ちょっとしたひと言で相手を不愉快にさせてしまったり、コミュニケーションに自信がなかったりといった人間関係の悩みを解決すべく、言葉選びを指導するおおもえさん(52歳)。20年以上、教育相談や産業カウンセラーの育成指導に携わり、年間120回を超える研修を行っています。無意識に使っている言葉に問題はないか、豊かな人間関係を築くためにはどんな言葉を選べばよいか、具体的な例を挙げて教えていただきました。(前編はこちらから

聞き手/恩蔵憲一

心地よい言葉のやりとりが人間関係を豊かにする

——最近はビジネスでもメールやSNSを使う機会が増えましたが、メールならではの言葉選びの注意点はありますか?

大野 メールのやりとりのような文字だけのコミュニケーションになると、情報量が少なくなるので、より具体的な表現が必要だと思います。

例えば「近日中に連絡します」というのをよく目にしますが、「近日中っていつなの?」と疑問が湧きます。せっかちな人と気の長い人とがいらっしゃると思うので、「近日中」の感覚がずれていると、「近日中に連絡すると書いてあったのに、いつまで待たせるのか」と思われてしまうかもしれません。ですから、「今週金曜日までに連絡します」とか「本日中に連絡します」など、「いつ」を明確にすることが重要です。また、連絡しそびれたときに「バタバタしていて」というようなことを書く方がいらっしゃいますが、「バタバタって何?」となります。イメージは分かりますが、ここはやはり「対応が遅れて申し訳ありません」と、状況をきちんと伝えましょう。

謝るときは「すみません」や「ごめんなさい」は決して悪い言葉ではありませんが、オフィシャルな場面や上の人に対しては適切ではありません。なれなれしく、軽々しく受け取られてしまうと残念ですので「申し訳ございません」を選びましょう。

——人の話を聞くときの相づちや返事も重要ですか?

大野 「ふーん」「へぇー」という相づちは、あまり使わないほうがいいですね。「はい」「ええ」「そうですね」と言い切るほうが気持ちがいいと思います。話す人もきちっとうなずいてもらえると、話しやすくなり、安心感を持ちやすくなります。

人間関係を円滑にするには、言われて心地のよい表現を選ぶことが大事です。ポジティブなプラス表現を受け取れば、相手の反応も変わりますし、相手の反応がよければ自分が認められたような気持ちになり、それを積み重ねていくと、相手も自分も幸せな人間関係が築けると思います。

自分の発する言葉に注意を払い、人を傷つけない言葉を選ぶと、自分自身にも返ってきます。「情けは人のためならず」ということだと思います。

インタビューを終えて 恩蔵憲一
一見ドライに見えて、実は相手を気にし過ぎてうまくコミュニケーションが図れない若者世代、一方上から目線を気を付けているつもりでも、パワハラ、セクハラに近い結果を招いてしまう熟年世代。共通していえるのは、適切な言葉選びができていないことではないでしょうか。官公庁や企業などの研修に引っ張りだこの経験豊富な大野さんのアドバイスを参考に、職場でも、学校でも、家庭でも幸せな人間関係を築いてほしいと願っています。

※この記事は、2021年4月1日放送「ラジオ深夜便」の「幸せな人間関係のための言葉えらび」を再構成したものです。

(月刊誌『ラジオ深夜便』2021年7月号より)

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