同級生たちと会うと、必ず出るのが孫の話。どんなにかわいいか、どんなに賢いか、どんなに懐いているか。孫のいない私としては羨ましい限りです。そんな私に「一日じいじ」の役が飛び込んできたのです。
姪の娘がフランスから2人の息子を連れて里帰りし、久しぶりに会うことになりました。フランス人の夫は今回帯同しなかったので、やんちゃな5歳のレオと2歳のルイの遊び相手をしてくれたら助かる、ということでしょう。そんなたくらみに私は自ら飛び込みました。
猛暑の夏、屋外で遊ばせて熱中症にでもなったら大問題になる。屋内で思いっきり遊べる施設はないかとネットで検索。ありました。大型屋内遊び場の文字が躍っています。滑り台がある、トランポリンがある、カラーボール数万個のプールがある、おままごとコーナーもある……最高じゃん。これで立派な一日じいじは、約束されたも同然。やんちゃ坊主から尊敬されるに違いない。
ボールのプールではしゃいでいたレオに私が手を振ると、「おいでなさいまし〜」と手招きを……彼はトライリンガルではありますが、なぜ? こんな古風な日本語しゃべるのだ。何だかヘンなセリフに誘われてボールのプールに足を踏み入れる。そしてレオを追いかけようとすると、ボールに足を取られてうまく歩けず前のめりに転ぶ。立ち上がろうとして後ろに転ぶ。
今度は、滑り台の上から「おいでなさいまし〜」とレオの声。「まってろ〜」と立ち上がると、プールサイドから小さな子がお母さんに「入れないよう」とべそかいている。どうやら老人がプールを独占している図に。まずい。作戦を変えて、おままごとコーナーへ誘導する。「きょうの料理」でおままごとボーイと呼ばれた私だ。料理を10品ほど一緒に作りながら一息つきました。
翌日、階段の上り下りにかつて経験したことのない筋肉痛を感じました。孫は来てうれしい、帰ってうれしいと聞いた言葉が理解できたような気がします。レオとルイは冬にもやって来るらしい。体を鍛えておこう。
(ごとう・しげよし 第1・3・5土曜担当)
この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2023年11月号(10/18発売)より抜粋して紹介しています。
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