放送のために研究・開発した成果を、放送利用だけでなく公益・民間等の事業やビジネスにも利用してもらうために、NHKの技術をまとめた「NHK技術カタログ」を一部更新し、2025年版として2月にNHK財団のホームページにて公開しました。
NHKが保有する特許や技術ノウハウ活用のために
NHKは放送およびその受信の進歩発達に必要な放送技術に関する研究・開発に取り組み、その成果として、高度で多様な特許や技術ノウハウを多数保有しています。これらの技術は放送だけでなく、通信、医療、教育など社会のさまざまな分野で活用されています。
NHK財団は、放送現場で使用されている技術や最新の研究成果など、NHKが保有する技術を広く社会に還元するための窓口として、技術協力(NHKが保有する技術を、NHKの技術者が直接お客様にご説明、ご提供すること)や実施許諾(NHKの特許やノウハウに関して、お客様のご利用を許諾すること)の契約、周知・あっせんなどに関する業務を担当しています。
NHKの技術が広く社会で利用されるには、まずは関心を持つ方々に、簡単に分かりやすくNHKの技術を理解してもらう必要があります。そこで、NHKが保有する特許、技術ノウハウなどの中で、外部に提供可能な技術を、1項目ごとにそれぞれ2ページにまとめた「NHK技術カタログ」を制作しました。
カタログでは、技術内容の解説や利用分野、関連する特許などを挿絵も使って分かりやすく紹介しています。この「NHK技術カタログ」は、2012年度に30項目の技術シーズ集として発行され、以来NHKの技術を知ってもらうために活用してきました。カタログがきっかけとなり、技術協力や実施許諾の契約締結に繋がった実績もあり、NHKの技術の周知・あっせん活動にとって有効なツールになっています。

「NHK技術カタログ」はNHK財団のホームページ(「NHK技術カタログ」はこちらからご覧いただけます)から自由に閲覧することができます。また、知的財産を活用した事業化を推進する自治体などのホームページにも掲載されています。さらに、展示会におけるNHK技術の説明や、自治体等と連携した知的財産マッチングイベントでのNHK技術の紹介にも活用しています。


2025年版「NHK技術カタログ」の見どころは?
「NHK技術カタログ」は、毎年、NHK放送技術研究所の研究者と一緒に、提供可能な技術を検討して、最新の情報に更新しています。2025年版では、昨年のカタログから提供可能な技術を見直し、伝送、映像、音響、ユニバーサルサービスなど10分野から40項目の技術を紹介しています。この中には、昨年開催された「技研公開2024」で公表されたばかりの、3件の新しい技術を追加。この技術について紹介します。
1 台の高精細な8K(ハイビジョン映像の、16倍の画素数を持つ、きめ細やかな映像)カメラで撮影した広角映像から複数の領域を、AIを活用して被写体を検出して切り出し、2K(ハイビジョン)カメラ相当の映像で出力することで、少人数でのマルチカメラ番組制作(複数のカメラ映像を切り替えて番組を制作する手法)が可能になる技術です。放送現場でも活用されており、効率的な番組制作への貢献が期待される技術です。

プロが撮影したようなスムーズなカメラワークを、バーチャルカメラ(コンピュータ内に仮想的に作られた空間を撮影するカメラ)やロボットカメラ(遠隔操作や自動操作によって位置や方向を制御できるカメラ)において実現するための制御技術です。前述の「① 8K映像切り出し制作システム」と組み合わせることで、高品質なマルチカメラ番組制作が実現できます。
特別なレンズなどの光学系を使わず、電気的に切り替え可能な光源アレー(3D映像を再生するために等間隔で配置された多数の光源) を用いることで、好みに応じて3D映像と2D映像を選択して視聴できる裸眼3D ディスプレー(特別な3D視聴用のメガネをかける必要がない、裸眼で3D映像を見ることができる表示装置)です。図鑑などの教育コンテンツや、ゲームなどのエンターテインメントコンテンツの表示に利用可能です。

「NHK技術カタログ」のさらなる充実のために
「NHK技術カタログ」の内容をお客様によりわかりやすく効果的にお伝えするため、現在、カタログの中で問い合わせが多い技術を対象に動画を使ったプロモーションコンテンツの制作を進めています。
また、次回の2026年版カタログの更新に向けて、新たな技術の選定も検討しています。今後も、「NHK技術カタログ」の内容を充実させるとともに、「NHK技術カタログ」を有効に活用して、NHKの研究開発成果が広く社会還元に繋がるよう取り組みを進めていきます。NHKの技術に関心がある方は、ぜひ、お問い合わせください(問い合わせ先はこちら)。
(NHK財団 技術事業本部 三科智之)