「人と人とのつながり」は、自分の世界や可能性を広げてくれる。
しかし一方で、その「つながり」によって苦しめられることもある。

4月17日に開催された、NHKハートネットTV JAPAN PRIZE カンファレンス「地方は暮らしにくい? LGBTQ“本音”座談会」 をオンライン視聴したときの率直な感想だ。
このオンラインイベントを通して、「人のつながり」がもつ二面性について考えさせられた。

座談会では、地方ならではの苦労や疎外感について、当事者の家族の話などを交え、オンライン参加者とともに意見交換が行われた。地方に住む当事者にとって何が必要なのか、また何ができるのか、皆でいっしょに考える有意義な機会となった。

なかでも、北陸地方のコミュニティーやネットワークの狭さが、当事者が生活するうえで息苦しく感じる要因になっているという話が印象深い。

具体的には、住民同士のつながりが強いため情報が筒抜けになりやすいこと、ご近所つきあいによる気遣いや苦労、都心に比べて情報量が少ないためLGBTQへの理解が進んでいないことなどが理由としてあげられた。

私が生まれ育った茨城県の郊外においても、ご近所つきあいは日常的なものであった。あの家の子どもがどこの高校に行ったとか、あそこの家庭は母子家庭だとか、直接聞いたこともない情報があたりまえのように飛び交っていた。

こうした地域社会のつながりは防災や防犯に役立つ一方、セクシュアリティーへの理解については課題が残されていると思う。かくいう私自身も、この「つながり」に悩まされた過去がある。

LGBTQの「T」であるトランスジェンダーとして生きる私がこわいと感じたのは、私がトランスジェンダーであるという事実が、知らぬ間に母の耳に入っていたことだ。
かつて、私のセクシュアリティーについて、遠回しな言い方で母から尋ねられたことがあった。

その時感じたのは、恥ずかしいことではないのに恥ずかしいという気持ち。
やはりセクシュアリティーを隠して生きていく方が良いのではないかという気持ち。
地元で自分らしく生きていきたいと思っていても、その「つながり」が重荷となっていた。

きわめて狭いコミュニティーだからこそ広まってしまう情報。そして、基本的に得られる情報量が少ないゆえに、理解が得られないという苦悩の日々。

座談会に参加した方々は、私と同じような悩みを抱える人たちの環境を変えるべく活動している。その形は多様だが、共通しているのは「自分らしく生きてほしい」という願いだ。
その思いを受け、私たちがいまできることは何か、これからできることは何か考えたい。

地方や狭いコミュニティーのなかで暮らすLGBTQの人たちにとって、ひとつの救いの場となるのが今回のようなイベントだと思う。イベントと聞けば、いきなり参加するのは勇気がいるという人も多いが、いまはオンラインのものも増え、気軽に参加できる。

地方だから苦しいと感じる部分も、何かきっかけが得られれば周りを変えることができる。短所が長所に変わったときほど強いものはない。

LGBTQの大きなイベントのひとつに、「東京レインボープライド」がある。
今回のオンラインイベントの後半でも紹介されていた。そこには、きっと自分と似た境遇の人や考えを持った人がいる。もちろん、そうでない人も含め、さまざまな出会いが待っている。

多様性を表現するイベントのひとつとして、気軽に参加してみることをおすすめしたい。コロナ禍により2年越しの開催となることしは、私も参加を予定している。(「東京レインボープライド2022」の盛り上がりは、別の記事で紹介)

なお、今回のオンラインイベントの模様は、4月27日の「ハートネットTV」のなかで紹介される。地方のセクシュアリティに関する実情や、当事者のリアルな悩みが紹介されているので、ぜひ注目してほしい。


ハートネットTV
「地方は暮らしにくい? 北陸発LGBTQ“本音”座談会」
4月27日(水)Eテレ 午後8:00から放送