特集ドラマ「シリーズ横溝正史短編集IV~金田一耕助 悔やむ~」の合同取材会が行われ、主演の池松壮亮さん、共演の月城かなとさん、制作統括の松永真一さん、プロデューサーの淵邉恵美さんが登壇した。


同ドラマは、名探偵・金田一耕助が活躍する横溝正史の短編を“ほぼ原作に忠実に映像化”するシリーズの第4弾。2016年にスタートし、今回の放送では「悪魔の降誕祭」「鏡の中の女」「湖泥」の3作が映像化される。池松さんは初回から金田一耕助を演じ、月城さんは昨年7月に宝塚歌劇団を退団後、ドラマ初出演となる。月城さんは、「悪魔の降誕祭」で人気ジャズシンガーを演じた。

会見冒頭、制作統括の松永真一さんが本シリーズの紹介を行った。

松永 もともとは、普通のNHKのドラマと違うものをということで、原作のセリフやト書きをほとんど忠実に再現してみました。ですから、みなさんはアドリブが全然できないので大変なのですが、朗読劇風にして、映像をちょっと個性的にやってきました。そのため、普段はテレビドラマをやってらっしゃらない監督、映画やミュージックビデオを作っているクリエイターの方にやっていただいています。
今回が第4シーズンで、非常に短期間でスケジュールも大変な中、普段ドラマに出ない方にも出ていただいていて、そちらも見どころになっています。

続いてプロデューサーの淵邉恵美さんも挨拶を行った。

淵邉 企画から考えると足掛け10年池松さんとやってきて、今回、シーズン4が作れるという話を松永から聞いた時は本当にうれしくて、2秒後くらいに池松さんに連絡しました。スタッフもみんな待ちに待っていて、視聴者の皆さんからも熱い思いなどが届いていたので、また制作できたことをうれしく思っています。池松さんは、シーズン1の頃は25歳ぐらいだったんですね。本当にフレッシュな金田一耕助だったんですけれど、シーズン4で、原作の金田一の年齢とほぼ同じになりました。3作とも監督がすごく個性的で、敵もユニークなのでそちらもぜひお楽しみいただきたいです。

主演の池松壮亮さんも、初めて金田一耕助を演じてから約10年かけてようやく役が馴染なじんできたと語った。

池松 シーズン1の時は26歳だったんですけど、こんなに若くて金田一をやれるんだろうかってずっと不安でした。時間がかかりすぎですけど、ようやく馴染んできたような気がしています。
コアなファンの方が多い横溝作品の中から、映像化されていない原作をなるべく選んでいますが、どれを選んでもやっぱり面白いものばかりです。そんな中、今の時代に見合った3本を目指してやってきました。今回も、非常に現代性やエンタメ性など、いろんなものが詰まった3本になっています。
3人の監督たちとも9年一緒にやってきました。プロデューサーの淵邉さんは、「今回、最高傑作が出た」って僕に言ってくれたんですけど、ある到達点に達することができたんじゃないかなと思っています。毎回そうですけど、こういう機会じゃないと集まらない方にたくさんご出演いただいています。月城さんはじめ、本当に素晴すばらしい表現をする方が集まって、異種混合戦というか、面白い化学反応が毎回起こっています。今回もすごい方々が混じり合って、楽しい金田一をお届けできるんじゃないかと思っています。

「悪魔の降誕祭」で人気ジャズシンガーを演じた月城さんは、長く続く本シリーズ出演への喜びを語った。

月城 長く愛されてきたシリーズに自分が出演できたことを本当にうれしく思っております。私にとってはこの作品が初めての出演になり、いま振り返っててみると、ものすごく緊張していたんだな、と思いました(笑)。
現場では池松さんは口数が多い方ではないのですが、頼もしく、優しくリードしてくださいまして、それに励まされながら、チーム感を持ってこの作品を作っていけたことにありがたさを感じました。そして、これから始まる自分の俳優としての第一歩として、この作品に出合えたことを本当に光栄に思っています。これを励みにこれからも頑張りたいと思えるような経験でした。

今回の3作品の印象について聞かれた池松さんは、「想定外」というキーワードを挙げた。

池松 金田一にはスマートでクレバーというイメージがありますけど、そんな中でも、その金田一にも想定が及ばないような事件ばかりで、「想定外」が1つのテーマだったかなと思います。
また今回、「悔やむ」というサブタイトルがついていますが、現実がフィクションを超えていくようなこの現代に、今回のような物語がマッチングするんじゃないかと感じました。

2016年のシリーズ開始から、シーズン4で12作品となったが、横溝正史がのこした、金田一耕助が登場する小説は約90作あるといわれている。池松さんは、金田一耕助を演じる面白さややりがいについてこう語った。

池松 過去にたくさん映像化されてきていますが、まだまだ映像化できていない難しい作品もたくさんあります。本シリーズでは、短編ならではのアプローチで、これまでの金田一を語りつつも、新しいものを語ることに、非常に大きなやりがいを感じています。
シーズンを始めた頃は、「(本シリーズの)金田一を観た」という方に会ったことがなかったんですけど(笑)、ようやくいろんな人が作品を好きだとか言ってくださるようになってきて、強いファンの方々に支えられているなと思っています。

一方の月城さんは、本シリーズに出演が発表された時に、多くの人から「あのシリーズ、大好きです!」と声をかけられたという。

月城 現場では、池松さんが率先して引っ張っていってくださるんですよね。それが演技だけじゃなくて、小道具を動かすとか、人が倒れるシーンで、マットを自ら支えてくださっていたりと……。チームとしてすごく信頼し合って作られているからこそ、いろんな人に愛されてきたんだなっていうのを感じまして、それをそばで見させていただけたことがいい経験になったなと思いました。

そんな月城さんに対して、冗談交じりに「宝塚退団後、初のドラマがこれで大丈夫なの?」と返す池松さん。

池松 これから素晴らしいキャリアを築かれるのに、この作品が1本目で本当にいいのかなと思いましたが、月城さんの瞬間的な集中力や表現力にみんなが感動していましたし、とても刺激になりました。

約10年にわたり、金田一耕助という一人のキャラクターを演じ続けていることについて、俳優として貴重な経験であり、特別だと語る池松さん。当初はここまで長く続くシリーズになるとは思っていなかったという。

池松 金田一は自分にとって特別なもの、縁が深いものといった感覚です。金田一といえば、市川崑監督の映画シリーズがとても有名で、自分も印象に残っているんですけど、市川さんは金田一のことを、「戦後に現れた天使だ」って表現をしたんですね。
その上で、日本では誰もが名前くらいは知っている金田一耕助という人物を、そういうキャラクターの中から人間に戻すことを目指してやってきたつもりです。また、事件に対しては、基本的に人の善悪をジャッジしない、どれだけ凶悪な犯人であったとしても、その人の痛みに寄り添いながら、いつもフラットでいることも意識してきました。
これまで応援してくださった方々にはぜひ新しいシリーズを楽しんでいただきたいですし、このシリーズから入る方々も、これは短編集なので、1本30分でどこからでも入れるようになっていますので、ぜひ楽しんでいただけたらなと思います。

シーズン4の放送に合わせて、過去の第2、3シーズンもBSP4Kで再放送が決定。池松さん演じる金田一の変遷をたどることができるので、こちらもぜひ合わせて楽しんでほしい。


【あらすじ】
名探偵・金田一耕助が活躍する横溝正史の傑作を、池松壮亮主演で「ほぼ原作に忠実に映像化」する「シリーズ横溝正史短編集」。シリーズ第4弾は「悪魔の降誕祭」「鏡の中の女」「湖泥」の3本立て。

第1回「悪魔の降誕祭」 演出:佐藤佐吉
金田一の事務所で死体が発見されるというショッキングな幕開け。被害者は人気ジャズシンガー関口たまきのマネージャーで、壁のカレンダーが数日分剥ぎ取られ12月25日を示していた。クリスマスパーティーでの第二の殺人を予告する悪魔のような犯人は一体誰なのか? 複雑に絡み合う人間模様から浮かび上がってきたのは……
第2回「鏡の中の女」 演出:宇野丈良
金田一と銀座のカフェにいた読唇術の達人・増本女史が、鏡に映る愛人関係とおぼしき男女の密談を読み取る。 殺人の相談としか思えない内容。やがてその通りに殺人事件が起きるが、被害者はカフェで殺人の相談をしていた若い女だった……。一体どういうことなのか。金田一がたどり着いた衝撃の真相とは?
第3回「湖泥」 演出:渋江修平
旧家の北神家と西神家が長年いがみあう僻村へきそん。北神家の長男の婚約が決まった矢先、婚約相手の娘が失踪し、村長の妻も姿を消す。やがて村外れにある引き揚げ者の小屋で娘の絞殺体が発見されるが、小屋の主は「湖に浮いていたのを拾っただけ」。――西神家の長男らに疑いの目が向けられるなか、金田一は思い切った賭けに出る。

特集ドラマ「シリーズ横溝正史短編集Ⅳ~金田一耕助 悔やむ~」

4月24日(木)NHK BS 午後8:30~8:59「悪魔の降誕祭」
5月8日(木)NHK BS 午後8:30~8:59「鏡の中の女」
5月22日(木)NHK BS 午後8:30~8:59「湖泥」

<BSP4Kで
再放送>
「シリーズ横溝正史短編集Ⅱ」 4月30日(水) BSP4K 午後10:30~
「シリーズ横溝正史短編集Ⅲ」 5月1日(木) BSP4K 午後11:00~
「シリーズ横溝正史短編集Ⅳ」 5月2日(金) BSP4K 午後10:00~

原作:横溝正史
出演:池松壮亮、中嶋朋子、夏帆、月城かなと、宇野祥平、くっきー!、板谷由夏、YOU、井之脇海ほか
演出:佐藤佐吉、宇野丈良、渋江修平
制作統括:松永真一、宮川麻里奈
プロデューサー:淵邉恵美
制作・著作:NHK・テレコムスタッフ

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