NHK放送博物館では現在、企画展「テレビ撮影のひみつ」を開催中です。さて「テレビ撮影のひみつ」とは? ということで今回は、この企画展の一部をご紹介します。

会場に入るとまず目の前に広がるのが歴代の潜水撮影用機材の数々です。カメラを水中で使うために作られた特殊な機材で、「水中ブリンプ」といいます。「ブリンプ」とはもともとは「小形の飛行船」という意味の英語です。おそらく円筒形の構造が飛行船を想像させたからではないかと思われます。

N4ブリンプ。最近まで実際に水中撮影の現場で使用されていた。

このブリンプは、最近まで実際に水中撮影の現場で使用されていた「N4ブリンプ」とばれる機種です。内部にHDカムの取材用カメラHDW750を装着して使用しました。

展示している機材は、東日本大震災後の海底取材や、熊本の水俣湾、北九州の洞海湾、原発のある福井・若狭湾などでの調査取材や生き物の様子の取材に使用されたもの。また、「NHKスペシャル 里海 SATOUMI 瀬戸内海」など、数多くの潜水取材の現場でも活躍しました。展示ではブリンプ内のカメラが起動しており、モニターで映像を見ることができるようになっています。

このほかにも水中撮影60年間の歴史を今に伝える、様々な水中ブリンプを展示しています。ぜひ会場でご覧ください。

一方、こんなカメラも展示しています。

TIO-1A型カメラ。NHK放送技術研究所が開発。

こちらは1959年にNHK放送技術研究所が開発したTIO-1A型という小型テレビカメラです。このカメラは真空管を一切使用しない世界初のオールトランジスタカメラ。真空管を使っていないので、大幅な軽量化と小型化が実現しました。このカメラは水中での中継や、ヘリコプターに搭載して空撮に利用されました。

実際にヘリコプターに搭載されたTIO-1Aカメラ(1962年7月)。

このほか会場では山岳取材の装備品や、月探査衛星「かぐや」に搭載されたハイビジョンカメラのテスト機など、通常のテレビ機材とはちょっと違う珍しい機器を展示しています。会期は9月1日(日)までですので、ぜひお立ち寄りください。

また8月中には、潜水カメラマンや山岳カメラマンのトークショーもあります。詳細はNHK放送博物館の公式サイトでご確認ください(ステラnetを離れます)。

(文/NHK財団 NHK放送博物館 川村誠)