日本のメディア産業やポップカルチャーの礎を築き、“江戸のメディア王”とも称される、つたじゅう三郎ざぶろう。“戦”ではなく“文化”で時代を変えた“つたじゅう”を主人公に、痛快エンターテインメント大河が幕を開ける!
NHK初出演にして蔦重を演じる横浜流星が、作品の見どころを試写会で語った。


合戦の代わりに“商いの戦い”が繰り広げられる人間ドラマ

放送100年を迎える2025年の大河ドラマ「べらぼう~つたじゅうえいゆめばなし~」。親なし、金なし、画才なし、という“ないないづくし”の蔦屋重三郎が、“面白さ”を追求して時代のちょう、“江戸のメディア王”になっていく、波乱万丈の物語だ。ときに“お上”に目をつけられながらも、重三郎は喜多きたがわ歌麿うたまろ葛飾北斎かつしかほくさい山東さんとうきょうでん、そしてとうしゅうさい写楽しゃらくという才能を世に送り出していく……。

12月16日、第1回「ありがた山の寒がらす」の試写会が、東京・渋谷のNHK放送センターで開催された。明和9(1772)年の大火で江戸市中が炎に包まれる冒頭のシーンから圧倒的な迫力で、流れるように物語が展開。60分の作品(初回は15分の拡大版)の体感は、わずか数分しかなかった。

そして試写会後の記者会見には、主演の横浜のほか、脚本の森下佳子、チーフ演出の大原拓ディレクター、制作統括の藤並英樹プロデューサーが出席。記者からの質疑応答に臨んだ。

完成した映像を会見の2日前に見たという横浜は、冒頭の挨拶で「撮影中から、この作品は新たな大河ドラマになっていると感じていた」と説明。「合戦はありませんが“商い”の戦いが繰り広げられ、人間ドラマが色濃く展開する、スピーディーで痛快なエンターテインメント作品になっています。蔦屋重三郎というあまり知られてない人物だからこそ先入観なく、彼と同じ目線で共感していただけると思います。これから1年、この作品と蔦屋重三郎を愛していただけたらうれしいです」と、力強く語った。


“種”が“森”に育ったと、脚本家も驚く世界観

森下は「台本は、みんなが作業するための“台”、設計図だと言われますが、今回私が書いたものは、もはや“種”で、出来あがったものは“森”になっている印象を受けました」と映像化された世界観に驚いたようだ。

キャスト・スタッフが一丸となって作っていることを実感したと語り、「この話をいただいたとき、私は『スタッフの誰よりも頑張ろう』と思ったのですが、完成した作品を見て『私、頑張ってないんじゃないの?』という気がして、もっと頑張らなきゃと思いました」と、決意を新たにしていた。

また、第1回の演出を担当した大原ディレクターは「この大河は、初めてのことばかり。この時代を描くことも、吉原が舞台になるのも初めてで、キャストもスタッフも全員が“挑戦”する感じで日々撮影に取り組んでいます」と、撮影現場の様子を紹介。「明和の大火」のシーンでは、京都に作ったオープンセットを中心に、安全を確保しながらリアルな火も使って撮影して、そこに5か月近い期間をかけてVFXとCGを加えて迫力あるものに仕上げたと、舞台裏を明かした。

大原ディレクターは、「横浜さんのこれまでの印象は“かっこいい”でしたが、今は“かわいい”ですね。笑顔がすごく好きです。森下さんとも、横浜さんとも『蔦重のキャラクターの明るいところを大事にしたい』と話しています。明るいから人が集まってくる、だから“メディア王”になれたんじゃないかと。みんなを引っ張るというより、みんなが蔦重のもとに集まってしまう。横浜さんの笑顔を見ていると、撮っているこちらが元気になる、“笑顔力”がすごいです」と、横浜の魅力を語った。

森下も「パワフルに成り上がっていきながらも、周りにすごく愛された蔦重に個人的に憧れているのですが、そこに横浜さんが乗っかったのがちょっとヤバくて(笑)。好きになりすぎるんじゃないかと、今、危険な状態にいます」と横浜を絶賛。

それを横で聞いていた横浜は、「あんしています」と笑顔を浮かべ、「自分は森下さんが作った世界での蔦重を全力で生きていて、大原さんの演出を受けて全力でやっているだけなので、そう言っていただけて『よかった』と。間違っていなかったんだ、このまま突き進んでいこう、という気持ちになりました」。


エンターテインメントの素晴らしさを伝えたい

主演=“座長”という立場で大河ドラマを引っ張ることに対しての心構えとして、「まず自分がやるべきことを全力でやること。自分は声に出して、みんなを引っ張っていくタイプではないので、自分の姿によって『横浜が頑張ってるから、自分も頑張ろう』と思ってもらえたらいいな、という思いがあります。限られた時間の中での撮影ですけど、妥協しないことを大事にしています」と、意気込みを語った。

衣装について聞かれた横浜は、蔦重が着ている緑の着物はスタッフとも話し合って決めたことを明かし、「蔦重として何色がいいのか。当時の江戸で流行はやっていたのは青ですが、それだと埋もれてしまう。吉原が舞台で登場人物がたくさんいて、その中でもエネルギッシュで埋もれないように、ということで緑になりました」と語った。さらに「緑には縁があって、戦隊もの(横浜が出演した「烈車戦隊トッキュウジャー」)でも、担当カラーがグリーンだったんです。なので初心に返って」と、はにかみながら付け加えた。

この作品での“挑戦”は何かと問われた横浜は、「全てですね」と即答。「自分が触れてこなかった、挑戦してこなかった世界観であり、キャラクター。その時点でまず挑戦ですね。NHK作品に出演するのも初めて、大河ドラマも初めてなのに主演を務めさせていただいて……。挑戦だらけなので、高い壁を乗り越えられたらいいなと思っています。そのために日々、キャスト・スタッフの方々と力を合わせて、全力で取り組んでいます」と、撮影現場に溶け込みながら邁進まいしんしていることをうかがわせた。

「べらぼう」への出演依頼を受けたのが、コロナ禍がやや落ち着き、エンターテインメント業界が徐々に力を取り戻していた時期だったと横浜は振り返った。「エンターテインメントの素晴すばらしさを、蔦重を通してしっかりと皆様に伝えたいと感じました。個人的には、エンタメの世界で頑張っている人たちに勇気を与えたいという思いがあります。でも、作品は届けたら視聴者の皆様のものなので、純粋に「べらぼう」を楽しんでいただいて、蔦重の生きざまに何か感じてもらえたら、それだけでうれしいです」と心境を語った。

「べらぼう」は、2025年1月5日(日)からスタートの予定。


大河ドラマ「べらぼう~つたじゅうえいゆめばなし~」

2025年1月5日(日)スタート ※初回15分拡大版
毎週日曜 総合 午後8:00~8:45/翌週土曜 午後1:05~1:50(再放送)
     NHK BS 午後6:00~6:45
             BSP4K 午後0:15~1:00/午後6:00~6:45(再放送)