これまでに放送された「素朴なギモン」とその答えを、忘れないように復習しておきましょう。
人気のペット、ハムスター。小さな手足で回し車をカラカラいわせながら走る姿は、とってもかわいらしいですよね。でも、彼らがあれほど一生懸命走り続けるのには理由があると、あなたは知っていましたか?


答え:1日10メートル以上走らないとおかしくなってしまうから

詳しく教えてくれたのは、明治大学で動物行動学を研究している、中村孝博准教授。
私たちが一般に「ハムスター」と呼んでいるのは、野生では絶滅危惧種の「ゴールデンハムスター」のこと。そして、このハムスターたちが一生懸命走るのは、基本的に夜だけだと言います。

ゴールデンハムスター。現在、ペットとして飼われているものは、すべて1930年にシリアで発見された1匹のメスの子孫だと言われている。

というのも、野生のハムスターは夜行性。敵の多い昼は、深い穴の中で休息をとって過ごします。
そして、体内時計で夜になったとわかると外に出ていき、敵に襲われないよう迅速に、自身の縄張りをエサを求めて走り回ります。その走行距離は、一晩で10〜20キロメートル。人間に換算すると、一晩でフルマラソンを4回分走るのに相当するほどだとか。

つまり、ペットのハムスターであっても、夜じゅうずっと走り続ける(下グラフ参照)のは、種としての本能であり、走らないでいると体内時計のリズムが崩れ、肥満や病気になりやすくなるからと考えられるのです。

ハムスターを、回し車とともにケージに入れ、12時間ごとに昼と夜の環境を再現して観察すると、昼間はほとんど寝ているが、夜は一晩じゅう走り続けるという結果に。回し車の回転数を昼夜で比較したグラフでも、一目瞭然。

従って、あの回し車は、ハムスターにとっては単なるおもちゃではなく、健康を維持するために必要な器具だといえるわけです。

(NHKウイークリーステラ 2021年5月7日号より)