この一週間も、怒涛の展開を見せたあんぱん。
タイトル「なんのために生まれて」は、ご存じ「アンパンマンのマーチ」の中に登場する一節です。
のぶ(今田美桜)や嵩(北村匠海)、千尋(中沢元紀)たちの交錯する“想い”が垣間見えました。そして嵩の母親・登美子(松嶋菜々子)が離縁して柳井家にしれっと戻ってきましたね。その言動が嵩と千尋を翻弄しました。現代の価値観から見たら、ほとんど“毒親”的な……2人の気持ちを思うと本当に心がイタイです。
ステキなセリフの数々から一週間を振り返ります。
もちろんネタバレですので、ご承知おきください。
「何のために生まれて、何をしながら生きるがか」

物語は昭和10年。朝田パンの商いは細々と続いている。パン窯はレンガ造りの丸い、立派なものになっていた。
屋村草吉(ヤムおんちゃん・阿部サダヲ)の容貌はすっかりジャムおじさん(笑)になっている。祖父・釜次(吉田鋼太郎)とは相変わらず、息の合った(?)憎まれ口の応酬。
のぶは高等女学校の5年生で最終学年。同級生たちの結婚が次々に決まっていくが、まだ自分の「夢」が見つからない。
のぶの妹・蘭子(河合優実)は地元の郵便局に勤め、末っ子のメイコ(原菜乃華)は高等小学校の1年生だ。

一方、嵩は中学5年生で、マンガを描くのが好き。
柳井家の夕食。将来何になりたいか、まだわからないと答える嵩に、
伯父の寛(竹野内豊)が言う。
「人生には替えがきかんがや。今からしっかり考えちょけ。
何のために生まれて、何をしながら生きるがか、
何がおまんらの幸せで、何をして喜ぶがか。
これや! というもんが見つかるまで何べんでも何べんでも必死で考え」
「ドイツ語でナイツ、フランス語でアンビ、英語でジェラシー。世界中の人々が経験する、厄介な病気や」

朝田家のあんぱんは一個4銭になっている。(先週、開店した時は3銭だった)
思うようにパンが売れないと聞いた、のぶの幼なじみ、海軍中尉の貴島勝夫(市川知宏)は、今度の祭りの催しとして“パン食い競争”をやったら? と提案。さらに町長に「ここのパンを使うように」口添えしてくれるという。のぶたちは大喜び。
その様子を見ていた嵩は複雑な顔。本当に胸がイタイ、らしい。

さっそく伯父、寛の診察を受けると……
「この胸の痛みは治療できん。ドイツ語でナイツ、フランス語でアンビ、英語でジェラシー。世界中の人々が経験する、厄介な病気や」
恋の病をこんな風に表現してくれる寛おじさま、ステキ✨
「おなごはつまらん」からの……「元気100倍だね」

朝10時から始まるパン食い競争に200個のあんぱんを届けるため、朝田家は大忙し。優勝賞品はラジオ。当時の憧れの高級品だった。
足に自信があるのぶは出たかったが、おなごは出てはいけない、と言われる。
いつものシーソーでマンガを読む嵩を見つけ、のぶは言う。
「嵩はいいな。おなごはつまらん。パン食い競争に出られんがやって……死んだお父ちゃん、いいよった。おなごも遠慮せんと大志を抱けや」

パン食い競争が始まった。
突然、嵩が「のぶちゃん、ぼくは棄権する」と言いだす。
のぶ「嵩、たっすいがぁ(高知の言葉で弱々しい、元気がない、の意味)はいかん」
嵩「違う違う。めちゃくちゃお腹がイタイ。だから、これ、預かって」と出場の「襷」をのぶに押し付けて逃げるように消えてしまった。

さあ、襷を受け取ったのぶは競争に飛び入り参加 。
「なんでおなごが」
「ハチキンおのぶだ」
糸でつるされているあんぱんをくわえるのはなかなか難しいらしい。
みんな口を開けて上を向いてジャンプ! おっと! ここで岩男(濱尾ノリタカ)——小学校のころのぶがけがをさせてしまった、あのいじめっ子だ——があんぱんを吊るしている紐を揺らす「反則」。
一方、必死であんぱんに飛びつこうとしていたのぶは、あわや転びそうに。危ない! と見えたその瞬間、誰かの手がサッと伸びてのぶを支えて消えた……危機一髪!姿勢を立て直して競技続行。

最後の直線で、前を走る岩男をかわしてゴールイン!
「一等は、朝田のぶ」
(※今田美桜 振り返りインタビュー)
しかし、のぶは女子だからという理由で失格に。
「失格なんてひどいね」と、結果を知って怒ってくれる嵩。
のぶ「嵩でも怒ること、あるがやね……お腹下したなんて噓やろ。うち、今わかった」
嵩はパン食い競争出場の権利をのぶに譲ってくれたのだ。

そこにラジオを抱えた千尋がやってくる。
2等だった岩男は紐を揺らして失格、3等だった千尋がラジオを獲得し、それをのぶに譲りに来たのだった。
嵩「のぶちゃん、よかったね。元気100倍だね」
“元気100倍”はアンパンマンの代表的なセリフだ。
「じゃあ、稽古があるき」と軽く頭を下げて去っていく千尋。おや?千尋の想いはのぶにある?……嵩は何か察した様子。
「嵩、ええ弟持ったね~」のんきなのぶに複雑な表情の嵩。

朝田家にラジオがやってきた!
スイッチを入れると、1936年、オリンピック・ベルリン大会の放送だ。
朝田家の前では、近所の子どもたちが参加してラジオ体操が行われていた(昭和3年に制定された初代のラジオ体操。ちなみに現在は昭和26年からの3代目)。

そして、のぶが見つけた夢は……
祖父・釜次の前に正座して、決意を打ち明けた。
「お父ちゃんに最後に言われたこと、ずっと考えよったがよ。『なりたいものが見つかったら思いっきり突っ走れ』……将来は、学校の先生になりたいがです」
女子師範学校への進学に、釜次は「いかんいかんいかん!」

次女の蘭子はのぶを応援する、と言い出す。
「パン食い競争でお姉ちゃんが走りゆうのを見た時、なんか、胸がす~っとしたがよ。男の人らをどんどん追い抜いて、かっこよかった。お姉ちゃんの夢はうちの夢や」
母の羽多子(江口のりこ)が畳みかける
「お言葉ですけんど、お義父さん、おなごらしゅうて何ですろうか?……お願いします。のぶの夢を潰さんといてください」
残るメイコ(原菜乃華)は父のソフト帽を釜次の頭に載せ……釜次の、負け。

そのころ嵩の元に、応募していた新聞の懸賞漫画の結果が届く。結果はなんと、入選! 10円もの大金を受け取った。
このあと、嵩が描いた4コマ漫画が新聞に掲載され、その内容がわかるシーンがある。登場している女の子は誰が見たってのぶである。こんなの描いたらみ~んなに分かりそうなものなのに……(笑)
「わし、大好きです」

あんぱんの大口注文を配達した帰り、三姉妹と屋村草吉(ヤムおんちゃん・阿部サダヲ)は浜辺でかき氷をほおばっている。と、そこに嵩と千尋が現れる。
のぶはパン食い競争で自分を救ってくれた、あの「手」の主が千尋だとわかり、お礼を言いたいと思っていた。

のぶ「パン食い競争のとき、うちのこと、助けてくれたそうやね。ありがとう。一等になれたおかげで大切なこと、思い出したがよ。……おなごでも思いっきり夢をおいかけていいがやって」
あんぱんを手渡すのぶに、千尋が
「わし、大好きです……」
かたずをのんで見つめる嵩。
「朝田パンのあんぱん」
メイコ「たまるかぁ。お姉ちゃんのことかと思った!」

そんな余韻をふんわり残す、海岸を歩く三姉妹。
残った嵩と千尋が取っ組み合いでじゃれあって……青春だなぁ。
(※今田美桜 振り返りインタビュー)

「それでも会いたかった。ずっとこの人に会いたかった」

ある日、嵩の前に8年前に出て行った母親・登美子(松嶋菜々子)が突然現れる。(※松嶋菜々子インタビュー)
「嵩、こんなに大きくなって」
そのまま柳井家に向かった登美子は千代子(戸田菜穂)、寛、千尋に言った。
「しばらく、こちらにおいていただけないでしょうか?」

千代子「あちらのおうちは?」
登美子「離縁いたしました……千尋さんもこんなにたくましくなられて」
うつむく千尋の心がイタイ。

柳井家の自室で一人マンガを読む嵩に登美子が話しかける。
「あなたもやればできるわ。お父さんの子ですもの。(そして新聞の漫画を見て)嵩、賞とったの? へぇ。すごいじゃない。おめでとう」
笑ってくれる母に嬉しそうな嵩。「やっぱり嵩は清さんの子ね~」と頭をなでる。
無邪気ではあるけれど、ちょっと過剰な……登美子の言動に嵩がからめ捕られていくようだ。

一方で千尋は、母が戻った家は居心地が悪く、いつものシーソーで一人本を読んでいた。のぶに言う。
「兄貴みたいには喜べんがやき。面と向こうたらひどいことを言うてしまいそうやき」

そんな会話のあと、のぶは嵩と登美子が一緒にいるところを見て、おもわず8年前のあの日のことを話してしまう。(※今田美桜 振り返りインタビュー)
のぶ「あの日、嵩がどんな気持ちであなたに会いに行ったか、わかっちゅうがですか?……今ごろ、何しに戻ってきたがで。これ以上、嵩を傷つけるがは、やめてちゃってくださいっ」

ところが、嵩は母をかばうのだった。
「のぶちゃんは、母親に捨てられたことないだろ。それでも会いたかった。ずっとこの人に会いたかった」
嵩の心臓からドクドク血が流れ出しているのが聞こえてくるようだ。
(※北村匠海インタビュー)

さて、今週最後は千尋の爆弾(?)発言。
千尋「わしは、医学ではのうて、法学を学ぶことにしました」
「世間の重しを跳ね返して、我が道を行く人を見て、わしも、ああ生きよう、そういう人らの力になろうと思うたがです」
「我が道を行く人」というのは、もしかして……。

千尋を柳井医院の跡継ぎにと考えていた千代子は納得できない。
そこで登美子が割って入る。
「ご心配なく。いざというときには千尋さんの代わりに嵩が医者になりますから。この子はやればできる子なんです。嵩、自分を信じてみなさい」
うわぁ、ここまで言われたら、もう母親の“期待”を通り越して“呪い”かも……嵩はどうする?
今週は嵩・千尋のほのかな想いが見えてきました。そのほかの人物たちの気持ちもちらちら。次女の蘭子は住み込み職人の原豪(細田佳央太)が好きみたい。では、豪は? 一方、いじめっ子だった岩男はどうやら蘭子に一目ぼれ……パン食い競争の陰でこっそり立っていたフラグはどう回収されるのかも楽しみです。
さて、来週のタイトルは「なにをして生きるのか」。
「アンパンマンのマーチ」のなかで、今週の「なんのために生まれて」に続くフレーズ。優しいがゆえにその行く末が心配な嵩ですが、どんな選択をするんでしょうか? ではまた来週、ほいたらね!