歌詞に取り入れています。例えば、今までだったら「机」という言葉を歌詞に取り入れることはほとんどしなかったんです。生活にひもづいている言葉は、歌詞にあまり入れるものじゃないと個人的に思っていまして。

だけど今回、机の前に座って、編み物をしたり、着物を縫ったりするおばあちゃんの姿がすごく浮かんできたんです。そんなおばあちゃんとの風景をそのまま歌詞に入れたくて、生活感のある言葉も歌詞に入れちゃおうと。こんなふうに考えたのは初めてです。いつもなら、いろんな形で解釈できる歌詞が多かったので。個人的な思いがつまった歌詞でも、聴いてくださる皆さんの思いと色濃くリンクすることができる。これは、自分の中でも大きな学びとなりました。


タイトルは、あの名曲がヒントに

実は、最初は「順光」をタイトルにしていました。自分の見ている世界やその先の未来を照らす光が「家族の光」だと感じ、そのなかで「順光」っていいなと思いながらも、もっといい言葉もありそうだなというのがずっとありまして。その中で『燦燦』がふっと浮かんできました。おばあちゃんが、美空ひばりさんの『愛燦燦』が好きだったんですよ。それもあり『燦燦』というタイトルにしました。

ここまで自分の思い出をまっすぐに歌った曲はありません。まさか、自分にとっての挑戦曲が“朝ドラ”の主題歌になるなんて。制作スタッフの皆さんに導いていただいたこと、チャレンジさせていただいたこと、心より感謝しています。

[スペシャルクエスチョン]
「ちむどんどん」で印象に残っている場面は?

食事シーンには毎回いろんなものが詰まっている気がします。みんなで楽しく食べることもあれば、箸が進まないこともある。そのときの人物の思いを、食事を通して描いているのでしょうね。沖縄の食を通して、心の動きを表現するシーンを今後も楽しみにしています。

暢子たち比嘉家がこれからどういう道を進んでいくか、僕自身とても楽しみです。その中で『燦燦』をドラマのさまざまなシーン、そして皆さんの思い出に重ね合わせながら、聴いていただけたらとてもうれしく思います。
三浦大知(みうら・だいち)
1987年8月24日生まれ、沖縄県出身。
Folderのメインボーカルとして1997年にデビュー。2005年3月にシングル「Keep It Goin' On」でソロ・デビュー。ヨーロッパ最大の音楽授与式「2014 MTV EMA」では“ベスト・ジャパン・アクト”に選出されるなど国内外でそのパフォーマンスが高く評価されている。