ドラマの出演者やスタッフが「この回のあの人、あのシーン」について語ったコメントを不定期で配信するコーナー。今回は、駿河するがいち右衛もん役の高橋克実さん、つる右衛もん役の風間俊介さんから!

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高橋克実さんの第8回振り返り

——ほんどんと対決する場面に、駿河屋の吉原への思いが伝わってきました。

「べらぼう」に出演するまで、吉原のことは映画や舞台でしか見たことがなかったので、こんなにも差別されているとは知りませんでした。映画『幕末太陽傳』でフランキー堺さんが演じる佐平次がとうりゅうしている品川宿のたたずまいと、映画『吉原炎上』などで描かれる吉原のきらびやかさは、雲泥の差じゃないですか。吉原は「格が違うんだろうな」と思っていたんです。

今回「べらぼう」に関わることで、元々は日本橋にあったものが、移転させられて吉原になったことを初めて知りました。元をたどれば同じ場所の人間だったのに、地本問屋たちは吉原者に対する差別意識を隠さない。そんなやつらとは敵対するしかないですよね。

本当は駿河屋がじゅう(蔦屋重三郎)に継がせたいのはひきぢゃであって、本を作ることは気に入っていません。でも、みんなが「重三は才能がある」と言うし、何よりも自分たちを下に見ている地本問屋たちに重三がペコペコするのを、育ての親として見ていられなかったんだと思います。


風間俊介さんの第8回振り返り

——駿河屋に階段から突き落とされました。

このシーン、めちゃくちゃ楽しみにしていました。駿河屋のセリフに「あかづら!」というのがありますが、脚本の森下(佳子)さんが僕に当て書きしてくれたんだなと思って(笑)。「うそくせぇんだわ、お前」というセリフにも、森下さんは僕の特性をよく見ているなぁと感心します。

——風間さんの特性、ですか。

こうしてインタビューを受けているときも、僕は頭の中で言葉を精査しながらしゃべっています。感情から出てきた言葉は人を傷つけることがあるので、必ず相手のことを考え、丁寧な言葉遣いになるようフィルターを通すんです。だから、人によっては「嘘くさい」とか「うさんくさい」と感じられることもあるみたいで……。

鶴屋の言葉も同じです。相手によっては、慇懃いんぎんれいに感じることもあるでしょう。吉原の方々は心の赴くままに生きているから、鶴屋の丁寧な説明を「嘘くせぇ」と思うのは当然です。

なぜ吉原者を市中の仲間に入れることを認められないのか。鶴屋は単に「好きか嫌いか」という“肌感覚”の話をしているだけなんです。それなのに、相手に寄り添うような言葉遣いをするので、余計に腹が立つんでしょうね。

交渉の場では、たった一つの言葉で「でも、ああ言っていましたよね」と切り返されて戦局が変わることがあります。だから、鶴屋は常に「私は言質げんちを取られるような言葉は発しませんよ」というスタンスでいます。フィルターを通した言葉になるのは、鶴屋に染みこんだ性分なんですね。

僕にも似たようなところがあるので、鶴屋にはすごく共感しています。そこに森下さんが気づいて、当て書きしてくれたのが、とてもうれしかったです。