発電時に二酸化炭素を排出しない持続可能なクリーンエナジーの選択枝のひとつとして、全国各地で風力発電設備の計画・建設が進められています。
風力発電設備は、効率的に風を受けて発電できるよう洋上や山稜など風通しの良い場所に設置されます。ところが、こういった風通しの良い場所は、往々にして電波の通り道にもなっており、風力発電設備が電波に干渉して電波障害を引き起こしてしまうことがあります。
さらに、近年の風力発電設備は大型化が進み、50階建て以上の超高層ビルに相当する高さ250m以上のものも登場し、建設に際して電波障害への影響が懸念されています。
NHK財団では、環境アセスメントの一環として、風力発電設備による電波障害を未然に防ぐ取り組みを通じ、クリーンエナジーと電波の共存を目指した社会貢献を行っています。
なぜNHK財団が電波障害に取り組んでいるの?
NHK財団は、NHKの技術やノウハウを広く社会還元するべく、それらを活用した社会貢献事業の一環として、風力発電設備を含め、さまざまな建造物による電波障害の予測検討に取り組んでいます。風力発電設備は、JWPA(一般社団法人日本風力発電協会)のホームページによると2021年末現在、全国累計で2,574基稼働しています。
特に、2018年12月7日に、いわゆる「再エネ海域利用法*」が施行されて以降、NHK財団への洋上風力発電設備による電波障害予測検討の依頼件数が増えています。
*…海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律
どのように電波障害は発生するの?
風力発電設備による電波障害には「遮蔽」「フラッター」「反射」の3種類があります。
遮蔽障害は、放送所から送信された電波が、風力発電設備の支柱により直接遮られることにより常時発生する障害です。
フラッター障害は、放送所から送信された電波が、風力発電設備の羽根により散乱されることにより、羽根の回転に伴って変動する障害です。
また、反射障害は、送信所から送信された電波が、風力発電設備から反射してきた電波と干渉して常時または変動して発生する障害です。なお、日本で採用されている地上デジタル放送方式は、反射障害に強い方式のため、反射障害はほとんど発生することはありません。
電波障害をどのように防止するの?
NHK財団では、机上でのシミュレーションにより障害を予測検討し、国民があまねく電波を安定的に受信できるように、電波障害の発生が予測された場合、原因者に、
① 電波障害の防止に向けた風力発電設備の配置の提案
② 電波障害の回避に向けた共同受信設備への加入などの提案
を行います。
電波障害は放送だけなの?
放送に限らず、風力発電設備の計画地に地域の自治体や消防などの公共無線や無線回線が通過している場合には、電波障害を受ける可能性があります。NHK財団では、放送以外の電波についても、これまでに得られたノウハウを用いて、風力発電設備による電波障害を未然に防ぐ取り組みを行っています。
電波障害予測検討のご相談はこちらまで。
お問い合わせ:https://www.nhk-fdn.or.jp/es/contact/index.html
特許お問い合わせ: https://www.nhk-fdn.or.jp/es/transfer/contact.html
(NHK財団 技術事業本部 伊藤泰宏)