「すごい絵だなぁ!」
生活工房で、障害者アーティストたちが描いた作品を初めて見たときの感想です。いい悪いという評価の域を超えて、その解き放つパワーに圧倒されました。
障害者によるアート作品は、彼らの第二の言語ともいえます。彼らの放つエネルギーはどこから来るのだろうか。一つ一つの作品と向き合いながら、このすごさをみんなに伝えていきたい。この問いかけをし続けていくことが、本プロジェクトを成功に導く手がかりとなりました。
「であうアート展」は、SDGsの理念である多様性の理解促進に寄与するべく、流通経済大学が発起人となって、アート作品を活用した社会貢献プロジェクトとして発足しました。大学生たちが主導となり、障害者アーティストとさまざまな交流を通じて、学内で実施する展覧会に向けて準備をする教育プログラムを計画しておりました。
しかし新型コロナウイルスの影響により、その交流もままならず、展覧会の実施も危ぶまれました。大学側と協議を重ね、展覧会は時期をずらして実施。展覧会を学生、地域の方々との「出会い」のスタート地点とすることで、関係者の協力、自治体の後援等もいただき、多くの方々にご来場いただきました。
実際に私が体験したように、作品の力強い色使い、輪郭線の一本一本までが来場者に語りかけてきます。そして得も言われぬ感動で心が揺さぶられます。来場者からの数々の声から、そのことが実証されました。地域の広報誌を見て会場を訪れた、年配のご夫妻が感動のあまり涙ぐみながら、熱心に鑑賞されていた様子は印象深いものでした。
このプロジェクトは今後各地の障害者施設の協力をいただきながら、日本全国を巡回することが計画されています。さまざまな可能性を秘めた彼らの作品で、日本全国に元気を与えていきたいと思います。
取材・文:宇佐美英志(NHKサービスセンター)
(NHKウイークリーステラ 2021年11月26日号より)