とりじい」の愛称で、愛鳥家から親しまれているまつ​本もとそうさん。行き場を失った飼い鳥の保護や里親探しに力を注ぎ、全国各地で人と鳥がよりよく暮らすために活動しています。子どものころから“鳥がいる人生”だったという松本さんが、鳥への思いを語ります。

聞き手/高橋淳之この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2024年9月号(8/18発売)より抜粋して紹介しています。


鳥たちの命のバトンをつなぐ

――松本さんが立ち上げた認定NPO法人 TSUBASAの飼い鳥保護施設「とり村」には、本当にたくさんの鳥がいますね。

松本 今は150羽ぐらいいます。去年は120羽ほどでしたから、少し増えましたね。インコやオウムのほか、ブンチョウやジュウシマツといったフィンチ類もいます。私たちの団体は飼えなくなった鳥を引き取って、新しい里親さんを探す活動をしているんです。

――今、鳥を手放す飼い主が増えているとか。 

松本 そうですね。引き取りに関する相談は増えつつあります。
鳥って結構長生きで、ハトぐらいの大きさだと50年以上生きる種類もいて、中には100年以上生きたという鳥の記録もあります。だから飼い主が病気になったり先に亡くなったりして、手放さざるを得ないケースが増えているんです。動物愛護法は、ペットが亡くなるまで面倒を見る「終生飼養」を飼い主に義務づけていますが、鳥が長生きなために責任を果たせないケースも多いですね。
そのほか、飼い主の不注意で外に逃げてしまうことも少なくありません。また、コロナ禍で鳥を飼う人が増えたのですが、飼育に飽きて「鳥は自由に空を飛ぶべきだ」という誤った認識で放してしまう例もあります。でも飼われていた鳥は、一羽ではカラスや猫に襲われる、または交通事故に遭うなどして死んでしまうことが多い。鳥を飼う人にはそれを知ってもらいたいですね。

“鳥が人を選ぶ”がコンセプト

――2012年には、NPO法人を設立。鳥の保護活動を始められました。誰かに飼われていた鳥に新しい飼い主を見つけるのは、難しいのではないでしょうか。

松本 そうですね。TSUBASAでは、里親希望者が訪れてすぐに鳥を引き取ることはできません。まず1回目は鳥と面会し、本当に飼えるかどうか家に帰って冷静に考えてもらいます。2回目は家族も一緒に来ての面会。そこで問題がなければ、3回目にようやく引き取れるという流れです。大きい鳥だと、鳴き声も大きくくちばしも鋭いので、かみつかれるととても痛い。飼えるか判断するには3回でも足りないと感じることもありますね。
鳥が飼い主を選ぶケースもあります。例えば、僕たちが毎日世話しても全く懐かなかった鳥が、里親会で初めて会った里親候補者にすぐ懐いたことがありました。里親とのマッチングには、鳥の過去の記憶や相性がすごく影響しているのかもしれません。だから、私たちは“人が鳥を選ぶのではなく、鳥が人を選ぶ”というコンセプトで活動しています。

――鳥は頭がいいそうですね。

松本 よく「(鳥は)三歩歩けば忘れる」と言われますが、全然違います。10年ぶりに会った人のことをちゃんと覚えていたりしますから。前の飼い主さんとの生活や会話がかいま見える瞬間もあります。そこにはひなから育てた鳥とは違った楽しさがあり、責任感を感じる里親さんも結構いますね。

※この記事は2024年5月21日放送「人と鳥の幸せを目指して」を再構成したものです。


認定NPO法人 TSUBASA代表理事・松本壯志さんインタビューの続きは月刊誌『ラジオ深夜便』9月号をご覧ください。鳥との出会いや、NPO法人設立までのあれこれ、「動物業界を変えたい」という思いなどについて語っています。

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