10月7日(月)からスタートする夜ドラ「未来の私にブッかまされる !?」は、「失敗してはいけない」と常に考え、堅実な人生を歩んできた市役所職員・五十嵐頼人が、恋人へのプロポーズ直前に突如目の前に現れた、“30年後の五十嵐頼人”を名乗る“オジサン”によって、否応なく自分の夢や仕事、恋愛に向き合うことになる物語。
この頼人を演じるのは、NHKドラマ初出演にして初主演の綱啓永さん。本作への意気込みや、 “オジサン” を演じる高橋克典さんとの演技、過去の自分に言いたいことなどについて聞いた。
――今回、NHKに初めての出演、かつ主演ですが、オファーが来た時のお気持ちは?
綱 うれしさがいっぱいなのはもちろんですが、謙遜ではなく、「夜ドラの主演が僕でいいの? マジ?」って思いました。クランクインの日が近づくにつれ、どんどん緊張とプレッシャーが僕の体を蝕んできました。
顔合わせの挨拶では何を言ったか全然覚えていません。たくさんの人がいて、偉い方もいっぱいいるという状況がすごく苦手で……。わざわざ見に来てくださっているのはわかるのですが、いつも以上に緊張しちゃいました。
――脚本を読まれての印象はいかがでしたか? また、どのようにして頼人を演じたいと思いましたか?
綱 作品の印象はテンポ感の良さです。夜ドラは週に4日15分ずつ放送があり、毎回何らかの展開があるので、見ていて飽きないというか、ずっと観ていられます!
このあいだ完パケ(編集済の完成版)をいただいて、次の日の撮影が朝早かったんですけど、最初のワンシーンだけチェックしておこうと思ったのに、続きが気になって全部観ちゃったんです。夜ドラのテンポの良さはやはり、ほかのドラマとは違う魅力かなと思いました。
頼人という役ですが、物語の真ん中に立っている人間で、いろんな人と関わるのですが、ずっと振り回されています。だから、それぞれの登場人物との関係性が大事になってきます。一番大事なのは、やっぱり30年後の自分であるオジサンで、次は恋人の凜ちゃん(久保史緒里)。特にこの2人との関係性は自分の中でしっかりと作っておかないと、と思っています。
――頼人は、「頼れる人」という意味が込められた名前ですが、1週目では頼りないところも多いキャラクターで、これから成長していくのだと思いますが、綱さんも頼人と同じように成長を感じながら撮影されているのでしょうか?
綱 毎日、いろんな刺激を受けています。中でも、共演シーンが一番多い、オジサン役の(高橋)克典さんからの刺激が大きいです。克典さんは、お芝居の引き出しの量が半端ないので、見習いたいと思いながらやっています。
頼人は成長していく人間なのですが、第1話から順番で撮影するわけではないので、その成長のバランスを自分なりに考えながら演じています。
――高橋さんとは、動きやちょっとしたクセを共有して、同一人物らしさを出しているそうですね?
綱 顔合わせの日に、僕が手を組んでいたのを見た克典さんが、「それいいね、ちょっと俺もやってみるわ」って、言ってくださって。それがきっかけで、お互いの手のクセを観察して取り入れるようになりました。
ドラマを観ている人の目線からすれば、 頼人と、30年後の頼人という設定のフィルターがかかっているとしても、その上でシンクロ率をあげていきたいので、細かいところで真似をしています。
――恋人の凜を演じる久保史緒里さんとの共演シーンも多いですが、久保さんの演技からはどんな刺激を受けていますか?
綱 相手の言葉を聞いている時の、表情だけのお芝居がすごく素敵だなって思っています。受けのお芝居なのに、目だけで伝わるっていうか。ドラマって、わかりやすく表情を変化させたり、大きく動いたり、といったことが必要で、久保さんも、もちろんそういう動きをされることもあるのですが、動いていない時でも、心情の変化が伝わるのですごい。僕も真似したいと思っています。
――綱さんは2017年に第30回ジュノンボーイコンテストでグランプリを受賞したことがきっかけで芸能界に入りましたが、もともと俳優志望だったのですか?
綱 特にそういうわけではなく、芸能の世界に入れたら楽しそうだな、みたいな軽いノリで入りました。本当に何もわからないままレッスンを受けたりしているうちに、今のような感じになりました。
――小さい頃、将来の夢はありましたか?
綱 実は何もなくて……。学生時代って、将来の夢を書かなきゃいけないじゃないですか。昔は今よりももっと世間知らずで、どんな職業があって、何をやるかなどを知らなかったから「会社員」って書いていました。楽しければいいな、とだけ思っていました。
――オジサンは30年前の自分に会って、人生を挽回しようとします。綱さんは、30年前はまだ生まれていないので、10年前に戻って自分に会えるとしたら、どんなことを伝えたいですか?
綱 「毎日、5分でいいから勉強しな!」って言いたいですね、当たり前のことをいいますが勉強してきた人って素敵なんですよ。努力してきているから。今、言葉の引き出しがほしいと思っているので、10年前の僕には「特に国語を、毎日5分でいいからやって!」って活を入れたいです(笑)。
――頼人は失敗したくない人生を歩んできましたが、ドラマでは「失敗してもいい人生」について描いています。綱さんは失敗や後悔をどう乗り越えてきましたか?
綱 僕は、失敗や後悔を自分の中でネガティブに捉えていません。その瞬間はもちろんネガティブになるし、「はー」って落ち込んじゃうんですけど、 結果的にはその失敗があることで、今があるはずって思っているので。だから、今を楽しむ精神を大事にして生きるようにしています。
――頼人は、かつて工業系の高等専門学校(高専)でロボコン部にいて、今後、かつての仲間たちも登場しますね。
綱 元ロボコン部メンバーとのシーンは楽しいです! 撮影を始めた頃はオジサンや凜ちゃんだけだったのが、途中からみんなが入ってきて、撮影に新しい風が吹き込まれました。みんな勢いがすごく、キャラクターも濃いから面白いんですよ。ぜひ楽しみにしていてください。
――これから本作を見る人にメッセージをお願いします!
綱 毎晩15分だけでも、この作品を観ている時間が皆さんの日常をちょっとでも彩れたらいいな、っていう思いで撮影しています。みんなが“ブッかまして”いるので、絶対に後悔はさせません!
【プロフィール】
つな・けいと
1998年12月24日、千葉県生まれ。2017年、「第30回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でグランプリを受賞。’19年、特撮ドラマ「騎士竜戦隊リュウソウジャー」に、メルト/リュウソウブルー役で出演。’22年、ドラマ「君の花になる」では劇中のボーイズグループ・8LOOMのメンバーとしても活躍。2025年公開予定の映画『女神降臨 𝐁𝐞𝐟𝐨𝐫𝐞/𝐀𝐟𝐭𝐞𝐫』に五十嵐悠役で出演。
夜ドラ「未来の私にブッかまされる !?」(全8週・32話)
毎週月曜~木曜 総合 午後10:45~11:00ほか
社会人10年目を迎える、市役所職員の五十嵐頼人(綱啓永)。一寸先は大炎上のリスク社会で「失敗してはいけない」というプレッシャーを感じながら、堅実に安定第一の人生を送ってきた。そんな頼人の前に現れたのは“未来からやってきた五十嵐頼人”だと主張するオジサン(高橋克典)。オジサンの2054年仕込みの価値観と大胆な行動によって、今まで頼人自身がフタをしてきた、夢と仕事、友情と恋愛、結婚と家族といった人生の宿題が一気に“ブッかまされる”。恋人の筒井凜(久保史緒里)へのプロポーズ失敗で幕が開ける怒涛の毎日の中で、2054年の「未来」の価値観と2024年の「今」の価値観の衝突に揺さぶられながら、頼人は人生を生き抜くことができるのか…!?
「このままじゃ、あなたは自分の人生、失敗だったって思っちゃうんです。よく考えて。ターニングポイントは、今なんです」
作:大池容子、山田百次
音楽:睦月周平
主題歌:「消費期限」SEVENTEEN
制作統括:村山峻平
プロデューサー:上田明子
演出:原英輔、田中正、川野秀昭、中村俊介、門脇弘樹
兵庫県生まれ。コンピューター・デザイン系出版社や編集プロダクション等を経て2008年からフリーランスのライター・編集者として活動。旅と食べることと本、雑誌、漫画が好き。ライフスタイル全般、人物インタビュー、カルチャー、トレンドなどを中心に取材、撮影、執筆。主な媒体にanan、BRUTUS、エクラ、婦人公論、週刊朝日(休刊)、アサヒカメラ(休刊、「写真好きのための法律&マナー」シリーズ)、mi-mollet、朝日新聞デジタル「好書好日」「じんぶん堂」など。