現在放送中の夜ドラ「未来の私にブッかまされる!?」。常に堅実な人生を歩んできた市役所職員・五十嵐頼人(綱啓永)が、突如として現れた30年後の自分を名乗る“オジサン”(高橋克典)とともに、自分の人生と向き合う物語だ。
頼人の恋人・筒井凜を演じているのが久保史緒里。凜は服飾系の短大卒業後、アパレル会社に就職したが、現在は、病弱な母を気遣って実家のクリーニング店を手伝っている。頼人が未来を模索して変わりつつあるのを目の当たりにして、次第に影響を受けていくという役どころだ。
今まではどちらかというとおとなしい印象の凜が、4週目から驚きの決断で周囲の人をぐいぐいと巻き込んでいくことに。本作への思いや、凜に共感できることなど、話を伺った。
――もともと、夜ドラが好きだったそうですね。
久保 夜にお仕事から帰ってきて、テレビをパッとつけて、毎晩15分観て、明日が楽しみになれるっていうのが私の中での夜ドラの素敵なところです。
最近で印象に残っているのは「VRおじさんの初恋」です。あの作品も、「未来の私にブッかまされる!?」と同じように個性豊かなキャラクターがたくさん出てきましたよね。夜ドラには、一本筋が通っていて、伝えたいメッセージがあるので、そこも魅力的だと感じています。
――2023年に大河ドラマ「どうする家康」に出演されていましたが、夜ドラの撮影現場の雰囲気はいかがですか?
久保 ものすごく和気あいあいとした雰囲気です! 主演の綱啓永さんがすごく明るくて、誰からも愛される方。綱さんが現場の空気を作ってくださっていて、明るく、楽しく撮影が進んでいます。
――筒井凜という役は、久保さんから見てどのようなキャラクターですか?
久保 私は、自分が思っていることや、やりたいことがあっても、自分より相手ファーストにしてしまうところがあります。凜ちゃんと私の共通している部分ですが、自分がこういう行動をしたら相手がどう思うかを考えて生きちゃうところが、すごく似てるなと思って。でも、それを生きづらいと思っているわけではなく、むしろそのほうが楽なところがあります。
凜ちゃんの目の前にも、30年後の自分である“オバサン”が登場しましたが、30年後の自分が言うことは、本音どころか、自分が本当に思っていたこと。凜ちゃんも、本当はこれがやりたかったんだ、ということに気づいてしまいます。
私は以前、先輩に「自分の人生なのに、他人に舵を切ってもらっているように見える」って言われたことがあり、それがずっと心に残っています。多分、凜ちゃんもそうで、自分で舵を切る人生になった瞬間、恋愛リアリティショーに出演するなど、いろんなことをしだすんですよね。そこはすごくかっこいいなって思うし、凜ちゃんには女性の強さみたいなものが詰まっている感じがするんです。
――頼人役の綱さんと、30年後の頼人である“オジサン”役の髙橋克典さんは、同一人物を演じるにあたって、仕草などをお互い真似ているということでした。久保さんと“オバサン”役の坂井真紀さんとの共演は、どのような感じですか?
久保 逆に私は、30年後の自分である真紀さんと今の自分は似ていないほうが面白いと思っています。出会った当初、「30年後、私はこうなるの?」と驚くくらい違う人物なんですけど、凜ちゃんがどんどんそこに近づいていく過程が感じられるほうが面白いかも、と思ったんです。
真紀さんが現場ではっちゃけた自分を見せ、いろんな表情も出していらっしゃいます。真紀さんは、この先の30年、凜ちゃんがどんな人生を歩むのかということを考えるきっかけになるような未来の自分でいてくださるので、演じる上で、それにすごく救われています。
――俳優として大先輩でもある坂井真紀さんからは、どのような刺激をもらっていますか?
久保 ご自身から発せられるエネルギーの大きさがすごいです! 私は台本を読んで、こんな感じかな? って想像したことのすべてを現場でできるかっていうと、まだできていません。
でも、真紀さんは、何パターンもの動きをされるんですよ! それを監督に「こっちの方が面白いですか?」「こっちの方がなんか未来っぽいかな?」などと相談されていて、その発信力や想像力にものすごく刺激を受けています。
監督からのオーダーへの柔軟な対応や、吸収力もすごいです。監督から、「真紀さんから学んでください」とおっしゃっていただいたので、現場では真紀さんのことをめちゃめちゃ見ています!
――4週目以降、女性の生き方やジェンダーなどについて考えさせられるストーリー展開がありますが、久保さんは作品に込められたメッセージをどう受け止め、どう演じていますか?
久保 今、多様性という言葉をよく耳にしますが、果たして本当にそうなのか?ということを考える機会が増えました。SNSの発達で、1つのニュースに対する関心が高まりやすいので、そういうことが怖くて動けないみたいなところがあります。
だから、選択肢は広がっていても、それが行動に移せるかっていうと、必ずしもそうではない気がしています。多様性によっていろんな選択肢が増える中、もしかしたら、逆に選びづらくなってるんじゃないかなって思うんです。
私自身の話だと、ドラマなどに出演した時に、どうしても“アイドル”として見られがちです。それは致し方ないことだと思いつつも、私は俳優業にも挑戦したいと思っています。私は自ら進んでこの道を選んでいますが、きっと世間には、周りの目や環境などによって、その自由を奪われている方もいらっしゃると思うんです。また、凜ちゃんみたいに、両親のためなど、感情面で自分の心に蓋をして選択ができないっていう方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。
1回きりの人生だから、本来は自分のやりたいことをして生きていいし、選択も自由。正解はないし、どの道を選んでもいい。この作品を通して、「正解なんてないから!」っていうことを伝えられたらいいなと思っています。
登場人物たちは最後の最後までどんな選択をするかわからないし、全員が、自分の未来のために、自分自身のために何かを選択しようとするお話なので、ぜひ多くの人に見てほしいと思いながら演じています。
――人生には多かれ少なかれ、いろんな失敗や後悔があるものですが、久保さんはどのように乗り越えていますか?
久保 失敗はめっちゃ怖いですし、小心者なので、あまり行動に移せないけど、私はどんなにつらくて苦しい思い出も、過ぎてしまえば全部やってよかったって思えるタイプ。後悔もあまりしないのですが、モノによっては数年引きずることもあります。でも、絶対にいつかは「やってよかった!」と思えるようになるはず、と考えながら今を過ごしています。
――最後に、この作品を観ている人にメッセージをお願いします。
久保 このドラマには、本当に“ブッかましている”人がいっぱい出てくるので、ぜひそれを楽しんでください! 私自身も夜ドラが大好きなので、夜の15分があるから、お仕事や学校を頑張れると思ってもらえるとうれしいですし、1日先というちょっと先の未来の楽しみになるような作品になっていますので、よろしくお願いします!
くぼ・しおり
2001年7月14日、宮城県生まれ。'16年、アイドルグループ「乃木坂46」に3期生として加入。'23年、NHKの大河ドラマ「どうする家康」に織田信長の娘・五徳役でレギュラーキャストとして出演。アイドル・俳優業のほか、'22年から「乃木坂46のオールナイトニッポン」でラジオパーソナリティーを務めるなど多方面で活躍。
夜ドラ「未来の私にブッかまされる!?」(全8週・32話)
毎週月曜~木曜 総合 午後10:45~11:00ほか
社会人10年目を迎える、市役所職員の五十嵐頼人(綱啓永)。一寸先は大炎上のリスク社会で「失敗してはいけない」というプレッシャーを感じながら、堅実に安定第一の人生を送ってきた。そんな頼人の前に現れたのは“未来からやってきた五十嵐頼人”だと主張するオジサン(高橋克典)。オジサンの2054年仕込みの価値観と大胆な行動によって、今まで頼人自身がフタをしてきた、夢と仕事、友情と恋愛、結婚と家族といった人生の宿題が一気に“ブッかまされる”。恋人の筒井凜(久保史緒里)へのプロポーズ失敗で幕が開ける怒涛の毎日の中で、2054年の「未来」の価値観と2024年の「今」の価値観の衝突に揺さぶられながら、頼人は人生を生き抜くことができるのか…!?
「このままじゃ、あなたは自分の人生、失敗だったって思っちゃうんです。よく考えて。ターニングポイントは、今なんです」
作:大池容子、山田百次
音楽:睦月周平
主題歌:「消費期限」SEVENTEEN
制作統括:村山峻平
プロデューサー:上田明子
演出:原英輔、田中正、川野秀昭、中村俊介、門脇弘樹
兵庫県生まれ。コンピューター・デザイン系出版社や編集プロダクション等を経て2008年からフリーランスのライター・編集者として活動。旅と食べることと本、雑誌、漫画が好き。ライフスタイル全般、人物インタビュー、カルチャー、トレンドなどを中心に取材、撮影、執筆。主な媒体にanan、BRUTUS、エクラ、婦人公論、週刊朝日(休刊)、アサヒカメラ(休刊、「写真好きのための法律&マナー」シリーズ)、mi-mollet、朝日新聞デジタル「好書好日」「じんぶん堂」など。