高齢者が住み慣れた家で少しでも長く暮らせるよう、住環境サポーターとして家の中の片づけを提案する弘瀨美加さん。体が不自由になっても認知症になっても、自宅で安全・快適に暮らすにはどうすればいいのか。後編では、家の中で転倒を防ぐ工夫や片づけのコツを紹介します。(前編はこちら
聞き手/佐治真規子

家の中で転倒を防ぐ工夫 “ぬかづけ”に注意


濡れている場所は滑って転びやすい

お風呂などの水場はもちろん、洗い物をしたあとキッチンの床に飛び散った水も要注意。れたらさっと拭いて乾かすことが大切。


階段や段差はつまずいて転びやすい

視力が落ちると段差が分からなくなることも多い。階段の先の方に目印になる色をつける、敷居などの段差を解消する板を取り付けるなどの工夫を。

づけ
づけ・・ていないところは、つまずいて転びやすい

床に物を置かないようにする。特に、トイレに行くときは慌てていることが多いので、トイレへの動線は徹底的に物をなくす。

*「ぬかづけ」は一般社団法人日本転倒予防学会が提唱しています。


「『できる』が増える! 片づけのコツ」

コツ① 洋服は掛ける収納

たんすの引き出しにしまった洋服は、杖を使うようになると出しにくくなるので、ハンガーラックに掛けるのがおすすめ。ベッドの足の方に置けば、体を預けて出し入れできるのでさらに便利。

コツ② 棚を手すり代わりに

棚や本棚を手首の高さくらいの位置に置くと、手すり代わりにできる。体重をかけても倒れないよう、金具などで壁にしっかりと固定することが大切。下の方に重いものを置けば、ぐらつき防止にも。

コツ③ 布団は丸めて立てる

押し入れの布団を横にして積み重ねると、下のものを引っ張り出すのが大変。布団をくるくると丸めてひもで縛り、縦にして収納すれば、少ない力でも簡単に引っ張り出せる。

コツ④ 大事なものは視線の先にオープン収納

テレビの周りなど、ふだんよくいる場所の視線の先に、財布などを入れた外出時に使うバッグや薬などを置く。
薬は、壁や家具と反対色で目立つ箱に入れるのもコツ。自然と視界に入り、飲み忘れ防止にもなる。

コツ⑤ 場所ごと配置や○○セットで転倒リスクを減らす

常に使うものは複数の場所に置いたり、セットにしておくと便利。
例えばはさみは、キッチン・リビング・書斎など使う場所ごとに置けば、探す手間も片づける手間も省けて体の負担を減らせる。
また、旅館の浴衣セットのように、タオルとパジャマと下着をセットにしておく。お風呂のたびに1つずつ取りに行く必要がなくなって家の中での動線が短くなり、転倒のリスクを軽減できる。

イラスト/福井若恵 構成/高久朗子(トリア)

※この記事は、2022年12月13・20日放送「快適に暮らす整理収納のコツ」を再構成したものです。
(月刊誌『ラジオ深夜便』2023年4月号より)

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