子育て世代と年配リスナーの交流の場をつくりたい!の画像

きっかけはママから届いた1通のはがき

「ママ☆深夜便」が誕生するきっかけとなったのは、2015年に放送した「ラジオ深夜便」『明日へのことば』でした。それは、私が子どものころから大好きだった絵本『ぐりとぐら』の作家・中川李枝子さんにインタビューをさせていただいた放送回でのこと。

中川さんはかつて保育士をされていた方で、そこでの経験を踏まえ、「子どもはみんな問題児なの。でも、子どもたちはどんなお母さんでも自分のお母さんが大好きなのよ。だから自信を持って!」というお話をされたんです。

その数日後、20代のママから1通のはがきが番組に寄せられました。そこには、「初めての子どもを育てていて、夜中は2時間おきに授乳し、朝まで眠れずいつも孤独を感じています。たまたまつけた『ラジオ深夜便』から、中川さんのインタビューが聞こえてきて。中川さんの言葉がまるで自分への励ましのように感じ、涙があふれました」と書かれていたんです。

「ラジオ深夜便」はシニア向けの番組と言われていますが、若いママも聴いてくれていたんだと驚いて。同時に、私自身が初めての赤ちゃんと過ごした、疲れ果て世の中から取り残されたような“深夜の孤独な時間”を思い出したのです。「深夜のラジオの向こう側には、そんなママたちもいるんだ!」。

このとき、「ママ☆深夜便」の種が私の中で生まれました。その後も「妊娠中で眠れず聴いています」「産院の授乳室で『深夜便』を知りました」というママたちからの声が届き、2018年の特別番組「ママ☆深夜便」第1回放送につながっていったのです。

このとき、いちばん大事にしたいと思ったのは、何か一つの答えを出す子育て相談の番組ではなく、年齢や性別関係なしにみんなが参加できる番組にするということ。長い歴史を持つ「ラジオ深夜便」の時間帯で放送するわけですから、毎日聴いてくださるリスナーの方に興味を持ってもらえる内容を意識して、丁寧に作ることを心がけました。

期待と不安の中で始まった第1回では、生放送中だけで、ゆうに100通を超えるメールが送られてきました。その中には、ママやパパだけではなく、シニアの方からも「今のママは本当に大変なんだね、頑張って」という応援メッセージもたくさん届いたんです。想像以上に多くの反響をいただき、2019年までの2年間で4回の特番を放送。そしてついに去年の4月から、月に1回のレギュラー放送となりました。


ママもパパも幅広い世代へ届けたい

「ママ☆深夜便」は、子育てに励むママやパパたちの思いに寄り添い、世代も性別も超えて、みんなで喜びや苦しみを共有する“子育て応援団”を目指しています。月に1度の放送ですが、この番組によって、少しずつでも世の中が変わっていけばいいなと願っています。

以前、50代の男性からいただいたお便りには、「自分の時代は“男は仕事”が美学で、子どものために早く帰るなんてできず、子育ては妻にまかせっきり。今、若い同僚が『子どもの誕生日なので』と言って堂々と定時で帰る姿を見ると、自分みたく後悔しないよう応援したいと思う」と書かれていて。

そういう考え方が進んでいかないと、男性の育児休暇は浸透しないし、ママたちも楽にならない。夫婦の関係、親子の関係も良くならないと思うんです。「ママ☆深夜便」でママやパパたちのリアルな声を聞いてみんなでシェアする。モヤモヤする気持ち、苦しい気持ちに「わかる、わかる」「応援しているよ」とラジオでつながるあたたかさを発信したいと思います。

その意味でも、番組の中で、子育て世代と年配のリスナーが交流できることもとても大切だと考えています。それにより、大変なときは助け合い、お互いを思い合える社会に向かうきっかけになれたらすてきです。

「ママ☆深夜便」をまだ聴いたことがない方は、子育ては私には関係ないと思わずに、ぜひ一度聴いてみてほしいです。そして、ご自身の経験や感想をぜひお便
りやメールでお寄せください。幅広い世代の方が交流し、楽しめる「ママ☆深夜便」を皆さんと一緒に作っていければうれしく思います。

村上アンカーのちょこっと制作秘話
子育てを経験中の俳優の方たちが絵本を朗読する「真夜中の絵本」。「ママ☆深夜便」の中でも大人気のコーナーです。私自身も多数ある絵本から朗読者にぴったりの絵本を選ぶために、「絵本専門士」の資格を取得。気になる絵本があると、番組で紹介することを想定して、自分で朗読し、その時間を計っています。おすすめの絵本のストックがどんどんたまってきました(笑)。
村上里和
村上里和 (むらかみ・さとわ)

北海道育ち。1男1女の親。子育てをきっかけに、2006年からcoto-be(ことべ)というグループを作り、「おはなしコンサート」の活動を始める。2015年『子どもを夢中にさせる 魔法の朗読法』を共著で出版。2020年「絵本専門士」の資格を取得。

(NHKウイークリーステラ 2021年4月23日号より)