街の未来について、住民どうしが積極的に意見交換するイベント「ようがみらいかいぎ」が3月26日に東京・世田谷区の用賀で開催されました。地域に新しいつながりをつくることを目指した住民主体のオープンな集いです。第1回のテーマは「防災」。イベントの様子はこちらから!
このイベントの基調講演に登壇した世田谷区・保坂のぶ区長に、地域防災や住民主体によるまちづくりについてお聞きしました。

世田谷区に刺激を与える取り組み

まもなく区長に就任して11年目になりますが、当初から「住民が自ら意思決定する」ことを基本に、“災害に強いまちづくり”を目指してきました。各地区の実情に合わせて展開している「防災塾」はその一例です。

▼世田谷区・防災塾の取り組みについて詳しくはこちら▼
https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/kurashi/005/003/006/003/d00147007.html

近年、新型コロナウイルスの影響で、「防災」イベントや災害に向けた取り組みを十分に行うことが難しくなっていました。そんな中、用賀地区で「防災」と向き合う住民主体の集いが開催されたことは、大変うれしく思います。用賀には住民によって作られた「チーム用賀」というコミュニティーがあり、年齢層も幅広く、登録者数は約1,000人とも聞いています。今回のイベントは、その「チーム用賀」が、主催者である用賀商店街とタッグを組んで開催しています。

これまでの「防災」イベントでは、高齢者の参加が目立つ一方、若者はごく少数といった傾向でした。しかし、高齢者だけで「防災」や「まちの課題」について議論していても、いざというときに対処しきれません。災害時は、若い世代が高齢者を助けることが多くなるわけですから。

今回の「ようがみらいかいぎ」では、若い世代や子育て世代、高齢者が、バランス良く参加していました。「防災」に関するイベントに、20代の方が参加しているのを見たのは初めてです。会場の活気とともに若者を受け入れる包容力を感じましたね。理想の「防災」イベントのかたちとして、世田谷区全体に刺激を与える取り組みになったと思います。

また今後、「防災」だけでなく、「教育」や「子育て」などさまざまなテーマで開催していくと聞いています。コミュニティーを発展させるには、まずはコミュニケーションから。住民が互いに意見を出しあう様子を見て、そう実感しました。今後の発展に大いに期待しています。

イベントでは、災害時などに、緊迫感のあるAI音声で避難を呼びかける「次世代AI音声」や、気象情報を解析し、自動的に手話CGの動画を生成するシステム「気象情報手話CG」など、防災に関する展示も。次世代技術の学びを深める場ともなった。

「防災」は“棄権”がゆるされない問題

参政権があっても投票しない人がいるように、政治や行政、あるいは地域の行事に関わらない人もいます。しかし、「防災」だけは棄権することのできない問題です。誰もが「自分ごと」として受け止める必要がある問題なのです。

災害規模が大きいと、行政の力だけでは対応しきれない事態も起こります。そんなときこそ、自分たちで判断することが大切になります。災害が起こったらどう行動すればいいか、要援護者をどんな方法でカバーすればいいか、若い世代の方にあらかじめ考えてほしいのです。

「防災」に対する意識の向上は、世田谷区だけでなく、都市部全体の大きな課題と見ています。その意味でも、今回のような若い世代が参加する「防災」イベントが、広く浸透してほしいと願っています。


住民と一体となってまちづくりを推進

いま世田谷区では、住民主体による“まちづくり”が活発になっています。例えば二子玉川地区では「二子玉川エリアマネジメンツ」が設立され、住民や企業が行政と連携して総合的なまちづくりに取り組んでいます。また下北沢では、若い世代の方が、駅周辺の再開発に積極的に参加しています。

住民と一体となって行うまちづくりは時間を要しますが、その効果は大きく、防災面だけでなく、暮らしやすさにも直結しています。今後も住民の皆さんとともに、活気あふれるまちづくりを推進していきたいと考えています。

1955年11月26日生まれ、宮城県仙台市生まれ。1996年、衆議院議員初当選。2011年の世田谷区長選挙で初当選。区内で車座集会ほか、区民参加の意見交換の場を次々と持ち、今後20年の「世田谷区基本構想」をまとめる。 世田谷区長としての取り組みをまとめた、「88万人のコミュニティデザイン」(2014年・ほんの木)、「闘う区長」(2012年・集英社新書)ほか、著書多数。