「アニ×パラ~あなたのヒーローは誰ですか~」第16弾放送決定!
episode16「パラカヌー×君とぐ」

初回放送
【アニメ本編】3月12日(日)BS1 午後6:45~6:50
【テーマ曲版】3月28日(火)BS1 午後9:55~10:00


日本を代表する漫画家や人気アニメとのコラボにより、パラスポーツの魅力をオリジナルアニメで描く番組「アニ×パラ〜あなたのヒーローは誰ですか〜」
そのスピンオフ企画として、パラアスリートが各地を訪れ、パラスポーツ体験や意見交換を通して、共生社会について一緒に考える取り組みが「アニ×パラ キャラバン」だ。ことし1月、「車いすバスケットボール」をテーマに開催されたイベントを紹介しよう!


これまでに「ブラインドサッカー」「ボッチャ」「パラサイクリング」をテーマに、各地でイベントを開催してきた「アニ×パラ キャラバン」。第4回となる今回は「車いすバスケットボール」がテーマ。

2020東京大会やU23車いすバスケットボール世界選手権で大活躍を見せたちょうかいれん選手をゲストに、パラスポーツの可能性と共生社会について考える。会場となったのは、ことしの「箱根駅伝」の優勝校、駒澤大学(東京・世田谷)。

その他のゲストには、「アニ×パラ」応援団長でおなじみ武井壮さん、そして学生時代に約10年のバスケットボール歴を持つおのののかさん。後半の脳科学コーナーでは、茂木健一郎さんがオンライン出演した。

冒頭、日本代表ジャージをまとった鳥海選手は、巧みなチェアスキルで会場に現れるやいなや、設置されたバスケットゴールにレイアップシュート! その華麗なテクニックに、観客席の学生たちから歓声が上がる。

まずは、最後まで勝負の行方がわからなかった2020東京大会の決勝・アメリカ戦をVTRで振り返る。「あとワンプレーで何か変えられたかも……」と悔しがる武井さん。その届かなかった一歩を埋めるべく、2024年のパリ大会で結果を残すためには何が必要なのか、鳥海選手に聞いた。

鳥海「東京大会では、チームワークの大切さや、仲間を思いやる気持ちが団結力につながることを学びました。レベルが高いメンバーとレベルが高い相手に挑んだ東京大会では、これ以上楽しいことはないと感じながらプレーしていました。こういった場数を踏んで、決勝のコートに毎回立つことが、金メダルを取るためのいちばんの要因になってくるのかなと……」

鳥海選手の握力は、右手は30kg未満、左手は握れないにもかかわらず、精度の高い車いす操作や、ボールが手に吸いつくようなパスキャッチを実現している。その秘密と実力に迫るべく、同大学の運動部の学生に参加してもらい、車いすによる「フリースロー対決」と「スラローム対決」を行うことに――。

最初は「フリースロー対決」
駒澤大学の学生2人はともに現役バスケットボール部員。車いすに乗った状態での挑戦の結果は、6回投じたシュートのうち、ゴールに届いたのはなんと1回のみ。鳥海選手の圧勝となった。

文学部心理学科4年 成田篤志さん(バスケットボール部所属)
「いつもは腕だけでなく下半身も使っていてシュートを打っているのですが、今回、車いすに座った状態からシュートを打ってみると、上半身の力や腕の連動性が必要なんだと実感しました」


グローバル・メディア・スタディーズ学部グローバル・メディア学科2年 石川昂さん(バスケットボール部所属)
「鳥海選手のシュートを見ていたときは、自分にもできるかも!と思っていたのですが、いざ挑戦してみたら、立って行うシュートと全く違っていて驚きました」


続いては「スラローム対決」
武井さんと3人の学生(それぞれ空手部、ゴルフ部、ボクシング部の現役部員)による「アニ×パラ・チーム」と鳥海選手が対決するが……。

武井「そんなの無理! 普通に戦ったら絶対に勝てない。それぐらい鳥海選手のスピードはやばいんだから!

という主張を受けて、「アニ×パラ・チーム」は、なんとスラロームなしで勝負するルールに変更!

その結果は――、「アニ×パラ・チーム」が僅差で勝利。
鳥海選手のスピードとターン技術のすごさを目の当たりにした学生たちから、大きな拍手が湧きあがった。


経済学部商学科2年 星野健斗さん(ゴルフ部所属)
「スラローム対決に参加することが決まってから、気合をいれて腕の筋トレをしまくっていたんですけど、うまく車いすを操作できませんでした。難しかったです」

文学部英米文学科2年 泉優里花さん(空手道部所属)
「車いすをまっすぐ進めるだけでもすごく難しくて……。腕の力の入れ具合が全然分からなくて大変でした」

文学部英米文学科3年 川上海音さん(ボクシング部所属)
「いや~すいません、まっすぐに走れませんでした(笑)」

と初めての車いすバスケ体験に、難しさを感じながらも、全力で楽しんでいた。

実際にパラスポーツを体験したことで、鳥海選手の能力と技術の高さを実感したようだった。

ここで、脳科学者の茂木健一郎さんがオンラインで登場。
「アニ×パラ キャラバン」の名物コーナー、脳科学的な視点からパラスリート実力に迫っていく。鳥海選手が子ども時代にさまざまな運動に挑戦しているVTRを受け、茂木先生は次のように解説する。

茂木「鳥海選手は、自分に対して『限界』を作ってないのだと思います。『限界』を作っているのは脳の前頭葉の部分。そして、リミッターを外すのも前頭葉です。『メタ認知』というんですが、自分自身で限界だなと思わないことが大事です。それをやるのがコーチの役割なのですが、鳥海選手は『セルフコーチング』できるのかなと。ほかの人ができるのに自分にできないことを劣等感にせず、自分もできるようになりたいと積極的に練習することでドーパミンが出て前頭葉が強化される。鳥海選手は、そんな”ドーパミンの階段”を登ってきたんだと思います」
*「メタ認知」…第3者のように自分認知能力を高い次元から客観視すること

そして最後は、参加学生からの質問タイム。
鳥海選手に話を聞きたい学生たちから、次々と手があがった。

法学部法律学科3年・片岡龍聖さん(三大駅伝で三冠を達成した陸上競技部所属)
「プレッシャーを乗り越える、ポジティブに考えるために、どんな心構えでいますか?」

鳥海「僕は、積極的に自分にプレッシャーをかけていくタイプ。そのプレッシャーを感じながら毎日練習すること自体が、めちゃめちゃぜいたくなことで、今しかできないことだと思っています。きょうはすごく緊張した、でも楽しかったという体験を積み重ねていけば、『プレッシャーって楽しい』と思えるんじゃないかな」

文学部社会学科社会学専攻3年・小野澤俊介さん
「パラスポーツをしているからこそ気づく社会の問題点などはありますか?」

鳥海「僕はこうやってメディアに取り上げていただく機会も多いのですが、やはり『障がい者が何に困っているのか』をしっかり発言しないとわからない部分もたくさんあると思っています。問題を抱えて手助けが必要な側も、そういった発言をして、いい社会を作るために一緒にやっていくことが大切だと思っています」

文学部社会学科社会福祉学専攻3年・齋藤美桜さん
「障がいがあることへの葛藤をどのように受け入れていったのですか?」

鳥海「僕が障がいに対して、自分なりに理解し始めたのは小学校に入ってからです。小学生ですから、障がいについて、言葉を選ばずストレートに言われることもありました。ただ、皆よりうまくできることも多くあったんです。それは鳥海連志を認めさせたって僕は思っています。そうやってスポーツなどをみんなと一緒に挑戦することを通して、障がいと向き合っていきましたね」

最後に鳥海選手は、23歳以下の世界選手権で去年優勝した経験をふまえ、パリパラリンピックに向けてことしが勝負の年になる、と意気込みを語った。

鳥海「車いすバスケットボールは、健常の選手も天皇杯に出場していたりもして、みんなで楽しめるスポーツ。今回のイベントで、僕も一緒に楽しい時間を過ごせる、それを共有できると改めて感じました。実際に会場でプレーする姿を皆さんに見てほしいし、そこからいろんなことがスタートして、いい循環が生まれていくんじゃないかと、今後にワクワクしています!」

イベント終了後、鳥海選手から、メッセージが届いた。

駒澤大学の学生さんと交流する中で、どんな場面からも学ぼうとする姿勢を感じました。また、一人ひとりが目標を持ち学生生活を送っているのだと思いました。

武井壮さん、おのののかさんをはじめ、共演した学生の皆さんにも「車いすバスケットボール」の体験を通して、その魅力を感じていただけたのではないでしょうか。「フリースロー対決」や「スラローム対決」では、僕も会場の皆さんも、全員で盛り上がることができて本当に楽しかったです。

これからも「アニ×パラ キャラバン」を通じて、パラスポーツは誰もが楽しめるスポーツなんだと知ってもらえればうれしいです。(鳥海連志)

今回の鳥海選手と駒澤大学の学生たちの交流は、真の共生社会の実現を考える大きなきっかけとなった。今後も各地で実施されていくであろう「アニ×パラ キャラバン」に、大いに期待したい。

鳥海 連志(ちょうかい・れんし)

WOWOW所属。車いすバスケットボール選手。
生まれつき両手足に障害があり、3歳で両下肢を切断。中学1年生で競技を始め、15歳で日本代表入り。東京パラリンピックでは銀メダル獲得に貢献し、大会MVPにも選出。U23車いすバスケットボール世界選手権では金メダルを獲得。

▼「アニ×パラ」車いすバスケットボール編は以下より見られます!
https://www.nhk.or.jp/school/anipara/detail11_real08.html#ttl

▼武井壮さん、おのののかさん、茂木健一郎さんのインタビューはこちらから!
真の共生社会を実現するためには何が必要なのか? いま武井壮が考えるパラスポーツの可能性
おのののか「健常者、障がい者関係なく、一緒に過ごす時間を増やしたい」車いすバスケでフリースローに初挑戦⁉
茂木健一郎「鳥海選手の身体感覚は、まさに人類のフロンティア」パラアスリートにみる人間の可能性と学びとは⁉


※写真クレジット
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