ドラマの出演者やスタッフが「この回のあの人、あのシーン」について語ったコメントを不定期で配信するコーナー。今回は、辛島健太郎役の高橋文哉さんから、第57回の振り返りをご紹介!


――小倉連隊で再会した直後は、健太郎が嵩(北村匠海)に厳しい視線を向けていましたが、戦時下での健太郎の変化をどのように受け止めていますか?

再会のシーンは、健太郎としては最初ふざけているつもりもあったんです。でも、それが一瞬真剣に見えたほうがいいだろうなとも思いました。セリフでも表現されていましたが、炊事班の健太郎もつらい任務にあたってきたので……。兵隊がどんな目にあうのか本で調べました。例えば上官に手を上げられることがどれくらいあって、目上の人と接するときにどれくらい構えないといけないのか。それを考えると、戦地の健太郎は常に緊張感を持っていた気がします。

戦地に行っても健太郎は変わらないでいてほしいと思う人が大多数だと思ったので、そこを裏切るつもりはまったくなかったです。でも、兵隊としては変わらないわけにはいかない。久々に親友と再会したからといって急にテンションが上がるほど、人間は簡単なものじゃないと思うんです。そのうえで、柳井くんにとっての健太郎がどうあるべきなのかを考えました。

――再会当時とくらべると、嵩と健太郎の関係性が少しずつ出征前の感じに近くなってきているような印象を受けます。

最初のころ、健太郎に「絶対に戦地から生きて帰るんだ」というような強い思いはなく、「いま自分にできることをやる」という思いで過ごしてきたと思います。そんな中で柳井くんに出会って、だんだん「一緒に生きて帰りたい」と思い始める。もともと健太郎は人として明るいですし、柳井くんに会えたことに大きな喜びを感じて、少しずつ時間をかけて馴染なじんでいく、あのころに戻っていく。そう段階を踏んだ感覚がありました。

――そして戦地でのせん活動として、一緒に紙芝居『双子の島』を作ることになりました。

宣撫班に入ったときから、健太郎は図案科にいたころのような感じに戻って絵を描いていました。ただ、審査の場面では、中隊長をはじめ、上官が並んでいる中で読まなくてはなりません。審査が現実のもののように感じられて、手が震え、紙の音を立てても怒られるのでは、という緊張感のなかで演じたことを覚えています。

――村人たちの前で披露したときは、どんな気持ちになりましたか?

実際に現地の人に読み聞かせるときは、すごく楽しかったです。でも、物語の意図が伝わらないという……。勝手に違う翻訳をされて大笑いされて、「なんじゃそりゃ」というギャップは、健太郎がいちばん感じたのかな。嫌な気持ちにもなっただろうし。

それでも、柳井くんと一緒に紙芝居を読めることは楽しかったし、「争いをせずに」という柳井くんの考えを一緒に提示できるのは、すごく大きな喜びではあったと思います。

違う翻訳をされても「一緒に笑ってもらえたほうがいい」という柳井くんの言葉を聞いて、それは健太郎にとってもすごくポジティブな捉え方だったので、「なるほど、そういう考えもできるのか」と思えて、2人の人間性の違いも感じました。