6月21日(土)スタートの土曜ドラマ「ひとりでしにたい」(全6回)は、「笑って読める終活ギャグマンガ」と称されたカレー沢薫による同名漫画が原作。30代後半独身の主人公・鳴海が、よりよく死ぬためによりよく生きる方法を懸命に模索する、前代未聞の社会派「終活」コメディーだ。

そこで、原作漫画を読んで「ぜひ演じたい!」と思ったという主演の綾瀬はるかにインタビュー。「終活」のため奮闘する鳴海という役柄に、どんな思いで向き合ったのかなどを聞いた。


コミカルに「終活」を描くことで見えてきたこと

――本作は、「終活」について考え始めた30代後半独身の主人公・鳴海の奮闘ぶりをコミカルに描くドラマ。鳴海に、どんな思いを込めながら演じられましたか?

綾瀬 このドラマを通じて改めて思ったことは、大事なのは「今」だということ。なんだかんだ悩んでいても、時はどんどん過ぎていきますよね。そう考えると、過去にとらわれるのって本当に意味がないこと。過去のどんな出来事も「まあいっか」と切りかえて、今にフォーカスを当てることが大事だなあと。

「いつか自分も死ぬ」ということも、怖がらずに、自然の摂理だと受け入れることができれば、「なるようになる!」という感覚でポジティブに今を過ごすことができるんじゃないかなと思うんです。そんなことを頭に置きながら、鳴海を演じました。

――第1回で、特に印象に残っているシーンはどこですか。

綾瀬 ドラマの序盤、伯母さんの孤独死をきっかけに、自分の将来を想像した鳴海が、「ひとりで死にたくない」とずっとつぶやく場面なのですが、個人的にはそこが一番印象深いですね。実は、私なりに「面白い表情」にすごくこだわった場面なんです。「こだわったの、そこなの⁉」と思われちゃうかもしれないけど(笑)。

――確かに、「ひとりで死にたくない」とつぶやく場面の鳴海の表情は、必死さの中にユーモアが感じられて、とても印象的でした。

綾瀬 原作漫画のどこが面白いって、主人公・鳴海の表情なんです。「終活」がテーマの漫画ということで内容は重いはずなのに、読んでいると、そこまで重く感じないんですよね。むしろ、「終活」を前向きに捉えられるようになるというか。それって、鳴海の七変化する顔のおかげもあると思うんです。「すごく真剣な内容なのに、鳴海ちゃん、こんな顔しちゃうの⁉」と思わず笑ってしまうのですが、そのおかげで、心がふっと軽くなったように感じるんです。

ドラマでは、原作の描写をそのまま生かすことはできないかもしれないけれど、随所にそのニュアンスをこめることができたらいいなと思ったんです。そのために、原作の気になるページにふせんを貼って、お芝居の参考にしています。スタッフの皆さんにも、「鳴海ちゃんのこの表情ができたらいいなあと思うのですが……」と、原作を見せながらあれこれ相談もさせてもらっています。


今を楽しむことが、最高の「終活」

――本作は、「終活」がテーマということで、「終活」のために参考になる内容もたくさん紹介されますね。綾瀬さんがいちばん勉強になったと思われることは、どんなことですか?

綾瀬 鳴海は、自分より前に、親の終活の準備を進めるべきだと気づく場面があるんです。そこは「なるほど」と思いましたね。視聴者の方々にとって、このドラマが親御さんと今後のことについて話し合うきっかけになればいいなと思います。

とはいえ私の場合は、「迷惑かけたくないけん、老後は老人ホームに入るからね」と親の方から切り出してくれたんです。娘として考えなければいけないことだと頭では分かるんですけど、そう言われたときは正直寂しかったですね。「そんなこと言わないでよ〜」とあやふやに答えるのがやっとでした。

でも、改めて考えると、今の私にできることは、親にできるだけいいホームに入ってもらうために、お金をめること! やっぱり、そういうことも大事なんじゃないかと思います。実際私の周りには、「将来いい老人ホームに入るために、できるだけお金を貯めよう」と頑張っている50〜60代の方が結構多いんですよ。そんな考え方も堅実ですよね。

――取材会では「最期は、はははと笑って迎えるのが理想」とおっしゃっていました。(※取材会の模様はこちら)そのためには、今後の人生をどんなふうに生きていこうと思われますか?

綾瀬 自分だけでなく、周りの人も大切にすること、ちゃんと本音で話せるような関係性を築くこと、心健やかに生きていくことが大切なんじゃないかと思います。将来に不安を感じつつも、心から推し活を楽しんでいる鳴海を演じて、「私も鳴海みたいにもっともっと人生を楽しもう」と思いました。

――改めて、視聴者の皆さんにメッセージをお願いします。

綾瀬 「ひとりでしにたい」というタイトルだけ聞くと、重い内容の作品かなと思われると思います。実際、内容も現実的なものではありますが、「死」や「終活」を意識することは、そのまま、今をどう楽しむかにつながるんだと私自身気づきました。

ありのままの自分を、自分自身が肯定して、この先の人生をもっと大事にしようというメッセージが込められたドラマです。将来に不安を感じている方も、見ていただければきっと心が軽くなるような作品になっていると思います。ぜひドラマを見ながら、笑って元気になっていただきたいです!


土曜ドラマ「ひとりでしにたい」(全6回)

6月21日(土)放送スタート

毎週土曜 総合 午後10:00〜10:45
毎週水曜 総合 午前0:35〜1:20 ※火曜深夜(再放送)

【あらすじ】
第1話
山口鳴海(綾瀬はるか)は仕事に、趣味の推し活にと、独身生活をおうしていた。しかし、憧れていたキャリアウーマンの伯母・光子(山口紗弥加)が思いもよらない孤独死をしたことをきっかけに、焦って婚活を始めるが年齢の壁によってあえなく撃沈。さらに年下の同僚・那須田優弥(佐野勇斗)から「結婚すれば安心って昭和の発想ですよね?」とバッサリ切り捨てられる。そこで鳴海は「婚活」から180度方針転換して「終活」について考え始めるが……。

第2話
「終活」について考え始めた鳴海(綾瀬はるか)は、「自分より、親の老後が先にやってくる」事に気がつく。もし親に介護が必要になったら自分が世話を? 仕事をしながら介護できるのか? 亡くなった場合の葬儀代は? それら全てを自分が背負わなければならなくなったとしたら……自分の終活どころではない! そこで鳴海は、まず父・和夫(國村隼)と母・雅子(松坂慶子)に「終活」を始めてもらおうと、ある作戦を思いつく。そのために同僚・那須田(佐野勇斗)を連れて実家を訪れるが……。

原作:カレー沢薫『ひとりでしにたい』
脚本:大森美香
音楽:パスカルズ
主題歌:椎名林檎「芒に月」
主演:綾瀬はるか、佐野勇斗、山口紗弥加、小関裕太、恒松祐里、満島真之介/麿赤兒、岸本鮎佳、藤間爽子、小南満佑子、コウメ太夫/國村隼、松坂慶子
制作統括:高城朝子(テレビマンユニオン)、尾崎裕和(NHK)
演出:石井永二(テレビマンユニオン)、小林直希(テレビマンユニオン)、熊坂出

「ひとりでしにたい」NHK公式サイトはこちら ※ステラnetを離れます