「青のオーケストラ」 
毎週日曜 Eテレ 午後5:00~5:25
再放送 毎週木曜 Eテレ 午後7:20~7:45

※放送予定は変更になる場合があります。
【番組HP】https://www.nhk.jp/p/ts/3LMR2P87LQ/


やられっぱなしじゃ気が済まない。自分の存在を、鮎川先生に認めさせてやる!
強い気持ちを胸に秘めて臨んだオーディションで、持てる力を全て注ぎ込んだ渾身の演奏。その結果、ライバルである佐伯直よりも上位の席次を勝ち取って、思わず拳を握りしめた青野くんに、鮎川先生が放った言葉は。

お前の演奏は「ソロ」なんだ。

なんですと!?
しかも「今後の演奏次第で、佐伯と席を入れ替えるつもりだ」って。マジっすか。厳しいこと言うなぁ……。
基礎的なことは望んでいる以上にできていても、今の青野くんの演奏はオーケストラでは調和しづらく音が浮いてしまう、という鮎川先生の指摘。そのうえ「お前だけの音色が俺には見えてこない」とか「昔のお前の音色は、そんなものではなかったはずだ」とか、もうボコボコですね。
「次期コンサートマスター候補だから」とか言われても、そんなの全っ然うれしくねぇー!!!

ⓒ阿久井真/小学館/NHK・NEP・日本アニメーション9

いや、冷静に考えてみると、その指摘は正論ではあるのだけれど。第10話「初心者と経験者」で、立花さんもりっちゃんの演奏を語るときに「オケはみんなの音で成り立つから」と言ってたしなぁ。オーケストラだからこそ求められるもの、それは何なのか。青野くんもりっちゃんも、オーケストラの経験は、まだ3か月弱。定期演奏会が迫る中で、その手がかりを見つけることができるのか? 青野くんが模索していく日々が、これから描かれることになります。

やや後先になってしまったけれど、第12話「オーディション」の物語をざっくりおさらいしておきましょうか。


ドヴォルザークの「交響曲第9番『新世界より』」を、定期演奏会で演奏するメンバーを選ぶためのオーディションが始まった。部員たちの間では、青野(声:千葉翔也)と佐伯(声:土屋神葉)のどちらが前の席を勝ちるのか、噂になっていた。青野は、オーディション前に極度に緊張している2年生の裾野姫子(声:金澤まい)の姿を目の当たりにしていたが、自らは全く緊張することなく、圧倒的な演奏を披露する。その様子を見ていた顧問の鮎川先生(声:小野大輔)は「このテンポで弾いてみろ」と声をかけて、指揮を振った。

翌日、オーディションの結果が発表された。青野は羽鳥(声:浅沼晋太郎)ら2年生全員を飛び越して、第2プルトの“表”、コンサートマスター・原田(声:榎木淳弥)の真後ろの席に座ることになる。演奏会当日に体調不良だった佐伯は第2プルトの“裏”で、律子(声:加隈亜衣)はメンバーに選ばれなかった。発表後、鮎川先生から職員室に呼ばれた青野は、次期コンサートマスターの候補として、定期演奏会の前に佐伯との再テストを行うと告げられる。


佐伯直との再テストまで、約1か月。鮎川先生は青野の演奏に疑問を投げかけつつも「お前がどう変化していくのか、楽しみにしている」と付け加えることも忘れない。厳しく接するだけじゃなくて、期待していることもちゃんと伝えてくれるわけですね。なんだ、この人たらし。
その青野くんの変化は、まさに「青のオーケストラ」を楽しんでいる私たちが期待しているところでもあります。原作読了組は当然ご存じだと思いますが、この1か月の間に、あんなことやこんなことが起きて……。ドラマチックすぎる展開に、今から胸がドキドキですね!

ところで、演奏自体は高く評価されていたように、オーディションでの青野くんのテクニックは圧倒的でした。音が雄弁に「俺を見ろ!!!」と語りかけてくる、ヴァイオリン演奏担当の東亮汰さんの音色は、こちらでたっぷりと。

♪ドヴォルザーク「交響曲第9番『新世界より』第3楽章」
演奏:東亮汰(ヴァイオリン)

おおお、今回は4分35秒もあるぞ! 課題曲を弾き切った青野くんが、会心の出来に笑顔を浮かべるところまで、きっちり紹介されています。

ⓒ阿久井真/小学館/NHK・NEP・日本アニメーション

それにしても。
今回の放送も、すばらしく濃密な 25 分。メインとなるストーリーライン以外の何気ないシーンの中にも、例えば鮎川先生と武田先生の居酒屋での回想とか、オーディションを控えた緊張しいの姫ちゃんとか、先輩後輩&男女の距離感がちょっぴりバグっている滝本かよ(いや、ステキな先輩なんだけれども)とか、キャラクターそれぞれの個性が彩り豊かに織り込まれていて。しかも、それが「伏線」というほどのものではないにしても、実は先々の物語にも微妙につながっていくという、密度の濃い物語なんだよなぁ。なので、少しも画面から目が離せず。青野くんの演奏を耳にした佐伯直が「やっぱり君は……」と呟いているけれど、その「やっぱり」が何を意味しているのか、めちゃくちゃ気になるところです。

一方、「新世界より」のオーディションには落ちてしまった、りっちゃん。「ダメだった」と口にしたときに浮かべた表情が、とても切なくて。

ⓒ阿久井真/小学館/NHK・NEP・日本アニメーション

それでも、かける言葉に詰まった青野くんに「あんたが落ち込むな!」と言いながら、りっちゃんは青野くんが受かったことを素直に喜び、今の自分が合格できるほど甘くはないと自覚して、別の曲で定期演奏会の舞台に立つんだと決意する。そんな態度がとれるなんて、尊いな。前向きな姿勢に、ただ頭が下がります。

さて、鮎川先生に「昔のお前の音色は、そんなものではなかったはずだ」と言われて、かつての自分がどんな演奏をしていたのか、懸命に思い出そうとする青野くん。次回、7月2日に放送される第13話「自分の音色」では、青野くんの子どものころの演奏も登場するようです。


オーディションで、佐伯よりも上の席次を勝ち取ることができたものの、鮎川先生に「技術は高いが、お前だけの音色が見えてこない」と言われてしまった青野。彼の脳裏には、幼少期に予選敗退したコンクールで、父・龍仁(声:置鮎龍太郎)から「今のつまらない演奏で上に行けると思ったか?」と言われた記憶がよみがえる。焦りと迷いの中、とにかくヴァイオリンを弾きたい青野だが、期末テストを控えて部活動停止期間に入っていた。学期末の成績が悪い部員は演奏会に出ることができないため、青野は図書室でテスト勉強に取り組むが……。


なお、次回予告では、期末テストを前にしての鮎川先生の「本業の勉学ができないやつは楽器をやる資格はないと思え」に続いて、「部活の練習に比べたらよっぽど楽だよねー」「うん」「どうした、青野? 顔、真っ青だぞ?」というセリフがコミカルに紹介されていて。ああ、これは、勉強を苦手とする青野くんが呆然としている顔が、容易に思い浮かびますね(笑)。青野くん、勉強も頑張らないと! Eテレには、高校生の学習のために適した番組も多数あってだな……。

第12話「オーディション」の再放送は、Eテレ 6/29(木曜)午後7:20~7:45。見逃し配信は、NHKプラスで7/2(日曜)午後5:25 まで。
https://plus.nhk.jp/watch/st/e1_2023062511153?cid=jp-3LMR2P87LQ

追記
オーディションの前、青野くんのことを噂している部員たちが、阿久井真先生の原作コミックスとは違って、2ndヴァイオリンの初心者1年生女子ーズ(鈴木さん、豊田さん、飯塚さん)になっていたのが、個人的にはツボでした。彼女たちも、もっと登場させてほしいなぁと思っています。

カツオ(一本釣り)漁師、長距離航路貨客船の料理人見習い、スキー・インストラクター、脚本家アシスタントとして働いた経験を持つ、元雑誌編集者。番組情報誌『NHKウイークリー ステラ』に長年かかわり、編集・インタビュー・撮影を担当した。趣味は、ライトノベルや漫画を読むこと、アニメ鑑賞。中学・高校時代は吹奏楽部のアルトサックス吹きで、スマホの中にはアニソンがいっぱい。

☆これまでの感想記事は、ここに(https://steranet.jp/list/category/stera_aniken )。