これまでに放送された「素朴なギモン」とその答えを、忘れないように復習しておきましょう。
夏のデザートの定番、アイスクリーム。あなたが好きな味は、チョコレート? 抹茶? それともストロベリー? でも、はずせないのはやっぱり、バニラですよね〜。それって、なんででしょう?


答え:その香りが哺乳類を引き寄せる魔性の香りだったから

詳しく教えてくれたのは、香料会社でにおいについて研究している山本芳邦さん。

そもそも、今のようなアイスクリームが生まれたのは17世紀。フランスの菓子職人が、ホイップクリームを凍らせたものが原形だといわれています。それが18世紀、冷凍技術の発展によってアメリカへと伝わり、1850年代には大量生産によって大衆にも広まっていきました。
そのころのアイスクリームは、牛乳、卵、砂糖などを混ぜ合わせて凍らせたもの。しかし、当時の牛乳や卵は、今と比べると獣くさいという問題が......。

そこで、そのにおいを抑えるために使われるようになったのが、甘い香りを持つ「バニラビーンズ」でした。
この甘い香りのもとになっている成分「バニリン」が、さらなるポイント。バニリンは、アイスクリームの材料である牛乳にも含まれているため、アイスとの組み合わせの相性は抜群。

もともとケーキなどの香りづけに使われていたバニラビーンズを、当時の牛乳や卵の獣くささを抑えるために、アイスクリームにも使用。バニラビーンズに含まれる「バニリン」は、牛乳にも含まれる成分だったため、例えば、同じ大豆から作られた豆腐としょうゆとが合うように、相性ぴったりの“奇跡の組み合わせ”に!

そして、実は、私たち人間や哺乳動物の「母乳」にも含まれている成分であることから、乳を飲んで育つ哺乳類にとっては、たまらない香りでもあるのです。

つまり、におい消しのためにたまたま使われたバニラビーンズが、人間が本能的に引き寄せられる香りを持っていたことから、「アイスといえばバニラ」が定番になっていったと考えられるというわけです。

バニラは、1年にたった1日しか花を咲かせないため、とても受粉しづらく繁殖力の弱い植物。 そこで有効なのが、哺乳類が好きな香り「バニリン」。これによって引き寄せられた哺乳動物が種(バニラビーンズ)を食べ、遠くでその種がまじったフンをすることで、バニラの生育範囲が広がったと考えられている。

(NHKウイークリーステラ 2021年8月27日号より)