NHKスペシャル「#みんなの更年期」
【放送】2022年4月16日(土) 総合 午後10:00
 

離職者数、46万人
経済損失、年間4200億円
すべての女性が直面する「更年期」その知られざる真実とは


「生理の貧困」報道(2021年貧困ジャーナリズム大賞受賞)の取材チームに1人の女性から「更年期の症状が理由で雇い止めされた」という声が届いたことから、NHKは専門家とともに、更年期に関する大規模調査を実施。すると、40-50代女性の4割近くが症状を自覚し、そのために推計46万人が離職1、経済損失は4200億円にのぼる2ことが明らかになりました。

閉経期(平均約50歳)の前後10年を指す更年期。女性の健康をつかさどる女性ホルモンの減少によって、めまい・頭痛・関節痛・感情のコントロールができなくなるなど、さまざまな症状が現れます。1年にわたる報道を通じ、1人から始まった当事者の声は3700人超に。更年期を冗談のネタにするような風潮もある社会の中で、その苦しみは「個人の問題」とされ、職場や家族との間でさまざまなひずみが広がっていることが見えてきました。


「孤独な更年期から、みんなの更年期へ」

NHKでは、更年期をめぐる課題を伝えるだけでなく、当事者と一緒になって社会を変えていくための取り組みを始めています。番組ナビゲーターは、みずからも更年期症状に苦しんできた当事者でもあるNHKの武内陶子アナウンサー(56)。職場が、家庭が、社会が、何をどう変えていけばいいのか。当事者や世界の先進地の取り組みを伝え、めざす社会へとともに歩みを進めていきます。

1.専門機関とNHK実施「更年期と仕事に関する調査2021」より過去3年以内の更年期症状経験者を母数にしたデータから専門家が推計
https://www.jil.go.jp/tokusyu/covid-19/collab/nhk-jilpt/docs/20211103-nhk-jilpt.pdf
2.上記離職者数をもとに、年間の経済損失額を専門家が推計


番組で自身の更年期の経験について語ってくれた、有森裕子さん、有森也実さん、小島慶子さんから、メッセージをいただきました。

【五輪メダリスト:有森裕子さん】

更年期症状だとわからずに長く苦しみました。どっと汗が出たり、人の話を聞いていても内容が理解できなくなったり……当時の日記には、自分はどうなるんだろうと不安を繰り返しつづっていました。偶然医師に更年期について話を聞き、治療を始めました。症状はまだありますが、今は自分の体に何が起きているのか、対処のしかたもわかります。「更年期を知ること」がどれだけ大きいか、感じています。教育の中でも更年期について学び、理解が広がる社会になることを願っています。
【俳優:有森也実さん】

私が経験した症状は、ホットフラッシュから始まり顔面のけいれんにまで及びました。一時は“もう女優をやめようか”とまで思いつめました。苦しい時間でしたが、これまでの自分、これからの自分を考えるきっかけとなりました。自分自身の「総括」の時間であったと今は思えます。伝えたいのは、絶対終わりが来ること、そして、その経験は無駄にはならないこと。正しい知識が広まり、次の豊かな人生へのプロセスだと感じられるような社会になればと思います。
【エッセイスト:小島慶子さん】

バラエティー番組で「よ!更年期」とからかわれたときの戸惑いが原点です。更年期を滑稽なものとして扱う風潮が、当事者を孤独にしているのではないか。そういうの、もうやめよう。そんな思いから、自身の更年期について積極的に発言しています。症状を自覚した当初は「こんな悩み、きっと私だけだ。恥ずかしい、みっともない」と思い、誰にも相談できませんでした。でも、これは大切な体の話。更年期について安心して語ることができる世の中にしたいですね。
【制作担当チーフ・プロデューサー:植松由登】

これは女性の尊厳をめぐる番組です。人生の中で積み重ねてきた努力や大切にしてきたものが、更年期というごく限られた期間に失われてしまう悔しさ、やりきれない思い。これまで声に出せなかった女性たちの心の声に1年がかりの取材で迫りました。放送を前に感じているのは、「みんながちょっとずつ考えを変えるだけで社会はずいぶんと変わっていけるのではないか」という希望です。覚悟を持って取材を受けてくださったひとりひとりの思いは、多くの視聴者に響くはず。この番組が“変化”の第一歩になればと願っています。