飯間浩明さん(55歳)が編集委員を務める『三省堂国語辞典』は8年ぶりに全面改訂され、2022(令和4)年に『第八版』が出版されました。言葉は絶えず生まれ、変化し、時代や世相を映し出すもの。辞書に載せる言葉をどう選び、何を伝えるのか。辞書編さんという仕事と辞書の在り方について、飯間さんに伺いました。
聞き手/恩蔵憲一
この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2023年11月号(10/18発売)より抜粋して紹介しています。


――こんな言葉も載っているのか、というのもあるんでしょうか。

飯間 現代的な言葉を扱うことをモットーにしているので、例えば「ら抜き言葉」ですね。「来れる」や「見れる」というのは言葉の乱れだとも言われ、違和感がある人もいらっしゃるでしょう。でも私たちの辞書では、「来る」という項目に《「来れる」の形は、明治時代から例がある。本来俗用だが、カ変動詞に特有の可能形と見ることもできる。》としています。明治以来100年以上使われ、それなりに伝統があると説明することで、違和感も薄まるんじゃないかと思うんです。

そのほか、意味が変わってきた言葉としては「ずるい」。今は褒め言葉にもなっていて、《すばらしすぎて、くやしくなるほどだ。あざとい。》という意味を持ちます。例文の《歌い方がかわいくてずるい》は、アイドルがかわいらしく歌うと他の人にはまねできないほど魅力的だ、ということになるんですね。
若い人がよく使う、「やばい」も同じです。わざとマイナスのイメージの言葉を使い、けなしているようで実は褒めています。

――ただ、柔軟に言葉を取り入れると、「この辞書は間違っていないか」という方もいませんか。

飯間 乱れた言葉を辞書に載せないでほしいという意見はありますね。でも何が乱れて何が乱れていないのか、辞書が全ての価値を判断することはできません。辞書は言葉の歴史や使われ方を客観的に書く。そして、利用者自身がその言葉を使うかどうかを判断していただきたいと思うのです。
※この記事は 2023年7月19日放送(初回放送・3月21日)「“時代を映す鏡”を編む」を再構成したものです。

続きは月刊誌『ラジオ深夜便』11月号をご覧ください。

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