皆さんは地域住民の方々と“まちの未来”について話したことがありますか? 
「防災」「教育」「医療」「交通」などの課題について直接話し合うことは、より良いまちづくりの第一歩につながるはず——。

そんな街の未来について住民どうしで考える会議が、3月26日に東京・世田谷区の用賀で開催されました。その名も「ようがみらいかいぎ」。地域に新しいつながりをつくることを目指した住民主体のオープンな集いです。

第1回目のテーマは「防災」。用賀の未来について熱く語り合ったイベントの様子をご紹介します!

 ●「震災が起こってから、どうするか考えるのは遅い」

これは「ようがみらいかいぎ」を主催した用賀商店街振興組合 理事長・小林弘忠さんの開会時のことば。平時から地域住民が一体となって「防災」について考えることが、家族や大切な人の命を守ることにつながります。

今回の「ようがみらいかいぎ」には、10代から高齢者まで、用賀在住の方をはじめ、用賀に通勤・通学されている方など、約100名が参加。NHK放送研修センター・星野豊アナウンサーの司会により、地域防災について考えました。

司会の星野豊アナウンサー

第1部 基調講演 
—陸前高田市と、世田谷区の防災—

「ようがみらいかいぎ」第1部は、用賀商店街と交流のある陸前高田地域振興株式会社・佐藤忠広代表取締役と、世田谷区・保坂展人区長による講演。

佐藤さんは「あの日、大切だったもの」と題し、東日本大震災時、消防活動に従事した体験を語ってくださいました。

今回、リモートで参加した佐藤忠広さん(スクリーンに上映)

佐藤さんが震災時にとくに大切だと感じたことは、「人と人のつながり」。震災発生後、地元の中学生がお年寄りの家に行き、困っていることはないかと自主的に“声かけ”を行いました。不安が続くなか、地域住民とのつながりは高齢者の方にとって大きな心の支えになったそうです。

最後に、佐藤さんから力強いメッセージが送られました。
「万が一、用賀で何か起こったときは、近隣の方も助けてくれますし、何より私が真っ先に駆けつけるので大丈夫です、心配しないでください!」

続いては、保坂区長による「地域防災の現状と課題」について。

世田谷区・保坂展人区長

用賀を「勢いと落ちつきのある街」と表現した保坂区長は、世田谷区で行っている「防災塾」などの取り組みを紹介。そのなかで現在の課題として上げたのが、「つながり」の欠如でした。

コロナ禍の2年あまり、家族以外と会わなくなった人が増え、さらに電話やメールによる連絡さえも減ったといいます。人とのつながりの欠如は、共に支えあう「共助」の関係が浅くなってしまうため、防災面において大変危険です。

「防災、福祉、コミュニティー振興などをさらに充実させるべく、地域のつながりをもっと活性化させたい」と熱く語っていました。


第2部 ようが防災ブレスト
—みんなでワイワイ アイデア出し—

第2部は参加者全員で行うワークショップ。
4~5名のグループで、防災に関するアイデアを出し合い、意見交換を行いました。まず「よく考えると心配なことや現状の課題」について考え、それに対し「これなら解決できそう」だというアイデアをふせんに書いて貼っていきます。

ピンクの紙に課題を、黄色の紙に解決策となるアイデアを書き出しました。

そして最後は、グループごとによる発表です。「防災」への向き合い方や「用賀の未来」について考えたことを参加者全員で共有しました。

各グループで考えた「防災」「用賀の未来」に向けたキャッチコピーを一部ご紹介します。

・用賀で避難はホームステイ(助け合い)
・声をかけあう用賀 全家族
・世田谷にある公園で春夏秋冬 防災キャンプ
・笑顔と会話が弾むまち
・隣近所からのコミュニケーション 防災に強い街用賀!!

初対面どうしの方も多いワークショップでしたが、意見が活発に交わされ、まさに用賀の未来を考える「つながり」が生まれた時間となりました。議論したことが今後のまちづくりに生かされるまでが「ようがみらいかいぎ」です。

今回の熱気あふれるアイデアの数々が、もしかしたら今後の地域防災プランに反映されるかも!? 
そんな期待をせずにはいられないほど、住民が地域を思い、熱い議論を交わしたイベントとなりました。

平時のコミュニケーションの大切さを改めて感じた第1回「ようがみらいかいぎ」。今後も「教育」や「子育て」「アート」など、地域に関わるさまざまなテーマで開催される予定です。
皆さんも地域の未来について考えてみませんか?