北アルプスで三俣山荘と水晶小屋を経営する伊藤圭さん(46歳)。戦後登山の開拓者である父・伊藤正一さんはかつて長野・富山・岐阜の3県にまたがる三俣蓮華岳と長野県の湯俣温泉を結ぶ登山道、通称・伊藤新道を開拓しました。しかしやがて道は荒廃。現在、復活に取り組む圭さんに、その理由や思いなどを伺いました。
聞き手/高橋淳之
24歳で山小屋運営を開始
──戦後登山の発展に尽くしたお父様の伊藤正一さんは、著書『定本 黒部の山賊 アルプスの怪』によると戦後すぐ三俣蓮華小屋(現・三俣山荘)をお買いになったとか。そして正一さんが小屋へ行ったら、山賊と呼ばれる猟師たちが我が物顔で居座っていたそうですね。
伊藤 はい。マタギとも呼ばれる人たちです。小屋の主人のふりをしては、来る人からお金を取っていたそうです。親父も最初はちょっと怖かったから、自分の小屋なのにお金を払っちゃったそうです(笑)。
──でも、お父様は猟師を敵視せず、むしろ一緒に近辺を整備したそうですね。
伊藤 そうなんです。僕が運営する山小屋もそうですけど、どんな相手でも24時間一緒に生活していると互いに相手の人格が分かり、仲間になっちゃうんですね。
──圭さんは、東京育ちですよね。
伊藤 子どものころは夏休みの間だけ山小屋に行っていたので……。
続きは月刊誌『ラジオ深夜便』8月号をご覧ください。
※この記事は2023年5月1日放送「『黒部の山賊』の道、復活へ」を再構成したものです。
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