日本を代表する漫画家たちや人気アニメキャラクターとのコラボで、パラスポーツの魅力を5分間のオリジナルアニメで描く「アニ×パラ〜あなたのヒーローは誰ですか〜」
この番組を活用した、新たな企画「アニ×パラ キャラバン」が始動している。
パラアスリートが地域を訪れ交流し、意見交換や競技体験を通して、パラスポーツ、そして共生社会に対する理解を深めてもらう取り組みです。
「アニ×パラ」応援団長として数々のパラスポーツに挑戦してきた武井壮さんに、「アニ×パラ キャラバン」に参加した感想を聞きました。

●パラスポーツの“おもしろさ”を多くの人に

去年の東京2020パラリンピックを機にパラスポーツへの注目がさらに高まり、パラスポーツ競技のおもしろさを感じていただく機会が多くなったと思います。けれど、すべての⼈が等しく幸せな日々を過ごす「共生社会」に向けては、まだまだバリアがあるように感じています。

今回参加した「アニ×パラ キャラバン」の取り組みをきっかけに、多くの⼈が障がい者やパラアスリートたちと共有する時間が1分でも増えたら、とてもうれしく思いますね。そういった交流が増えることで、障がい者がより活躍できる社会が見えてくるはずです。

流通経済大学で行われた「アニ×パラ キャラバン」にて、質問する学生。

たとえば今回のイベントで、
「障がい者の⽅にとって、どういった⼿助けや声かけが必要ですか?」
という学生の質問がありました。

実際にパラアスリートの生の声を聞けたことで、「そういうことが不⾃由に感じるのか」「こんなコミュニケーションを取れば、よい関係が築けるんだ」という気づきにつながったのではないかと思います。これは本当に価値のあることで、もっとこのような機会を増やしていきたいですね。

パラスポーツのすばらしいところは、障がい者への理解が深まること。パラスポーツをより多くの⼈に体験してもらって「パラスポーツってこんなに楽しいんだ」と感じてもらいたい。この積み重ねが、共⽣社会の実現に向けた一歩になると僕は思います。


●「共に人生を豊かにしていく」という意識を

ふつう健常者は、⽬で⾒たものを直接的に判断して⾏動しますよね。ですが、ブラインドサッカー選手は、⾳を感じて、その⾳から感じ取った世界の中で、情報を処理してプレーしています。もしかしたら、僕らが⾒ている現実世界よりも、もっと深みのある世界にいるように思うんです。

イベントでは、学生がブラインドサッカーを実際に体験。

逆に健常者は、「音」を雑に処理しているのかもしれません。たとえば、僕はよく映画やニュースを流しながら作業をするんですが、ひとつのことに集中すると、周りの⾳が聞こえなくなってしまうことがあります。けれど、音からの情報を敏感にとらえていれば、ニュースを聞きながらでも他の作業がスムーズにできるはずです。彼らとの交流は、何か大きな可能性や気づきを秘めているように感じます。

障がい者の周りにあるバリアを取り払い、彼らがより⾃由に生きられることはもちろん大事です。その一方で、彼らが積み上げた技術や体の使い⽅などを、僕らが学ぶことも大切だと思います。「共に⼈⽣を豊かにしていく」という意識が、共⽣社会には必要不可欠ではないでしょうか。


●「アニ×パラ」はアニメと現実の共生社会

「アニ×パラ」作品のなかで⾼橋陽⼀先⽣が考案した必殺技“トルネードタイガー”は、『キャプテン翼』で描かれてきた数々の必殺技と同じく、実現することがとても難しいシュート。

ブラインドサッカーの選手たちは、彼らは、それをパラリンピックという大舞台でやってのけた。「そんなの無理だよ」「そんなのできないよ」といったネガティブな言葉を出さない強さが、本当にすごいと思いました。
「難しいと思うことも、成功に向け日々練習を積み重ねていけば、いつか必ず達成できる」――それを彼らは、じかに見せてくれました。

僕はパラアスリートと交流するようになって、「難しい、大変だ」という言葉は言わなくなりました。ブラインドサッカーの川村りょう選手や⿊⽥智成ともなり選手をはじめ、パラアスリートに背中を押されているような気がするんです。「難しい、大変だ」ではなく、「どうしたらできるのか」と考えるようになりましたね。

「アニ×パラ」は、5分という短い番組ではありますが、パラスポーツの特徴をよく知ることができます。その競技のパラアスリートたちが、どんなことが得意で、どんなことが難しいのかということを教えてくれる。「アニ×パラ」には、これからの共⽣社会に向けて必要な情報がたくさん詰まっているんです。

アニメと現実社会の共⽣ともいえる「アニ×パラ」を見ていただき、「アニ×パラ キャラバン」では多くの方にパラアスリートとの交流を楽しんでいただきたいですね。

▼アニ×パラホームページはこちらから!▼
https://www.nhk.or.jp/school/anipara/


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